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お点前デビュー日511
両親が大好きだった【お茶】のことが知りたくて、昨年から少しずつ習い始めたお茶でしたが、本腰を入れて稽古を始めたのは先月から…。
本日の稽古で、やっと風炉点前デビューしました。といいますか、お恥ずかしながら私はこれまで客点前ばかりで、お点前自体のデビューでした。とても感動したので、ここに記しておきます。とても些細な私事ですし、文書も数年後の自分が読み返すための素文ですので、もし読んで下さっている奇特な方がいらっしゃいましたら、ご容赦くださいませ。
2022年5月11日
今日はじめて先生から「秋草さん、お薄立ててみなさい」と言われ、薄茶点前デビューしました。
お茶の稽古はメモが取れないので、集中して目で見て耳で聞いて肌で覚えていくしかなく、いきなり「やってみなさい」と言われても、一挙動もできないのではないかと思っていました。
が、ずっと他の皆さんのお点前を見て、聞いて、肌で感じていたからか、頭で考えずに体が動いている瞬間が何度かあり、そのことに気がつくと全身の細胞が開くような不思議な感覚がしました。でも、そういった瞬間の次には必ず自意識が戻ってきて、とたんに動けなくなってしまいます。その繰り返しでただ必死に、先生の教えてくださるように立ち、歩き、動き、直し、一心不乱にお茶を立て、やっと一服お出しできた頃にはもう頭がパンパン…。「こんなに細かく全てが決まり事でキチキチしているお茶の時間をいつになったら“楽しい”と感じるのだろう…」と思いながらお茶をお出しして、ふっと肩の力が抜けた時、お正客の方が「あなたが“人生で初めて”立てて下さったお茶を頂戴致します」とご挨拶して下さったのです。「あ、私の茶人人生が“今”始まったんだ…」とハッとしました。そして「美味しいです!」とおっしゃって頂いた時は、嬉しさに胸が熱くなって、涙が出そうになりました。お茶を一服お出しすることに五感を全集中させて、相手の方に「ほっ」として頂けたことが、こんなにこんなに嬉しいなんて、思いもよりませんでした。そして、今日のお稽古をご一緒した皆さんが私の初点前を嬉しそうに祝福して下さり、お茶をお出しすることで誰かが喜んで下さることの喜びを感じました。(え、喜びしかないこの空間…喜び!!)って思ってどんどん喜びの連鎖が。笑
千利休さんは豊臣秀吉さんに戦場まで呼ばれてお茶を立てたといいます。戦国武将も皆、お茶室に入る時は命の次に大切な宝である刀を外していたといいます。「ほっ」とすることに全集中する時間だったのだと思います。
季節やその日に合った掛軸やお菓子や茶器でお出迎えをするのは、もう二度と来ない“今この時”を思い切り味わい愉しむためなのだと思います。
“今この時”ここに居る全員が顔を合わせ一緒にお茶を飲むことができるのは決して当たり前ではなく、奇跡的なこと。もう二度と会えないかもしれないのだから。
余計なことは言わず、伝えたいことは掛軸やお菓子や茶器に込め、心は所作やお茶に込める。そしてそれをお出しして、お客様に「ほっ」をお届けする。お客様もその心を受けようとお点前を目で見て、耳で聞く(湯がしくしくと沸く音や、柄杓をちゃぷっと入れる音、湯を茶碗にとろとろっと注ぐ音、お茶をしゃこしゃこ立てる音…)
何百年もかけて先人達が目と耳で伝えて繋げてくれた伝統や文化を、その心を、私は“今この時”受け取っている。“今この時”まで途方もなく続いてきて、そして“今この時”から途方もなく続いていく時間の中にみんな存在してる…
お茶って、お茶って……なんて素敵なんだろう!!!
これからは客点前のお稽古も心持ちが変わるだろうし、日常、自分でコーヒーやお茶を淹れる時やお店などで頂く時も、きっと心持ちが違ってくるのだろうと思います。
それだけじゃない。演劇、演技の教えの仕事、空手、生活そのもの、全てに通じることがお茶の時間には沢山散りばめられていて、無数の星のようにキラキラしながら、私たちがその輝きの一つ一つに気がつくまで見守ってくれているみたい。
あぁ、本当に…
日々是好日 なんだなあ
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