『鬼滅の刃』は「説明過剰コメディー」として観ると10倍面白い!
みなさん、お久しぶりです。RUDDERです。
私はアニメが好きなのですが、最近とても面白いアニメを見つけまして。
『鬼滅の刃』
っていうんですけどね? 知ってます?
……という茶番はここまでにして、今回は、皆さんご存じの大人気アニメ『鬼滅の刃』についての記事です。
1.あらすじ
『鬼滅の刃』を観たことのない人もいると思うので、ここで簡単にあらすじを説明します。
なかなかにハードなストーリーですね。第1話では、平和に暮らす炭治郎が家族を殺されてしまい、妹が鬼になってしまうというかなり辛い展開が繰り広げられます。
※以下の記事では、多少ではありますがネタバレを含むため、第1話を視聴後に読むことを推奨します
2.『鬼滅の刃』=「説明過剰コメディー」という発見
2020-21年頃にかけて大流行した『鬼滅の刃』。流行自体は少し落ち着いてきましたが、現在も新作アニメが制作されるなど、その人気はまだまだ衰えていません。
筆者も流行当時に1クールほど視聴したのですが、あまりハマらず、その後もしっかりと作品に触れることなく過ごしてきました。(そのため、作品内容に関する知識は薄いです。ご了承ください。)
しかし、先日たまたまアニメ第1期の第1話を観る機会がありまして、改めて観てみたらものすごく面白い!
何が面白いって、登場人物がめちゃめちゃ過剰に説明する場面が沢山あるんです!
最初に観た時には「モノローグが多いな〜」とか「セリフが長いな〜」くらいにしか思っていなかったのですが、改めて観るとこのアニメ、
登場人物がこれでもかという程、あらゆることを説明してくれています。
それはもう笑ってしまうくらいに。
もはや「説明過剰コメディー」と言ってもいいくらいに。
まあ、そう言われてもピンとこない人も多いと思うので、
今回は『鬼滅の刃』第1話の、「おもしろ説明過剰ポイント」を紹介していきたいと思います!
3.自己認識が正確すぎる炭治郎
まずは冒頭のシーン。
山奥の家で暮らす炭治郎が、家族に囲まれて幸せそうに暮らしています。セリフから察するにどうやら、炭治郎は町に炭を売りに行く様子。
なるほど。
山奥に住んで炭を売っていることや、兄弟が多いこと、父親がいないことを鑑みると、炭治郎はそれなりに貧しい生活を送っているようですね。
炭治郎は炭を売るため、山道の中を街へ向かいながら考えます。
いや、映像見てたから分かるよ!?
なんて自己認識の正確な主人公なのでしょう。
この年齢にして、「自分は貧しいけれど幸せだな〜」と自覚しながら生きているのです。
さすが、大ヒットアニメの主人公です。
確かに、自己理解は大事ですもんね。
ちょっと説明っぽいけど、これくらいの表現は他の作品にもよくあることです。次に進みましょう。
4.どんな状況でも説明は怠らない炭治郎
炭を売り終わり、麓のお爺さんの家で一泊してから家に帰った炭治郎。
そこには無惨に殺された家族の姿が………
混乱する炭治郎ですが、わずかに息がある妹・禰󠄀豆子を背負い、町へと雪の中を走って行きます。
辛そうな呼吸で必死に走る炭治郎はとても苦しそうです。これだけ走ってもまだ町の影は見えてきません。
走りながら炭治郎は考えます。
だろうね、見れば分かる。
さすが自己認識に定評のある炭治郎です。
これだけ切迫した状況下にあっても、心の中で自分の置かれた状況を正確に説明することは忘れません。
さて、走り続ける炭治郎でしたが、崖で足を滑らせ、落下してしまいます。
しかし、幸いにも崖下には雪が積もっており、炭治郎は助かります。
炭治郎は思います。
そのとおーり!! だって、それを今、映像として観たもん。
それ別に言葉にしなくてもよくない?
