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「PICU 小児集中治療室 (第9話)」親の死と患者を助けられない力のなさと・・・。

何度も書いたが、このドラマは子供の患者を助けられなかったことから始まっている。そして、ドクタージェットがあれば、その死の数を減らせる可能性があるという話だった。だからこそ、PICUは空港の近くに作られたわけだ。という前提なら、多くの子供達が助かって未来に向けて歩む話かと私は思っていた。

しかし、回を重ねて残りが少ない中で、吉沢亮の母親が死に、ずーっと回復に向けて動いていた心臓の悪い子供も、ほぼ助からない状況になってしまう。つまり、このドラマは子供たちの未来に希望を持たせるものではなく、医療現場の厳しさ、そしてそこに何が必要なのか?を描こうとするものなのだろう。そう言う視点は、医療ドラマとしてはかなり新しい。

そして、稲垣来泉の激しい涙を見せられて、深く頭を下げた後、吉沢亮は「退職願」を置いていなくなる。ここまで持っていくために、母親を死なせたと言うことなのかもしれない。

そう、今回の前半は、吉沢と大竹の東京の病院を訪ねながらの最後の旅行物語。これが、本当にドキュメントを見てるような不思議な空気感でとても面白くあり、とても悲しいドラマに仕上がっていた。

大竹のゆっくり目のリズムに、吉沢がうまくはまっていく感じが絶妙でしたね。バスガイドがバスに乗って、東京のバスガイドに唸るシーンも面白かった。こう言う素敵な親子関係を描ける脚本家は尊敬するし、本当に良い人なのだろうなと思ったりする。しかし、大竹しのぶは凄い女優さんですね。視聴者が葬式で一緒に泣いてくれるような芝居をする。で、これって大竹さん以外の女優さんではできない感じでものね。この、最後の旅行道程シーンは今年のドラマ名シーンナンバーワンかもしれない。

そして、その重くなった心を隠すように、病院に復帰する吉沢。親に迷惑をかけたくないと思う女の子の心を開かせたりする。それを見て、上司たちは彼が一人前になったことを口にだす。この病院を追われようとする安田顕は、吉沢が、このPICUになくてはならない戦力だともいう。そう言う流れがあっての「退職願」

ある意味、これは2022年のドラマである。健康でいても、不穏な空気が漂うことが誰にも感じられる今日である。その時代をリアルな感じに描けばこうなるのかもしれない。その職業に一生懸命に立ち向かう人ほど脱落していくようなことはよくある。実際の医療現場でも、このパンデミックの中でメンタル的に無理がたたって休職している人も多いのかもしれない。

そう、そんな2022年をかなり真っ直ぐに飾りなく描いている感じはとても心地よい。来週は、吉沢亮がいなくなって、どうその心を整理していくか?と言うとこだろうか・・・。最後には、それなりの未来への回答が示されると思うが、患者が亡くなっていくことの多いドラマはやはりきつい。

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