- 会社法と金商法の、それぞれの「内部統制」 -
内部統制には2種類あるのをご存じでしょうか。この2種類の意味をそれぞれ分けて考えないと、内部統制構築の際に大変な間違いをしてしまいます。
その2種類の概要を、それぞれ説明していきます。
(約3分ほどでお読みいただけます。)
内部統制は2種類
内部統制の2種類とは、会社法の内部統制と、金商法(金融商品取引法)の内部統制のことを指します。特にIPOで内部統制の説明を受ける際、十分にご注意ください。
なぜ、注意して説明を受けないといけないのか?
それは、会社が求められている内容が違っており、分けて考えつつもわが社の制度としての「内部統制」を構築しなければならないからです。
何が違うのか?
法律にはどのように示されているのか?それは次のとおりです。
会社法で定めている内部統制の内容を、企業が遵守してこれを整備していることの基本方針を掲げているものが、一般的に「内部統制システムに関する基本方針」と言われているものになります。
金商法で定めている内部統制の内容を、企業が遵守してこれを整備していることの基本方針を掲げているものが、一般的に「財務報告にかかる内部統制の基本方針」と言われるもので、毎年この基本方針に従って企業が自らを評価したものを報告書として内閣総理大臣(金融庁)に提出する報告書が「内部統制報告書」となります。
なお上記のとおり、金商法の内部統制では所轄官庁への報告の義務(内部統制報告書)がありますが、会社法の内部統制には所轄官庁への報告義務はありません。ただし、株主への報告義務があります。株主総会に出席された方はご存じかと思いますが、招集通知にある「事業報告」の中に記載すること(根拠:会社法施行規則第118条第2項)と、総会内で議長(代表取締役)が述べる事業報告にこの " 会社法上の内部統制 " の運用状況が報告されます。
これらを取り違えてしまうと、大変なことになりますので、十分ご注意ください。
間違いに気付かず・・・
この2種類の内部統制を、誤った理解のまま内部統制構築を進め、運用を実施すると、どうなるでしょう?
まずは整備。運用評価の実施のところに目を向けましょう。
整備・運用評価を実施しているとき、誤った理解のままで整備・運用評価を実施すると、本来評価の際に必要とされる証憑の抜け・漏れや取違い等が発生し、正確な評価ができない、または誤った証憑を根拠に「適合」と評価してしまった、などが発生します。なお内部統制のチェックリスト等の資料の保管期限は、本来決まりはありませんが、会社法には計算書類や議事録等の書類は10年保管とされていますので、同じく10年保管することをお勧めしています。そうなると、誤った評価をした場合、10年間もその資料が保管されてしまうことに・・・。
次に、報告に目を向けましょう。
誤った理解のままで整備・運用評価を実施すれば、それぞれ報告すべき内容が大きく違うため、最終的に報告すべき結論が間違ってしまいます。本来「内部統制システムの基本方針に基づき・・・」と言うところを「財務報告にかかる基本方針に基づき・・・」と言い間違えたら大変です。また、株主総会の台本を作成したご経験のある方はご存じかと思いますが「なぜ、議長はこの内容を報告するのか?」「長々とした報告内容なので、どこか割愛できないか?」と感じると思います。台本の中で、この事業報告の報告は、かなり時間を割きます。しかし、会社法施行規則に定められているので、法令遵守を掲げている以上、この報告を割愛することはできません。これを間違うと、株主総会は大紛糾します!
このように、2種類の内部統制を正しく理解したうえで、整備・運用評価を実施し、正しい結論を導き出し、それぞれの報告先に正しい報告をしていきましょう。これも " 法令遵守 " です。