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#5 バディ・ガイへお願い

仕事柄、あらゆる音楽を聴かなくてはいけない立場におります。例えば、CM、イベント等で流す曲の選定。音楽関係のプロモですね。そうなると、正直、聴きたくもない音楽を聴くことも多いのですが、それ以上に幅広い時代の様々なジャンルの音楽に触れて、「多少の多少」は知識の幅は広いと自画自賛しております。ですが、当たり前ですが評論家ではございません。ですので、勝手な主観(ファンの方は色々と雑誌等でご存知でしょうからね)や勝手な推測などから、様々な楽曲やアルバムを語りたいと思います。というわけで地味に更新しますので、よろしくお願いいたします。うっかり考察に誤りがありましたら、ご容赦くださいませ。

「マーティン・スコセッシ監督」は正直言って焦っておりました。遠藤周作の「沈黙」を、とっと撮りたいんだけど、内容が内容だけに、ヘルマン・ヘッセみたいに匿名にしちゃおうか?「いや、それだと誰も観てはくれないだろう?」

「ま、いいや沈黙は、いつだって撮れるが、俺の大好きなストーンズは、もはや時代的にいつだってという訳にいかない。キースの毛髪だって、とっくに危ういじゃないか。ミックの皺もこのままじゃ、あっという間に男梅みたいになって誰だか分からなくなる。

ミック・ジャガーにお電話。
「あんたの趣味で撮るんでしょ?おいらたち忙しいんだよ。ギャラ次第だよ」
「ギクッ!」
早速、ビヨンセにはキャンセルの電話しとかなきゃ……。
「あ、また電話すっから……」

あぁ、慈善コンサートにすりゃいいか。どうにかこうにか「ジャック・ホワイト捕獲」、「クリスティーナ・アギレラ捕獲」。「うーん、十分なメンツだけど決定打に欠けるなぁ……。あと柳田選手ぐらいは欲しいなぁ」

あぁ、あの人なら。一応打診してみよう。
「これ、極上のシャンペとリーファです」
「あぁ、ありがとう。で?」
「今度、ストーンズのドキュメンタリー風ライブフィルムを撮影したいんですけど、よろしければゲスト出演して頂ければと……」
「いやいや、逆でしょう笑」
「どうにか、てんとう虫に免じて」
「それ言われるとイタいなぁ。じゃあ、曲指定してもいい?」
「マジっすか!勿論っす。あざす!」

ミック・ジャガーにお電話。
「先日の件ですけど、『シャンペーン・アンド・リーファー』を練習しといてもらえますか?大物ゲストが決まったんでですね」
「まさかだろ?おいら達以外で演奏できっこないよ。トチって白けるだろう?まぁ、もし白けたらお蔵入りだからね」
ばーか!お蔵入りしたらお前らのせいだからな。ロックンロール・サーカスを忘れたか?

2006年秋・ニューヨークのビーコン・シアター

「ミック!今日のゲストはバディ・ガイ様が来てくれるから」
「マ、マジかよ!そこは事前に教えてくれたって……」
「楽屋に挨拶に言っとけよ」

「これ、つまんないものですが、極上のシャンペーンとリーファです。今日は、そこそこ手加減でお願いします」
「極上のシャンペーンとリーファは、今、やっているよ」
「演出上、失礼な言動があるかもしれませんが、そこはご容赦願います」

10曲目、バディ・ガイ様の登場!

「うぉ!すげぇ!やっぱレベチのド度迫力!歌もギターも異次元じゃないか!」
「こうなりゃ、萎縮しないで全力で楽しもう」
演奏後には、あまりの感動のあまりキースは「ギター」を差し上げております。「いくらなんでも何様だよ」と思った人も多いはず。


ある意味、この映画の最大のハイライトシーンは、この部分の「バディ・ガイ劇場」となってしまいました。ハイライトと言ってもですね。もう半分ぐらいは、この映画の完成度に貢献いるとしか思えない名演!

そういう訳で、おめでたくお蔵入りは避けられたものの、やたらとミックの声が、かなり控えめに抑えられております。DVDにしたってそうです。名曲「シャイン・ア・ライト」が映像なしでフェイドアウト……えぇ。しまいには、月がベロマークに変わるという超絶ダサい演出……。

「なんだよ、これ!」と一部のファンからクレームが。それにDVD特典の「トータス松本ってストーンズのファンなの?質問がスカスカじゃん」と。本当は宮本浩次さんも候補に挙がっていましたが、てんで対談になるわけがないと却下されたから仕方なし。本当は、いちいちライブで知らない人と一緒にタダ泣きするほどだったそうなので、デタラメでもなんでもいいから実現して欲しかったですけどね。髪をぐちゃぐちゃ、質問めちゃくちゃ。ミックはニヤニヤ。

ともかく、CD化された時は全体的なバランスも修正されて、ちゃんとしたライブアルバムに仕上がっておりますね。なんで?

「この度は、心よく出演していただいて有難うございました」
「いやいや、ちょろかったよ。ところで、何で君の好きなギミー・シェルターがセットリストに入っていなかったんだ?」
「ビヨンセをキャンセルしちゃったからです」

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