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2021年新作テレビドラマ放浪記

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2021年のテレビドラマの感想記録です。
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2021年3月の記事一覧

「全っっっっっ然知らない街を歩いてみたものの」こういうのYouTubeでやってる人、やる人いるだろうね!というドラマ

壇蜜の旦那さん、清野とおる原作の漫画のドラマ化。脚本がヨーロッパ企画の上田誠で、主役である清野役がムロツヨシということで、それなりのものは見られるだろうと視聴。 ある意味、普通の散歩番組は絶対に歩かないだろうところを歩いてドラマにするという行為。1回目は「上中里」 そう、この駅名、東京23区内にあって、知らない人も多いと思う。私も東京で生まれながら、中学生くらいまで、この駅名を知らなかった。京浜東北線が田端から山手線と離れると次の駅なのだが、近くの王子や十条という名前に比

「俺の家の話(第十話)」誰も考えなかっただろう最後の展開。まさに現代のホームドラマ

最後は、やはりプロレスドラマにしてしまうのは、宮藤官九郎のテレのようにも見える。「いだてん」に続き、最終回は神回だった。そして、これは宮藤官九郎から長瀬智也の今後への花向けのドラマだったのかもしれない。さまざまな人に刺さるように最終回は展開した。 ファーストシーンで、まだ最終回の種明かしはしていない。そして、時は2022年の正月。マスクをし続けていた2021年のドラマからマスクが消えている。願望としては理解する。そのための未来の最終回だ。そう、未来の日本へのエールにもなって

「エアガール」広瀬すずが二世代を演じてそれぞれに美しいのに見惚れてしまった

広瀬すずを主演に迎え、日本最初のCAである、「エアガール」の誕生を描いたスペシャルドラマ。原案はノンフィクション「日本航空一期生(中丸 美繪 著)」。 日本の空を取り戻すという話の中で誕生した、エアガールの話である。実際は、今も日本の空は占領されたままのところが多い。戦後の独立意識を保ってさらに交渉を続けられる人々がいなかったせいなのかもしれない。沖縄もそうだが、形だけの返還で、永続的にアメリカに縛り続けられているのが今の日本だ。そういう構図をこの時代に活躍した人々は予想し

「天国と地獄(第10話)」人間の存在自体は、所詮、皆「くうしゅうごう」ということなのかもしれない。

ラスト、二度あることは三度ある、というオチなのだろうか?最後に、入れ替わりのこじつけのようなものがあったが、まあ、所詮ドラマである。こういうわからないような警察も手が出せないスピリチュアル的な事象はあっても言いわけで、それを視聴者にどう提示するかということなのだろうなと思った。そう、このドラマは「身体の入れ替わり」という事象が、うまい出汁となって味わいを増した逸品だったのだ。その料理の主役素材である、綾瀬はるかと高橋一生が、問題なく、いや予想以上にこの役をこなしたために、まあ

「俺の家の話(第九話)」家族の声が死を回避させる最終回前

まさに「俺の家の話」というタイトルがぴったりの最終回前だった。来週は、プロレスと能の舞台で大団円という感じなのだろうが、ラストの二人長瀬は何を意味するの?そして、西田の命は?遺産は? ドラマの最後の方というのは、チームワークで勢いつく感じがあったりする。その勢いが強いほど、良いドラマと言えるだろう。そして、今回は西田が死ぬか生きるかで、最後には長瀬がプロレスラーとしての自分の正体を身内に明かす。そう、さまざまな嘘が家族からなくなっていく感じがラスト近い演出。 前回は、西田

「にじいろカルテ(第9話)」愛しきユートピア「虹の村」を具現化した岡田惠和脚本に拍手!

最終回である。最後まで、「虹の村」は、脚本家、岡田惠和が描く理想の地として、成立していた。この回の最初の方、食事しながら、「最近、暇ですよね」と言った途端に医療ドラマでは忙しくなるという話からエンジンがかかっていくが、これって脚本家が自らそういうものと言っているということですよね。それくらい、力抜いた感じで脚本が書かれている。ある意味、書きたいものが書けているということでしょうな。 とにかくも、このドラマは「虹の村」の造形が素晴らしかった。そのコミュニティの姿が、村の人たち

「アノニマス(第8話)」心の吐露をネットに求めても、悲しみはなくならない

最終話、結局は、警察の証拠捏造問題を追いかける話になってしまい、あまりネットを使ったからという特定な事件になっていないのは少し残念な感じだった。香取慎吾、久々のドラマ出演という割には、色々と中途半端でここも残念だった。それに呼応するように、関水渚との掛け合いみたいなものをうまくフューチャーできなかった気もする。ただ、関水は若いだけあって、最初と最後では、芝居が変わってきていた。これからまだまだ伸びる女優というイメージはできた気はする。 前回、アノニマスの正体がシム・ウンギョ

