グローバル製造業で「非連続なスケールを生み出す仕組み」を創る
こんにちは。
キャディ株式会社の河野と申します。
創立5周年記念 note 4日目を担当します。(1-3日目の記事は文末に掲載)
この note では、今のキャディの事業フェーズやこれまでの戦略の変遷、その中で我々が注力している CADDi Factory System(CFS) についてご紹介できればと思います。
事業フェーズの変化と戦略転換
まず最初に、事業内容を簡単に説明します。キャディは「モノづくり産業のポテンシャルを解放する」をミッションに、製造業のバリューチェーンが抱える構造的な課題をグローバル規模で解決しようとしている会社です。「CADDi MANUFACTURING(調達・製造のワンストップパートナー)」と「CADDi DRAWER(図面データ活用クラウド)」を提供しています。前者の CADDi MANUFACTURING は、多品種少量~中量産の世界において発注者(メーカー)から図面をお預かりし、キャディで図面解析・仕様翻訳・品質リスク検出などを行った上で、適する強みを持つサプライパートナー(加工会社)に製造していただき、キャディが最終的な製造責任を負う形で検品・納品するビジネスです。
自社内の図面解析・図面翻訳・見積もり・発注先選定といったオペレーションはテクノロジーを駆使して効率化しています。また、QCD を担保するために自社拠点で検品するだけでなく、サプライパートナーに対する生産改善支援まで行っています。CADDi MANUFACTURING は、自社で製造を行うメーカーでもなく、単なるファブレス企業でもなく、マッチングだけを行うプラットフォームでもなく、大規模な「Virtual Factory(仮想工場)」であると言えます。
キャディは、今でこそ上述の事業モデルで進めていますが、創業から5年間で何度か事業フェーズが大きく変わったタイミングがありました。その1つは「顧客のスイッチング課題を解く」から「サプライサイドのスケーラビリティ課題を解く」に変わったことです。
以前は「発注者からいかに図面を任せていただくか」に注力していました。それがあるタイミングで「なるほど。こういう状況の発注者に対し、こんな価値提案をすれば我々に図面を任せていただけるのか!」が解けました。その瞬間から「今日中にA社様から数千図面が届く」「今週中にB社様から数万図面が届く」という状態が当たり前になりました。そして次にボトルネックになったのが生産キャパシティです。
それまでのキャディは、QCD-FIT するサプライパートナーを開拓することに重きを置いていました(なので、以前はマッチング要素強めに「受発注プラットフォーム」と呼んでいました)。しかし、発注者からの引き合いが急増し、膨大な図面が流れ込む中で、異次元のスピードでサプライパートナーを積み上げ続けるには、新規の開拓だけでは、キャディにとってもサプライパートナーにとっても互いに負荷が大きく課題解決に繋がらない、という結論に達しました。
CADDi MANUFACTURING は、2030年に1兆円規模の取引額を目指しています(これも入口でしかないのですが)。つまり、1兆円規模に耐えられる生産キャパシティを用意しなければならない、ということです。当時の事業フェーズで生産キャパシティの確保・積み上げに苦戦するようでは、1兆円規模まで本当に登れるのか。この問いがキャディの戦略転換に繋がりました。
そこで我々は、QCD-FIT するキャパシティ(いわゆる青い鳥)を見つけてくるのではなく、取引のあるサプライパートナー・今後取引させていただくサプライパートナーと一緒に成長していこう、という大きな戦略転換を行いました。具体的には、キャディから中期で発注を増やさせていただくにあたり、サプライパートナーにも QCD-FIT する生産キャパシティを拡大することにコミットいただく。そしてキャディも生産キャパシティの拡張を支援する、という形になります。いわば「青い鳥を探す」のではなく、サプライパートナーに「青い鳥になっていただく」という取り組みです。
そして我々には生産キャパシティを創り出す方程式が必要になった
ここまでご説明してきた通り、QCD-FIT する生産キャパシティをグローバルで毎年数倍に拡張し続けるために、我々は会社として持つべき機能を大きく変える必要がありました。それまでは、マッチメイカーであり、アグリゲーター(需要の集約家)でしたが、加えて我々には QCD-FIT する生産キャパシティを「創り出す」方程式が必要になりました。
長くなりましたが、やっと本題の CADDi Factory System(CFS) の話ができます笑。上記のような全社課題に対応するために立ち上げたのが CFS です。CFS は、一言でいうと「サプライパートナーの QCD-FIT するキャパシティを創り出す仕組み」です。弊社CEO加藤の創立5周年記事でも触れられているので是非ご覧いただきたいのですが、抜粋すると以下のように書かれています。
キャディは、これまで世界トップクラスの QCD を実現するために、サプライパートナーと一緒に継続的な改善を積み重ねてきました。その中で、生まれた多品種少量~中量産における加工技術、品質基準、生産管理・出荷管理などの手法を言語化・形式知化・汎用化し、広く活用横展開可能な製造オペレーションやプロダクトのパッケージに落とし込んでいます。
パッケージの具体的な中身は非公開ですが、例えば以下のようなものがあります。(加藤の記事から抜粋)
いずれのパッケージも改善対象の KPI を定義し、パッケージ導入前後の数値を計測しています。パッケージの中身は書けないので、サプライパートナー向けのほんの一部の成果だけご紹介すると以下のようなものがあります。ちなみにほぼすべてのパッケージは、早ければ即日〜1週間、長くても1~2ヵ月で実装& KPI 改善できるように設計されています。
