マガジンのカバー画像

『12星座の恋物語』シリーズ ー好評12作品―

12
連載していた『12星座の恋物語』シリーズの中から、特に好評をいただいていた12作品を加筆修正して再度アップしました。作品のみを楽しんでいただくために、今回は星座の設定と解説ははぶ… もっと読む
運営しているクリエイター

記事一覧

紫陽花の咲く庭 [短編小説]

 バスタブにお湯をはりながら、ぼんやり庭を眺めていた。今日は久しぶりに朝から晴れて、網戸…

瑠璃
1年前
41

海と瑠璃の境界 [短編小説]

 凪いでいた。あの日のように、とても穏やかな海だ。車内にも潮の香が満ちていて心地よい。五…

瑠璃
1年前
205

桜前線北上中 [短編小説]

 今年も近所の公園の桜が咲いた。この街では、ちょっとしたお花見の名所になっている。千鳥ヶ…

瑠璃
1年前
46

さよならの線香花火 [短編小説]

 国産のものは、わずか三ヶ所でしか作られていないらしい。線香花火のことだ。今現在、巷で売…

瑠璃
1年前
37

死んでもいいわ [短編小説]

 またやってしまった…。嫉妬が抑えられない。森口陽子がそんな後悔に苛まれている間に、後を…

瑠璃
1年前
58

酢豚にパイナップル [短編小説]

 雪の予報がはずれて、朝から凍るように冷たい雨が降っている。こんな日は、誰もが外に出るの…

瑠璃
1年前
56

不在の果て [短編小説]

 夕暮れの貯木場は赤く染まっていた。山から切り出された杉の巨木が積み上げられている。その一番高い所に座って夕焼けの空を眺めるのが、子どもの頃から美樹は好きだった。  貯木場からは海が見える。東京で暮らすようになるまでは、夕陽は海に沈むものだと思っていた。赤く燃える翼を広げた火の鳥のように沈んでいく太陽が描きだす壮大な光景を、今でもときどき夢に見る。そんな時は、決まって仕事が上手くいっていない。心が何かしらの充足感や感動を求めて記憶を再生させるのかもしれないと美樹は思っていた。

ポプラ林の中の二人 [短編小説]

 風の音がした。下草や枝葉をざわざわと揺すりながら、描かれた風景の中を風が吹き抜けていく…

瑠璃
1年前
50

夢と知りせば [短編小説]

「花の色はうつりにけりないたづらに わが身世にふるながめせし間に」  狭い教室に美沙子の…

瑠璃
1年前
56

来年の夏も二人で [短編小説]

 睦美が最初にその青年を見かけたのは、八月のはじめだった。蒸し暑い夕暮れの公園に佇み、青…

瑠璃
1年前
53

ルペルカリアの恋人 [短編小説]

 バレンタインデーは憂鬱だ。この季節になると、通り過ぎてきた過去の記憶が嫌でもよみがえっ…

瑠璃
1年前
45

忘れられた人魚 [短編小説]

 海の中にいた。青い光がカーテンのように揺らいでいる。目の前を色とりどりの魚たちが泳いで…

瑠璃
1年前
59