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臨床心理士が相談記録についてお話しする会

相談記録の研修会をします

支援職団体Assembleさんで2022年4月と5月に相談記録の研修会を実施することになりました。
それに向けてのnoteを書こうと思いつつ、気がついたら4月になっていました。
これは、、時間泥棒が現れた!?

・・はずもなく、紛れもない私の怠惰でございます。
締め切りも間近なこの時期ですが、開催の準備を進めている中で考えていることなども整理する意味でもnoteを書いています。

Assembleでの記録の研修

様々な研修を企画・開催しているAssembleさん。
実は、ビフォーコロナ(2019年12月)にも相談記録の研修会を開催させてもらったのが最初でした。
遡るとAssembleでの5回目の研修。
今思うと貴重な機会をいただきました。

最近、友人からも「面白そうな研修があって」と紹介されるとAssembleの研修だったりすることもあるんです。
徳田さんが、当時から何を届けるのかなど、丁寧に企画をしている様子を見たり聞いたりしていたので、そうやってたくさんの人が研修を受けて有意義に感じている様子を見聞きすると嬉しいんですよね。
タイトルひとつについても、どうしたら講師の人の話が最大限届けられるものになるか、どんな内容だったら多くの人の学びとなるかを考えている様子を見ているとほんとすごい(語彙力)

Assembleの名のとおり、参加者が段々増えていたりする中で、また改めて記録について機会をいただけるのがありがたいです。

その相談記録、大丈夫?

最初に記録の研修をさせてもらったときは、「その相談記録、大丈夫?」と題して開催をいたしました(煽ってますね)
あの頃は対面研修で、世の中がこんなふうになるとは思ってもいませんでした。

このときは、2019年の産業ストレス学会で「法の知見に基づく適切な記録の残し方~法務・人事担当者・産業医・産業看護職・心理職の記録を見直す~」に感銘を受けたのがきっかけでもあったような気がします。

産業領域で働いている中で、きちんとサービスを提供していることの証として記録を残すこと(中身は企業に報告しませんが)や、訴訟に関連した開示請求などは比較的身近なところで働いてきました。

その辺りを含め、この時のコンセプトは「開示請求に耐えられる記録とは」というところにあったと記憶しています。

自分自身が記録が上手なわけではないし、今も煩雑になってしまうこともあるし、溜め込んでしまうこともあったりする。
他の人も同じように記録に困っている。
自分の経験も含め、自分が困ったことや調べたり学んできた中で得たことを共有することで、他の人の困りが減るといいなぁと思ったところで考えていました。

地味にすごい相談記録

石原さとみ主演ドラマのタイトルをもじってみました。
もともと相談記録については関心もあり、大学院でSOAPやMSEなどは習ったものの、実際の現場ではそれぞれの現場で求められるものも異なるし苦労もありました。
働いてきたところも、フォーマットがある職場もあれば、フォーマットはもちろん何を記録として残すかについても自分で決める必要がある場所まで様々でした。
余談ですが、自分オリジナルの記録のフォーマットを考えるが結構好きだったりします。

先ほど自分が得たことを共有することで、と書きましたが、相談記録は「技法」とは違って、直接的に面接中に活用されるわけでもないですし、その書き方を学ぶことについて優先度が高くなることは少ない「地味」な存在だと思います。

自分の使用する言語で、その日ごとの面接のことを記録として残すこと自体は、多くの方ができるかできないかで言えば、できることと思います。

それでも、困りが生じる記録作成、しかし、記録に関する困りごとをどう改善するかについては、なかなか習う機会も少なかったり、時間も割けない。
そんな現状でもある人は多いんじゃないかなと。

Assembleさんで年末にアーカイブ配信がされた時に、案外申し込みが多かったということを聞きました。

この現象を見ていると、地味ではあるけど、困っていることを抱えていたり、解消したい気持ちがある人が実は結構いるんじゃないかな、そんな風に思ったんですよね。

その意味で、年末に少し時間を設けて動画で改めて相談記録の書き方を考えるというのは相性が良かったのかもしれません。

この「地味さ」は、倫理とかにも似ていて、コンピテンシーの一つでもあるんじゃないでしょうか。技法のような派手さはないけど、底力を支えるもの。そして、なくてもやれそうなんだけど、ないとやれない、というか。

記録を書くためには、その相談を自分自身が客観的に捉える力が求められますし、その相談を専門的に見立てる力も必要となります。

だから、どんなふうに記録を残すかということを考えることは、アセスメントの力を伸ばすことや、相談支援の底力を支えるものでもあると思っています。

駆け出しの頃のSVで、○○については聞いていますか?とよく尋ねられたことがありました。

SVで応えられるために聞くわけではもちろんないですが、次の時にそれを確認したり他のケースでもその視点を持つようにすることで成長したというのはある話かと思います。

臨床において必要な情報を考える視点、というのは、アセスメントのための視点でもあると思うんですね。
そして、その臨床的な視点は記録に残すものでもあり、記録に残す内容は面接中の出来事が中心となるわけなので、何を記録に残すかということをきちんと知ることは、臨床の視点を整理することにもつながるのではないかと思っています。

また、記録を書いている際に「あ、相談中には気づかなかったけど、こういうことだったのかも、だとしたらこんなこともできたかもしれない」と、自分自身で相談を振り返って気づきを得るような経験はありませんか?
そういうセルフSVみたいな要素も記録をまとめることにはあるんじゃないかと思っています。

