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「アノニマス(第8話)」心の吐露をネットに求めても、悲しみはなくならない

最終話、結局は、警察の証拠捏造問題を追いかける話になってしまい、あまりネットを使ったからという特定な事件になっていないのは少し残念な感じだった。香取慎吾、久々のドラマ出演という割には、色々と中途半端でここも残念だった。それに呼応するように、関水渚との掛け合いみたいなものをうまくフューチャーできなかった気もする。ただ、関水は若いだけあって、最初と最後では、芝居が変わってきていた。これからまだまだ伸びる女優というイメージはできた気はする。

前回、アノニマスの正体がシム・ウンギョンだとわかり、その彼女が消えて警察に対して復讐を始めるという構図。それも、警察の内部文書をネットに晒すというような内容。これは、昨今、官僚が記録文書を黒塗りで出してくることへの皮肉なのかもしれない。裏、いや内部の誰かが、いや黒塗り担当の人が、その行為が馬鹿馬鹿しくなり、全部、ネットにあげることも今後あるだろう。そうなれば、日本の中枢は転覆していくのだろうか?そうも思えないが、このドラマでは、その文書で一般庶民がネットで面白おかしく騒ぎ出す。それが、関係者の死を促したりするわけで、「ネットは単純に凶器」という流れだろう。

シム・ウンギョンの無念の心が、恨みや憎しみとなってネットにばら撒かれる。しかし、それは悲しみをぶちまけてるだけだろうと香取が追い詰めるが、ネットに一回ばら撒かれた悲しみは回収が難しいというまとめなのだろうと思う。それは、それでよくわかる。

その当事者に大手マスコミが取材に突っ込んでいかないのは新しかった。いわゆるYouTuberのような一般人がスマフォで取材するという構図。実際、こういう取材にでかいカメラやスタッフを連れて行かなくたって、十分取材はできるし、問題はない。ここでは、大手の会社は規制されて取材できないと言いたいのだろうが、そう受け取った視聴者はどれだけいるか?結構、言葉足らずなのである。

そして、シム・ウンギョンの協力者という存在がイマイチ説明不足である。ただ、彼女が動くために手伝うというだけで、その動機がよくわからなかった。また、このドラマの途中で意味ありげに出てきた田中要次は結局最後まで出てこなかった。何故に、この役に彼を使ったのか?そして、先週まで大きな存在感があった山本耕史も今回は蚊帳の外みたいな感じで、そういう部分は脚本のいい加減さを露呈した感じだ。

とにかくも、ネットでの報復というものが、現実として存在することは確かであり、それを主題にドラマを作ったことは面白かった。ただ、指殺人対策本部の設備もスタッフもあまりにも貧弱すぎてその辺はどうしようもなかった感じ。そして、香取慎吾をアナログとして扱うのも中途半端すぎた。テーブルの上のラジカセを楽しむ様子もなかったしね。

日テレで放送中の「レッドアイズ」みたいな地下の密室での総合管理とまでは言わないが、それなりのデジタル機器が並ぶ中で、ネット内をとことんパトロールするようなところが見たかったし、ハッカーとの対決みたいなのがないのが残念だ。そう、犯人側のネットリテラシー的なものをもっと描いて、ネット社会の問題点を洗い出して欲しかった気はする。

ある数の人が、ネットでの発信を憂さ晴らしのように扱っている現代である。今までとは違った刑事ドラマがその環境下で成立が可能なのはわかった気がするドラマではあったが、もう少しエンタメとして昇華させる工夫が必要だったようだ。


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