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「なにを言ってるかじゃなくて、なんで言ってるかを考える」

岸田奈美さんの書かれる文章はどれも言葉選びが素晴らしい。

変にかしこまった感じじゃなく、かといって砕けすぎた感じでもなく。

スッと心に入ってくる、とても読みやすい文章ばかり。

そんな岸田さんが書かれた記事にこんな言葉が登場した。

「なにを言ってるかじゃなくて、なんで言ってるかを考える」

岸田さんが子どもの頃、何気なくお母さんに吐いてしまった言葉。その言葉を言ったあとに後悔していたという。

そのことについて少し時間が経ってから謝ると、お母さんが、

「本当につらい時ほど、人はうまく言葉にできへんもんやね。奈美ちゃんがなにを言ってるかじゃなくて、なんで言ってるかを考える方が、ずっと大切やと思ったよ」

と返答したそうだ。

これを読んだ瞬間、ハッとさせられた。


いっちょ前に「支援」のことを語れるわけではないんだけど、なんだか就労支援の現場でも似たような感覚になることがあるから例にしたい。

私たちはその人の感情を読み取りたいけど、なかなか感情を完璧に読み取るのは難しく、そこで「なにを言ってるか」に耳を傾けてしまうことがある。それがわかりやすいから。

するときっとうまく伝えられていない部分もあるのだろうが、本人の言葉をそのまま受け取って、もしくはそれを解釈して、

「じゃあ、、、」

と声掛けや次の指示を行うこともある。


でも大事なのは、「なんで言ってるか」って考えると、見方は少し変わってくる。

そこにある本質的な課題は何なのか。
本人はどうなりたいのか、どうしたいのか。

相手の言葉をそのまま受け取り、解釈するんじゃなくて、一度受け止めてそこからしっかり考えた上で次の行動、次の声掛けを選択する。

このワンクッションがあるかないかの差は大きいんじゃないか、って。

そうすることで解釈の齟齬が少しは生まれにくくなるんじゃないか、って。

そもそも障害を持った方の中には「失語症」といって、言葉の理解が出来なかったり、話すことが上手く出来なかったりという方もいる。「なにを言ってるか」に焦点を当てると、その方たちの思いは一生くみ取れないことになってしまう。

だけどその方たちが「何かを伝えたい!」という意志が伝わってくることはある。「何か言おうとしている」ということはわかる。伝えたいという思いに言葉はいらない。

「なんで言ってるか」に焦点を当てれば、伝えたいという思いが見えた時に何を伝えたいのかその要因を探ることは出来る。少なくとも相手の思いに気づくきっかけにはなる。


自分の現場を振り返って例に挙げてはみたが、私たちだってそうだ。

感情は言葉より早い。

だからうまく言葉にできない。そんなことは多々ある。

あとで振り返って、

「なんでこんなこと言ったんだろう?」
「もっとうまい伝え方あったな」

なんてことばっかりだ。


でも受け取る側がそれを前提として受け取れば、「なにを言ってるか」じゃなくて「なんで言ってるか」に目を向けて受け取れれば、きっともう少し優しい世の中になるんじゃないかな、って思う。

難しいんだけどね。

感情をぶつけられると、こっちも感情をぶつけてしまいそうになるんだけどね。

そこをグッととどまって、「なんで言ってるんだろう?」って考えられたらもっと心の余裕は生まれるんだと思う。


実践するしかないよね。

自分はまだまだ足りないけど。

出来なくても、出来なかったという事実を自覚して「次は出来るように」、と意識し直すことの繰り返しで身につけるしかないよね。


「なにを言ってるか」じゃなくて、「なんで言ってるか」に目を向けられるようになりたい。

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