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個人的に好きな芥川関連記事

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#勝手に芥川研究

勝手に芥川研究#10 芥川と児童文学

勝手に芥川研究#10 芥川と児童文学

 最初に一言。みなさんルイス・キャロルの不思議の国のアリスはご存じですよね。聖書に次いで世界中で翻訳されている児童文学の傑作です。多くの文豪に影響を与え、パロディでも盛んに使われるので、海外文学を読む上でも聖書と同じく必須の文学になっています。ルネマグリットの絵まであり、文学に限らずその影響は計り知れません。
 日本でもたくさんの方々が翻訳しており、わたしも若い頃に読みましたが、このたび我慢できず

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[勝手に芥川研究#8] 「地獄変」は芸術至上主義の傑作か?

[勝手に芥川研究#8] 「地獄変」は芸術至上主義の傑作か?

「地獄変」は芥川のあまりにも有名な短編です。初期・中期の作品の中でも完成度の極めて高い、彼を象徴する芸術至上主義の傑作とされています。
 この作品を読むとき注意しなければならない点がひとつあります。語り手である大殿の奉公人が必ずしも真実を語っていないということです。色眼鏡を通して大殿の所業について語っているため、大殿が善人であることになっていますが、読んでいけば自ずとわかるように、大殿は相当我が儘

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[勝手に芥川研究#6] 人としての芥川龍之介~実直のひと

[勝手に芥川研究#6] 人としての芥川龍之介~実直のひと

人としての芥川龍之介について、気難しくて理屈っぽく、冷徹で神経質、ブルジョア気質から所詮抜け出せなかった小市民、常に他人から攻撃を受けないようにバリアを張っていた臆病者等々、色々ネガティブなイメージを持つ人がいます。もちろん人間ですので好き好きあるのは当たり前です。
ただわたしから見る芥川は、良くも悪しくも自分に真っ正直で他人にも嘘をつけない「実直のひと」だったと思います。逆にたまには自分に嘘をつ

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[勝手に芥川研究#5]「侏儒の言葉」の復刻版が届く~ついでの超初期3編感想など

[勝手に芥川研究#5]「侏儒の言葉」の復刻版が届く~ついでの超初期3編感想など

侏儒の言葉

芥川龍之介の「侏儒の言葉」復刻版をメルカリで購入しました。1000円足らずで安い上に「おまけつけますね」と「傀儡師」復刻版まで送ってくれました。出品者様、ありがとう!古本屋もよいけど、古い本を手軽に手に入れるにはメルカリは便利ですね。先日もポール・オースターの「最後のものたちの国で」(文庫版がありませんし、単行本もなかなか入手困難です)を手に入れましたし、本当に助かります。

研究と

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[勝手に芥川研究#3] 山川直人の「澄江堂主人」をオススメしたい

[勝手に芥川研究#3] 山川直人の「澄江堂主人」をオススメしたい

昨日、山川直人の「澄江堂主人」上中下を読了しました。漫画ですが、読むのに2日かかりました。作画的に好みが分かれるところですが、個人的には

活字も含めて最近読んだ本のなかで一番感動しました!

涙なくして読めないシーンも。少なくとも、芥川龍之介ファン的には読んでおきたい漫画だと思います。

澄江堂とは、言うまでもなく芥川龍之介の書斎の扁額です。最初は餓鬼窟でしたが30歳の頃改名しています。

「澄

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[勝手に芥川研究#2]泉鏡花を読もう!~泉鏡花と芥川

[勝手に芥川研究#2]泉鏡花を読もう!~泉鏡花と芥川

芥川の通夜では、先輩総代として泉鏡花が、友人総代として菊池寛が弔辞を述べています。盟友だった菊池寛の弔辞も素晴らしいですが、泉鏡花のそれは極めて美しく慈愛に満ちていて感動します。

芥川は、作家になる以前、鴎外や漱石はもちろんですが、それ以上に泉鏡花を愛読していました。初めて小説らしい小説を読んだのは泉鏡花の「化銀杏」だと述べています。
そして、一九二五年から谷崎潤一郎ら六名とともに「鏡花全集」全

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