見出し画像

迷子の迷子の子猫ちゃん

もう20年以上前の、娘が幼稚園の頃のお話です。

幼稚園の帰りにそのまま息子と娘を、当時通い出したばかりの英語教室に送り一旦家に戻り夕食の支度をして、また迎えに行った帰りのことです。

買い忘れたものを買おうと、近所のスーパーマーケットに寄ったのが間違いでした。

レジに並んでいる時に、ふと気付くと娘がいません。一緒にいた筈の息子も知らないと言います。

お店の中にも外にも、どこにも娘の姿はありませんでした。

一時間くらい近くを探しましたが、娘を見つけることは出来ませんでした。

当時はまだ携帯電話を持っていなかったので、どこからか連絡があるといけないと泣く泣く家に帰り、近所に住む私の両親や知人の家に電話をしましたが手がかりになるものは何もありませんでした。

近くには川があるので、もしや落ちたりして溺れていたらどうしょう、とか、さらわれたのではないか、とか次から次へと悪い想像をして不安で押しつぶされそうになりました。一緒にいた筈の息子にも

「どうしてちゃんと見ていてくれなかったの!」

と怒りをぶつけてしまい、息子は泣くし私も涙が止まりませんでした。

何かあったら私のせいだと、あの時ほど後悔したことはありません。

成すすべもなく途方に暮れていると、すぐに交番から電話がありました。

お巡りさんの話によると、スーパーマーケットで買い物をした女性の後ろ姿を母親と間違えて追ってついて行ってしまったそうです。その女性は子供がついてきているのに気付き困って、交番に連れてきて保護されたのだとか。

娘は泣いてばかりで自分の名前も言えず、困り果てたお巡りさんが、たまたま娘の胸に付いていた英語教室の名札を見つけて、英語教室に連絡してくれたことから、娘の名前や住所、電話番号が判明したという事でした。

娘があんまり泣くので、駆け付けた英語教室の方に預かってもらっているので、そちらに迎えに行ってくださいと言われ、行方不明から2時間後にやっと娘に会う事が出来ました。

この時の2時間は、半日にも一日とも感じられる長さで、寿命が縮まった思いです。

よくドラマなどで、ほんの数秒目を離したばかりに……と言うのがありますが、あれは本当だったと身をもって体験した出来事でした。

そう、小さい子は一瞬も目が離せないし、絶対離してはいけなかったのです。

英語教室の事務の方は、泣いている娘をずっと抱っこしてくださっていました。本来なら、教室を出る時に外して返却する名札を、付けっぱなしで帰ったことで身元が分かり良かったね、と喜んでくださいました。

翌日、交番に娘を連れて行ってくださった方にお礼に行かせていただきました。身長も雰囲気も私とは全然違う方でしたので、どうして間違えてついて行ってしまったのかわかりませんが、その方も小さなお子さんがいらっしゃる方で放っておけなかったそうです。ついて行った方が優しい方で、助けられて、本当に良かったと思いました。

お世話になった方々にあらためて、心から感謝いたします<(_ _)>

それにしても、娘は幼稚園に通っていたのに交番で名前を聞かれても言えなかったことが信じられませんでした。


童謡に「犬のおまわりさん」という歌があります。

子供の頃、この歌を何回歌ったかわからないくらい大好きでした。

迷子の迷子の子猫ちゃん、あなたのお家はどこですか
お家を聞いてもわからない 名前を聞いてもわからない
にゃんにゃん にゃにゃん にゃんにゃん にゃにゃん
泣いてばかりいる子猫ちゃん
犬のおまわりさん 困ってしまって
わんわん わわん わんわん わわん

おばあちゃん家の猫の頭をなでながら「ワンちゃんがおまわりさんで、ネコちゃんが名前もわからない迷子なんてひどいよねぇ」と、ちょっと切なく思ったりしたものでしたが、まさか自分の子供が『名前を聞いてもわからない』子猫ちゃんと同じだったとは!

一説によると、犬の知能は人間の三歳くらいで、猫の知能は二歳ぐらいだと聞いたことがあります。

娘はあの時三歳半でしたが、ワンちゃんより幼かったこと?も判明してしまいました。


あの後しばらくの間、娘とスーパーで買い物をしていると

「お子さんは見つかったのですね、良かった~」

と、何人もの知らない方から声をかけていただきました。

必死に我が子を探している姿を見られていて覚えられていたなんて、もう恥ずかしいやら申し訳ないやら……。いろんな方にご心配、ご迷惑をおかけしてしまいました。


私の心配性(時々ずれていますが)と過保護気味なところは、この一件からきているのかもしれません。

小さい子は思いもしない行動をすることがあると思い知った出来事でした。



最後までお読みいただきありがとうございました(*^-^*)


この記事が参加している募集

子どもに教えられたこと

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?