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蛇腹②


「あなた~?何してるのよ~?!」
妻の声で我に返った。

…そうだ。抽選会で特賞が当たった瞬間、気を失ってしまったんだ。
まだ少し朦朧とした意識のまま、
「そう、熱海…熱海旅行が当たったんだよ!!」
と告げると、僕の姿を見た妻は絶叫したのだ。
「ぁぁぁぁあなたそっそれどういうつもり?」

あれ?僕は抽選会場にいたハズだぞ?なんで全裸で浴室にしゃがんでいるんだ?
抽選器を回す持ち手のつもりで握りしめていたのはいきり勃った自らのイチモツではないか!
ましてや、左手の中指は肛門の奥深くねじ込まれ根元が見えないほどだ。

ほどなく、シャワーのホースの蛇腹柄が実物さながらにとぐろを巻くように見えはじめ、二度目の眩暈が襲ってきた。

気を失う直前に僕の目に映ったのは、なぜか抽選から出た特賞の印、赤い玉だった。

「…熱海…旅行が…、…あた…みりょこ…ぅ」

…つづく

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