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- 内部監査の「外部への委託」は可能? -

「内部監査の担当者は、正社員でないとダメ」というイメージがあります。ただし、実際に正社員採用するとなると、かなりの時間と労力を要します。
はたして、正社員採用するのは、現実的でしょうか?
そして、ルール的にも可能なのでしょうか?
(約3分程度でお読みいただけます。)

内部監査の業務に必要なスキルは?

求人募集の要項を拝見しますと、次のような内容を目にします。

  • 内部監査経験3〜5年以上

  • (内部統制も兼ねる想定で)経理業務、監査法人での業務経験のある方(業務経験:およそ3〜5年以上)

  • 公認内部監査人(CIA)資格保有者

などなど・・・
これらを見ますと、他の職務の応募人数よりかなり僅少になるかと想像します。
それに、実際に内部監査の実務を行ううえで、これらの経験や資格が絶対的に必要で、かつ順調に業務遂行されているか?
・・・その効果は少ないかと思います。

実務を10年ほど経験しております私から申しあげますと、内部監査に必要なスキルは、

  • 内部監査、経理、監査の実務経験があれば、それに越したことはありません。ただし「必須ではない」と思います。

  • その企業の業務内容(または同業他社で同じような/似たような業務内容)を熟知していること。

  • 知らないことを「知ろう」とする力、意欲。(*これまでの経験のみで解釈せず、意見しないことも含みます。)

  • 関係法令の知識(*景品表示法や電子商取引法など直接事業・取扱うサービスに限らず、金商法、会社法など経営に関する法令も、内部監査では非常に重要です!)

  • 多くの資料(証憑)を読んで理解する力、意欲。

  • 「気づき」力    など。

挙げたらきりがありませんが、内部監査の実務内容を踏まえてみると、上記の各項目について納得していただけるかと思います。

内部監査の「外部への委託」は可能か?

回答としては「外部への委託は可能」です。
東京証券取引所が毎年発行する「新規上場ガイドブック」には、「内部管理体制」の整備と運用に関する記述があります。

「・・・(省略)・・・
一方で、内部監査業務をアウトソーシングする場合は、通常、公正・独立性は担保されると考えられますが、アウトソーサー任せにせず、社長等が内部監査の重要性を認識したうえで主体的に関与しているかどうかを確認します。・・・(省略)」

2022 新規上場ガイドブック(グロース市場編)p73 上から4行目を参照。)
*リンク先:JPX日本取引所サイトにあります「新規上場ガイドブック」ページです。
*なお、同内容は、プライム・スタンダード市場のいずれにも記載があります。

この記述のとおり、上場審査を行う証券取引所のガイドブックにも、内部監査業務をアウトソース(外部委託)することを視野に入れています。
このように、内部監査の人材不足が背景なのかはわかりませんが、いずれにしても「正社員採用すべき」の根拠は薄れてきているのが現実です。
求人募集してすぐに応募があれば問題はありませんが、時間と労力のコストなどを考えますと、現実的・合理的な方法をお勧めします。
なお、1点ご注意いただきたいのは、新規上場ガイドブックにもありますように「内部監査業務を外部委する際は「アウトソーサー任せにせず、社長等が内部監査の重要性を認識したうえで主体的に関与しているかどうかを確認」することが求められますので、この場合は社内に内部監査責任者(できれば代表取締役社長以外の、CFOなど上位役職者)を置くことが必須になります。

また、内部監査業務を外部委託することのメリットをご紹介します。

  • いわゆる「自己監査」(自らの業務を自分で監査すること)することはない。(*自己監査は認められていません。)

  • 不備、不適合にあたる指摘事項が検出されたとき、客観的な視点で調査・分析し、報告される。

  • 社内の業務負担が軽減できる。

  • タスク管理がしやすくなる。
    (*指摘事項に対する改善状況が把握しやすくなります。)

  • 社内の内部監査に適した社員に対して、必要なスキルを伝授できます。
    (*企業によっては、内部監査業務を社内で「輪番制」(現業と兼務)で行っているところもあります。自己監査でなければこれも問題ありません。)

  • 社内では見落としがちな「業務改善につながるポイント・ヒント」が提案できる。。

特に最後の「業務改善につながるポイント・ヒント」については、前述の「内部監査に必要なスキル」に挙げました「気づき力」につながるものです。これは内部監査業務にとって「必要不可欠な役割」といっても過言ではありません


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