『下界の神様奮闘記』第37話「神様とこの街➇」

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「改めて、私は権藤という。それで、私から何を聞きたいんだい? 昼の休憩時間が終わるまでだったら、答えられる範囲で何でも答えるぞ!」

うーん、物分かりが良くて助かった部分はあるけれど、果たして必要な情報だけを話してくれるかどうか……。
 おそらくこの権藤という人は、「凪沙ちゃんタイプ」だ。自分の得意なこと、関心のあることなどについて話す時は、周りが見えなくなるほど熱弁するタイプ。そうなる前に、必要な情報だけをサクッと入手しなければ。

「あの、先日トラックを点検された時の話を……」

「あー、あれは印象に残ってるぞ。不思議なこともあるんだなぁって、びっくりしたからな。そもそもトラックというのはだな……」

まずい。早速熱弁が始まってしまったようだ。

「1917年に、アメリカのトラックを参考とした国産のトラックが……」

「そ、そうなんですね……」

「トラックのディーゼルエンジンは、ガソリンのエンジンよりも燃費や耐久性に優れていて……」

「し、知らなかったですぅー……」

「トラックの整備はまず外周の目視、ワイパーの調整やライトの点灯確認等をする。それからバッテリーや電気配線、ベルト類や冷却装置はもちろん、環境への配慮から公害発散防止装置等のエンジンルームを点検し……」

「…………」

しばらくの間、権藤からトラックの歴史や構造、点検の極意等を30分くらい聞かされることとなった。
 まぁ、わざわざ時間を取ってもらってるんだ。情報を得られるなら我慢、我慢……。

「……というわけで、トラックってのは本当に奥深いものなんだ! お前さんも分かってくれただろう。おっと、もうこんな時間か。聞きたいことはそれだけかい? そろそろ休憩時間も終わるから、仕事に戻ろうかと思うんだが」

「ち、ちょっと待って下さい。そんな話はどうでもよ……あ、こほんこほん。非常に素晴らしい話でしたが、そのー、例のトラックの点検をされたときのお話も……」

「ん……? あ、あぁ! そうだったそうだった! 点検したときの話か! すっかり忘れてたな! がはは!」

馬鹿なのかな? この人は。

「そのトラックを運転していた人が、どこかに不具合が無いかどうかを点検してくれとうちに持ち込んだところから始まったんだ。具体的にはハンドルを切ったとか、またタイヤがパンクしたとかそういったことがあったわけでもないのに、トラックが不可解に軌道を少し左側に変えたんだと」

「それで権藤さんが点検されたわけですね。実際に不具合などは見つかったのでしょうか?」

「いや、何も見つからなかったよ。その人が言ってたように、タイヤがパンクしていたわけでもなかったから、それで左右のどちらかに曲がってしまったわけでもなさそうだったな」

「ハンドルを切っていない、という運転手の証言が嘘だったという可能性はないですか?」

「俺は警察じゃないからよく分からないが、その運転手が一緒にドライブレコーダーの映像を見てほしいと言うから見たんだけど、あれは明らかに「ハンドルを切った時の動き」ではなかったな。表現するのが難しいが、こう、トラック自体が「見えない何かに引っ張られたような動き」をしてた感じかな。あれは不思議だったよ」

「見えない何か」か……。これはますます、偶然ではなく何かの力が働いている臭いがプンプンするな。それも、人間ではまず出し得ない、何か大きな力が……。

その後、特に興味もない車検や洗車の様子を見届け、凪沙ちゃんたちが戻ってきたタイミングで、整備工場を後にした。

「神山さん! 車検の様子、楽しかったですか!?」

「う、うん! 凄く勉強になったよ!」

「それは良かったです! では今度から、車を整備工場に持ち込む度に、神山さんを連れて行ってあげます!」

それは勘弁してくれ……。




次話から3話は番外編となります!

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