「天国と地獄(第9話)」事件が全て語られる流れが刹那い。いかに主人公が護られるかが焦点。

北村一輝が、いわゆる警察的な感情の中で綾瀬と高橋を追い、そして逮捕に至るラストだからこそこの回は秀逸である。そんな、いわゆる普通の刑事劇に逆らうように、4人の事件を知る者たちが奄美に向かう。奄美に到達できなかったのは意外だったが、この回は、事件のことを語りながらのロードムービー的な流れ。そこに、溝端順平も仙台を楽しむというへっぽこ刑事ぶりも入れ込みながら、どちらかといえば、説明臭くなる回を見事に綺麗に終えた感じ。 そして、やはり綾瀬と高橋の身体が再度入れ替わったことで、二人

「その女、ジルバ(第10話)」X年後の馬鹿騒ぎに胸をときめかせながら…。

最終回は、2020年10月から始まる。コロナ禍になり、「オールド ジャック&ローズ」も見事な閑古鳥。店を閉めることになるが、そんな話をしているところに、江口のりこの出産が始まる。一つの店が終わろうとしているところに、新しい命が生まれるという、ある意味ベタだが、それなりの希望を伝えるファーストシーン。 こういう感じで、コロナ禍の現在を描くのは、このドラマにとっては必然だったのだろう。戦争でさまざまなものを失ったジルバというママが育てたこの店は、まさに苦難の中から生まれた生きる

「俺の家の話(第八話)」このドラマが、介護ドラマであり、家族ドラマであることを確認させる回

宮藤官九郎は、真面目な重いテーマのドラマに挑戦しているのだ、ということを西田と長瀬の別れのシーンを見て思った。その後に、離婚した妻の出産に付き合うという光景も、滑稽に見えるが、そんなことも現代にはリアルに起こりうるのだ。そう、脚本はウケ狙いだけでこういうシーンを挿入していないことがこのドラマの凄みだったりもする。 そう、このドラマには現在のさまざまなことが詰まっている。ロバート秋山が浮気をしていて、その彼女の写真が修正しまくりだったという下りも、ただの笑いではない。なんか、

「にじいろカルテ(第8話)」共同体の優しさと、大いなる勘違いの楽しさ

最終回を前にして、ドラマを動かすような話ではなく、北村匠海演じる太陽くんの人間性と、虹の村の人々の楽しさや優しさをもう一度確認してくるような回だった。脚本家が描きたいものは、小難しい組織論や人間論ではなく、当たり前の優しさに溢れた生活の素晴らしさみたいなものなのだろう。そういう意味でも、このドラマは医療ドラマではない。 最初の導入部での、北村の勘違いのシーンはなかなか秀逸である。というか、声だけの井浦と高畑の話が、確かに色っぽい話に聴こえるのだ。これがちゃんとできたことで、

「アノニマス(第7話)」警察の体質の腐敗の話になってしまうのはどうなのか?

あと、2回ということで、香取が相棒を失った事件にフォーカスが一気に傾く。そして、その時の情報を流したアノニマスの正体が勝村政信だということが浮上。シム・ウンギョンが追った事件に警察の証拠捏造があったことがわかる。警察内部の組織の保護のために、実際の事件の真相が蔑ろにされるという、刑事ドラマではよくあるパターン。ただ、その真相のタレコミがネットでもたらせるという状況だけが、「太陽にほえろ」の時代とは違うと言うことだろう。今、マカロニがこの事件を追ったらどうなるの?とか考えてみた

「天国と地獄(第8話)」再度入れ替わり、それぞれの人間を理解しての結末へ?

事件の基本的な構造は、ほぼ明らかにされた回だった。しかし、その向こうにさまざまな謎を秘めながら、最後に入れ替わりがまた起こる。そして、最終章という流れなのだろう。そして、犯人は奄美に向かう。見ていて、引き込まれる流れは脚本のなせる技である。 先週の双子の兄弟の「歯」の話が記憶に残るようになっていたのは、今回の伏線だったわけだが、それを持って歩いていなければならなかった犯人の性みたいなものが、このドラマの結末の始まりなのか? そう考えていくと、このドラマは兄弟が環境の違う育

「その女、ジルバ(第9話)」草笛光子、中尾ミエ、その時代の凄みと希望と未来への継承

次週が最終回ということで、オールド・ジャック&ローズのママである、草笛光子がここに来た流れが池脇に吐露される。それは、戦争という闇の時代から、生き返ることだったのだろう。そう考えれば、池脇の人生もここで生き返っているのだ。そう、戦後の混乱と現代はシンクロしうるということがよくわかる。 そんな中で、中尾ミエが草笛のことを考えて店を切り盛りする。炭治郎模様のタスキが目立っていた。(鬼退治に来たわけではないのだけどね)中尾ミエは1946年生まれ。つまり、戦後世代なのだ。草笛光子と