そのような支援を支える底力につながるような側面を大事にしたいと考えています。

記録の「書き方」について

それ以外に「書き方」についても扱いたいと思います。文章の書き方と言い換えてもいいと思います。

記録を書くということは「まとめる」作業になるわけですが、サマライズの仕方によっては書き手の中で理解できる要約であっても、第三者が見る可能性がある記録としてはわかりにくくなってしまうこともあるのではないかと思います。

例えば、記録の中に「クレームが多いクライエントである」と記載をします。
それを見た際に、第三者としてはその人のことを構えてしまう気がしませんか?
書き手側が「クレーム」とラベルしていることで「意味づけ」が発生しています。

もしかしたら、対応に苦慮されたのかもしれません。
ただ、書き手が「クレーム」と評したものは、「クライエントとしては困っている状況にある中で正しく伝えたいという思いの中でのすれ違い」だったのかもしれませんし、対応する側の組織にミスがあったかもしれません。

それを「クレーム」と表現することは、やや恣意的であり、記録としてはやや客観性をかけてしまうものになるかもしれません。

では、どのように記録するのが良さそうか。
そんな「書き方」の視点についても研修で扱っていきたいと思っています。
(You tubeの広告みたいですね)

相談記録事前アンケート

相談記録に何を残すかについては、所属する組織などによって異なると思いますので、絶対的な正解はないかと思っています。

なので、研修では共通して大事であることや、記録の考え方についてお話をして、それぞれの現場で実践するにはどのように噛み砕くかというところを考えてもらえたらと考えています。

また、せっかくであれば参加される方の課題感を解決する場となってもらいたいと思いまして、事前のアンケートを実施しています。
(よかったら参加されない方も、記録の現状を知るためにも回答のご協力いただけたら嬉しいです)

一部をご紹介してみようと思いますが、記録の書き方を習ったことがありますか、とお聞きしたところ以下のような結果でした(その他の回答を省略)

・大学や大学院等で学んだことがある(19%)
・職場で習った(14%)
・習ったことがない(61%)

相談記録研修事前アンケートより

あくまで参加者ベースですが、この結果で見ると6割くらいの方が習ったことがない中で日々の記録を書いていらっしゃる現状が見受けられます。
もちろん、習ったことがあるからといって、それだけで記録が十分にかけるかというとそうでもないかもしれない。

また、相談記録についてあてはまる状況をお聞きすると、回答者の7割くらいが以下に当てはまると回答をくださっていました。

・相談記録の作成に時間がかかる
・開示請求を求められた時に不安がある
・相談記録に書いてある内容に自信が持てない

相談記録研修事前アンケートより

1つの相談記録の作成時間については回答はまばらでしたが、大体15分〜30分くらいがボリュームとしては多かったです。

その日に5件の相談に対応したら、30分×5件の時間がかかるわけですよね。
中には、相談記録を各時間は時間外になってしまっている現状なども耳にするわけです。

面接時間が50分なのは、その後の10分で記録を書いて、次の方を迎えるた目の時間であるという説もあるわけです(私はなかなかできないことが多い)

そのほかに、以下のような声をいただきました(抜粋)

どのように書いたらよいのか分からない。
大量の情報を書くのが追いつかない。
開示請求用の記録と、自分のために残しておきたい記録を分けたいが職場のシステムがそのようなニーズに対応していない。
記録に時間がかかってしまう。
必要以上に長くなってしまう事がある。
教員にSCがどのように介入しているか、わかりやすく理解していただく書き方が知りたい。
どの程度の範囲まで書けばよいか迷う。
ケース対応で多忙な中で記録を書くことへの負担を感じる。
読み手が読んで状況を理解できるために、何をどの程度書くのか毎回悩む。
時間をおいて自分が書いた記録を読み返すと、もっと簡潔に書けたのにとか、分かり辛いと感じることがある。

相談記録研修事前アンケートより

その他にもいろいろご要望や記録に関する現状の言葉をいただきましたので、その内容を可能な限り読み込んで、お答えできるような会とできればと思っています。

Assemble徳田さんのnoteでも今回の記録に関する企画について書いてくださっているので、合わせて見ていただけたら嬉しいです。

エンドロール

非常に長くなりました。
こんな文章をダラダラ書く人間が、本当にちゃんと記録の話をしてくれるのだろうかと不安に感じた方もいるかもしれません。

ご明察です。

私は今回話す側の立場ではあるんですが、日々記録を書きながら仕事をして、困ったり悩んだり未記載の記録を積んで絶望したりしている意味では、参加者側でもあるんだと思います。

その中でも、少し意識を変えて「ここは気をつけよう」とか考えるだけで、読みやすさが変わったり、時間が短縮されたり、できるようになってきたものもあると思っています。

そういう具体的なノウハウを紹介しながら、みなさんの支援の質が向上したり、働きやすさが向上して、みなさんが関わるクライエントの役に立つような循環につながっていってほしいと思っています。

今回は、基礎編と演習編、ということで知識をインプットする会と、インプットした知識を活用するアウトプットの会のそれぞれを用意してみました。
演習編では、架空事例に関して作成した記録を添削させてもらったり、記録を出すのはちょっと抵抗がある方も自分で演習が取り組めるような内容を考えているところです。
当日のライブ参加も、アーカイブでの参加もありますので、ご都合に合わせてご活用いただけたら幸いです。

お申し込みや詳細はこちらから。

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