見出し画像

Fake & True

「生のわさび売ってる?」
お客さんに定期的に聞かれる質問だ。
日本製品を売っているお店で働いていると、寿司を家で手作りしてみたいという人が材料一式買い揃えるために来店することがしばしばある。
だが、当店に生のわさびは売っていない。
チューブタイプのわさびは売ってるので、それを毎回拙いとすらも言えない壊れた英語でおすすめする。
「ノーマリー、ジャパニーズ ユーズ イット! ビコーズ、Easy to keep!」

「でもこのワサビってフェイクじゃないの?ワサビ風の味付けされたスパイスではなくて?」
チューブタイプのワサビが本物かフェイクかなんて考えたこともなかった。安くて手軽って恐ろしい。今まで疑いもなくワサビだと思って食べてたものがワサビ風味調味料だったかもしれないと考えたら怖くなってきた。

「君、日本人だよね?ロンドンに売ってるお寿司のこと、どう思ってる?」

「…That's フェイク寿司。」
チューブワサビのことをフェイクでは?と疑ってきたことへのカウンターとしてフェイク返しでそう答えたところ、その韻が効いてウケた。

確かにシャリが壊れやすかったり、味付けや見た目に個性があったり、フェイクだなと思うことはある。シェフはさておき、ディレクションすら日本人ではないこともあるから個性が出て当たり前だとも思う。

回転寿司屋が好きだ。理由はただ安くて手軽でうまいからというだけ。モニターで好きなメニューを頼んで、軽快な合図と共にレールに乗って食べ物が運ばれてくる小さなアトラクション感も楽しい。日本にいる時は定期的に食べに行っていたが、最近経費削減なのか物価が上がったことの影響がチラホラ見られる時がある。今まで2貫で約100円だったのが1貫で約100円というのが少し増えた気がする。

渡英する少し前、毎月のように通っていた近所の回転寿司屋に行ったときのこと。好物のエンガワを頼み、ワクワクしながら寿司列車が現れるのを待っていたら、足の親指の爪くらいの薄くてちっさいエンガワが乗った寿司が来たことがある。何ならシャリとエンガワの間にある大葉の方が大きく存在を放っていた。あれこそフェイク寿司だった。ロンドンの寿司をシャレでフェイクと揶揄したのと同時に、そのことを思い出した。

もし、ここロンドンで買った寿司のオードブルを、どこで買ったかも何も知らされずに日本で出されたら、「これぞ…!私が求めていたリアル寿司だわ…!」とか半泣きで言いながら小一時間小躍りする自信ある。

結局、場所と気持ちだ。


夜ご飯を食べにたまたま立ち寄ったPower Station Parkでジョー マローンのPOPUPストアがやっていた。甘い匂いこそしなかったが、巨大なフェイクのお菓子の家が可愛かった。
そのPower Station Park内のクリスマスマーケットで、まるで映画の世界でしか見ない、嘘みたいに色とりどりの美味そうなお菓子の量り売りのお店があった。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?