株式投資型クラウドファンディングに関する法改正の動向
こんにちは。マシューです。
前回までは2週にわたって、イギリスの株式投資型クラウドファンディング「Crowdcube(クラウドキューブ)」を利用してExitした企業をご紹介しました。
「株式投資型クラウドファンディングのExit事例について①」
「株式投資型クラウドファンディングのExit事例について②」
今回は、株式投資型クラウドファンディングに関する法改正の最新動向をご紹介します。
株式投資型クラウドファンディングは、金商法の改正・日本証券業協会の自主規制規則の整備によって2015年に創られた制度ですが、海外と比較すると規制の条件が厳しい点もあります。日本の法規制がどういう方向に動いていこうとしているのか、見ていきたいと思います。
|株式投資型クラウドファンディングの上限緩和について
現在の日本の法規制では以下のような上限があります。
上記の規制については新経済連盟*が、2019年7月30日に政府へ提出した提言書の中で言及しています。
こちらの提言書の中で、以下の事項の検討を要望しています。
新経済連盟としては、セキュリティトークン(STO)に対応した制度設計とするための要望の1つに過ぎないかもしれませんが、これが実現すれば利用企業・個人投資家ともに裾野が広がることで、株式投資型クラウドファンディング市場は大きく拡大する可能性があります。
一方で、株式投資型クラウドファンディング先進国のイギリスのルールは以下になります。
これは日本と比較すると規制が緩いですし、さらにイギリスでは2011年から株式投資型クラウドファンディングが使われているので、市場規模が大きいのも頷けます。(イギリスの制度に関する詳細はこちら)
上限の緩和について述べましたが、上記はあくまで提言であり政府側が検討段階に至っているかもまだ不明なので、今後の動向を見守りたいと思います。
また、上限の緩和以外にも株式投資型クラウドファンディングを利用する企業・個人投資家が増える要素はあります。その要素の1つであるエンジェル税制について、触れていきたいと思います。
|エンジェル税制の改正について
経済産業省は「令和2年度税制改正に関する経済産業省要望」の中で、シード・アーリー期の創業間もないベンチャー企業にリスクマネーを供給できるよう、前回改正から11年が経過するエンジェル税制の改正を要望しています。
具体的には以下の事項を要望しています。
また、2019年3月時点のエンジェル税制の実績が下図になります。
上図を見ると、投資額・利用企業数ともに増加傾向にあります。
エンジェル税制改正の要望が実現すると、個人投資家のベンチャー企業投資のモチベーションは上がり、投資額・利用企業数はさらなる増加が見込めるのではないかと思います。
|最後に
少しずつではありますが、株式投資型クラウドファンディングの追い風となる法改正への動きは見えてきています。法改正が進めば、自ずと利用企業数・利用投資家数も増えてくるのではないでしょうか。
また、エンジェル税制に関しては手続きの煩雑さも解消するとより活用されるのではないかと思います。多くの企業がその煩雑さからアウトソーシングしているようです。
特に株式投資型クラウドファンディングを利用した場合、株主が数十人から数百人に及ぶこともあるので、オンラインで完結すると利便性は高いと推測できます。(手続きに関しても、今後変更がなされるか動向に注目したいです。)
今後も資金調達に関する情報等、定期的に発信していきます。
※新経済連盟:様々な新産業の発展を通じ、日本経済の発展に貢献することを目的とする経済団体。代表理事は楽天株式会社代表取締役会長兼社長の三木谷氏、副代表理事は株式会社サイバーエージェントの代表取締役社長の藤田晋氏が務める。
https://jane.or.jp
参照:
日本証券業協会ホームページ
http://market.jsda.or.jp/shijyo/kabucrowdfunding/seido/gaiyou/index.html
新経済連盟「ブロックチェーンの社会実装に向けた提言~暗号資産の新法改正を受けて~」
https://jane.or.jp/app/wp-content/uploads/2019/07/0e1a37dc0d697076eea6a8e7189c8655.pdf
「令和2年度税制改正に関する経済産業省要望」
https://www.meti.go.jp/main/zeisei/zeisei_fy2020/zeisei_r/pdf/1_02.pdf
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