また、これらのパッケージを適用する上で鍵となるのがデータの「変換システム」です。発注者ごとに案件の前提、図面・仕様の書き方、品質基準などの「情報」がバラバラな状況ですので、このままではパッケージ側で受け取ることができません。そこで、異なる案件・図面・仕様などをキャディが翻訳(データ変換)し、サプライパートナーには CFS のパッケージのインターフェースに沿った情報のみを受け渡しています。これにより、サプライパートナーは膨大な翻訳作業をすることなく、様々な要求仕様に対応できるようになります。キャディが介在するからこそ、サプライパートナーは業界や仕様が異なる複数顧客の案件をライトに回すことができ、稼働の波を平準化できるメリットが生じます。
キャディと取引のあるサプライパートナーにも「技術力は高いのに見積もりや生産管理の能力が不足しており成長の足枷になっている」などの工場は多く存在します。これらのサプライパートナーに CFS を適用して苦手分野の工数を取り除き、それぞれのサプライパートナーが自社の強みにフォーカスして戦える世界に持っていくことが「モノづくり産業のポテンシャルを解放する」ことに繋がると信じています。
CFS を世界中のサプライパートナーに提供し、「QCD-FIT する生産キャパシティの拡大」を最短・低コスト・高い再現性で達成できる状態を作り出して非連続な生産改善を支援する。これにより、サプライサイドのスケーラビリティを担保でき、兆単位でボトルネックのない Virtual Factory を実現できると考えています。
スペシャリスト × ジェネラリスト × エンジニアの掛け算で、最大の成果を作り出す
CFS の取り組みを実現するチームについても是非紹介させてください。冒頭に触れたように事業フェーズが変わったことで、戦略、会社機能が変わりました。そして、キャディのサプライサイドにおける仕事の仕方も「案件の最適差配」から「生産改善支援による底上げの結果としての案件の最適差配」にシフトしました。
キャディでは、多くの製造業のスペシャリストの方々が働いています。私の統括する Supply Scalability という組織には100人に迫る規模のコストモデリング・生産管理・生産技術・製造技術・品質保証・品質管理のスペシャリスト集団が所属しており、日々自身の専門性を最大限に発揮しながらサプライパートナーの現場改善を支援しています。また、それらの支援を通じて生まれた効果的な手法を、ジェネラリスト中心の専門チームが言語化・形式知化・汎用化してパッケージに落とし込んでいます。また、エンジニアチームと連携してプロダクトに昇華しています。
これまでの顕著な改善成果や新たな手法は自動車などの数が多い製品で発現し、広く普及してきました。数が多くない製品でも標準化はなされているものの、そこまでの成果は出ていません。これに対して我々は、製造業のスペシャリスト × ジェネラリスト × エンジニアの掛け算でイノベーションを起こすことに挑戦しています。CFS は今後、あらゆる加工分野で上記のようなパッケージを体系的に整備しつつ、また、最先端テクノロジーを駆使して変換システムとパッケージを自動化していく予定です。今この瞬間も、多数のオペレーションやプロダクトが同時並行で開発されています。
おわりに
”The Four” の著者である Scott Galloway 氏はインタビューで以下のように語っています。
文末の「より多くのものをより低価格で提供できる方法をマスターしたから」は非常に興味深い一節です。Amazon は、大規模倉庫において検品システムや搬送ロボット等のプロダクトも組み込んで、膨大な SKU を猛スピードで捌くという卓越したオペレーションを構築・運用しています。またこれをグローバルで横展開・再現しており、年間50億個の商品を配送するという離れ業を成し遂げています。Amazon の物流オペレーションは、中身の違いこそあれ、グローバルで劇的な生産性改善を再現できる型(Operational excellence)を持っている点で、CFS と類似する取り組みだと考えています。その意味で、CFS は「Operational excellence driven by expertise and technology」を構築する取り組みであると言えます。
個人的に、物理的なモノを扱う+卓越したオペレーションの文脈で「キャディは製造業の Amazon を目指す(時価総額的な意味で)」と考えているのですが、「(QD-FIT 前提で)より多くのものをより低価格で提供できる方法をマスター」することがやはり重要であり、単なるマッチングやアグリゲーションだけでは「世界で最も価値のある会社」には届き得ない、と改めて感じています。ですので、我々が製造支援の方向に舵を切るのは必然だった、と勝手に一人で納得しています。(やりきれるかはおいておいて笑)
これはめちゃくちゃ難しい取り組みです。我々は、この壮大な取り組みを加速させるにあたり、仲間を大募集しています!!!この note を読んで少しでも面白そうと思っていただけた方、ちょっとでも話を聞いてみたい方、自身の専門性を最大限に発揮しながら大活躍したい方、プロダクト開発をリードいただける方など、是非ご連絡いただけますと幸いです!
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■創立5周年記念 note
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