法の下に生きる人間〈第7日〉

今日は、認知症基本法で「認知症」がどのように定義されているか確認してみよう。

第2条に、こう書かれてある。

(定義)
【第二条】
この法律において「認知症」とは、アルツハイマー病その他の神経変性疾患、脳血管疾患その他の疾患により日常生活に支障が生じる程度にまで認知機能が低下した状態として政令で定める状態をいう。

以上である。

つまり、アルツハイマー病等の疾患により「日常生活に支障が生じる程度にまで認知機能が低下した状態」が、認知症の定義である。

日常生活に支障が生じるようになるのは、程度の軽重があると思うが、それはさておき、この条文は、2年前の4月に改正された「介護保険法」の条文がそのまま使われている。

実は、介護保険法は、26年前の平成9年に成立した法律である。ずいぶん昔のことであるが、改正される前の介護保険法の条文では、認知症の定義がどうなっていたか、以下に示そう。

平成18年から令和3年までは、介護保険法第5条の2において、認知症は「脳血管疾患、アルツハイマー病その他の要因に基づく脳の器質的な変化により日常生活に支障が生じる程度にまで記憶機能およびその他の認知機能が低下した状態をいう」と定義されていた。

比べてみてお分かりだろう。

「脳の器質的な変化」と「記憶機能」が削除されているのである。

実は、平成9年に介護保険法ができてから、平成18年に改正されるまでは、「認知症」という言葉ではなく、「痴呆」という言葉が使われていた。

近年の医学の進歩で、いろいろな要因が明らかになり、言葉や定義も時代に合った表現に変えられたのである。

介護保険法も、昔は「老人福祉法」や「老人保健法」という法律があって、そこから発展的に成立していったものである。

そして、私たちが40才になったら当たり前のように負担している介護保険料は、介護保険法に基づいて2000年に創設された介護保険制度によって決められた。

このように、一つの法律から他の法律につながって、現行の制度の経緯も明らかになるのだが、私たちは果たしてどこまで理解できていただろうか。

続きは、明日である。









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