想像してみてください。
仮に、目の前で友達が石につまづいてコケたとして、
その友達が「俺は今、石につまづいて転んだんだよね」
とか言ってきたら恐怖じゃないですか?
「それは見てたから分かる。もっと言うことあるだろ」って思います。
でも、炭治郎は自分が今どんな状態か、ちゃんと説明してくれます。
説明しなくてもいいことも、説明してくれます。
「〇〇系主人公」という表現がありますが、
炭治郎は間違いなく「過剰説明系主人公」と言えるでしょう。
5.見れば分かることをわざわざ言葉にして教えてくれる「心優しき少年」・炭治郎
このあたりで、読者の皆さんには、なぜ私が『鬼滅の刃』を
「説明過剰コメディー」だと思うかがわかってきたと思います。
そもそも、アニメには小説や漫画にはない特徴があります。
その主たるものは、映像・音・声優の演技です。つまり、アニメは小説や漫画よりも情報量が多いといえます。
そんなアニメという表現方法だからこそ、登場人物の様子や心情、情景描写は作画(動きを伴った絵)を用いて伝えることができます。
映像で表現できるなら、わざわざそのことを説明する必要はないですよね?
しかし、炭治郎は「心優しき少年」です。
視聴者が見れば分かることも、丁寧に言葉にして伝えてくれます。
そうです。決して視聴者を馬鹿にしているわけではありません!
彼の心が優しいだけなんです!
ともかく、『鬼滅の刃』では、こうした過剰な説明がかなり頻繁に行われており、それはもはやコメディーの域に達していると感じます。
さて、物語はまだ第1話の前半です。
後半でも沢山の過剰な説明が行われているので、観ていきましょう。
6.脊髄反射で説明していく炭治郎
崖から落ちた炭治郎ですが、今度は鬼となって凶暴化した禰󠄀豆子に押し倒されてしまいます。手元にあった斧でなんとか禰󠄀豆子の牙を防ぎますが、禰󠄀豆子も強い力で炭治郎を抑え込んできます。
鬼となったからでしょう、禰󠄀豆子の体中の筋肉が増大し、体が一回り大きくなりました。抑え込む力も強くなっていきます。
必死に禰󠄀豆子を抑えながらも、そこは流石「過剰説明系主人公」の炭治郎。
しっかりと心の中で現在の状況を説明します。
もはや脊髄反射で説明しているとしか思えません。
当たり前のことを、とても重要なことのように説明しています。
直前に映像として見せたことを改めて説明する……
そう、これがアニメーションにおけるトートロジーなのです。
もしかしたら、炭治郎こそがアニメ界の小泉進次郎なのかもしれません。
………と、筆者がそんなことに思いを馳せている1分間ほどの時間でも、炭治郎は心の中で
と、自分の気持ちを説明します。
禰󠄀豆子に押さえつけられてるのに、そんなことを考える余裕がある炭治郎先輩。流石です。
これぞ「過剰説明系主人公」の鑑でしょう。
そして、炭治郎は次のように説明します。
なんということでしょう。
匠の粋な計らいにより、1分遅れで状況説明がやってきました。
さっきからずっとそうだっただろ! とツッコまずにはいられません。
そうして炭治郎が四苦八苦していると、鬼になった禰󠄀豆子を殺しに、鬼殺隊の冨岡義勇が刀で切り掛かってきます。
炭治郎は間一髪で禰󠄀豆子を守り、転がりながら冨岡の一振りをかわします。
張り詰める空気。
今まさに妹を殺そうとした異様な相手と対峙する炭治郎は思います。
刀!?!?
「なんだ!? 誰だ!?」までは、まだ分かります。
でも、「刀!?」て!
炭治郎くんはどうやら、見た物の名前を脊髄反射でそのまま言うのが、
「説明」だと勘違いしているようです。視聴者が「刀」を知らないと思っているのでしょうか……
7.過剰説明の権を他人に握らせるな!
さて、ストーリーは進みます。
妹を殺そうとする冨岡に対し、炭治郎は土下座して妹の助命を嘆願。
そんな炭治郎に冨岡はキッパリと言い放ちます。
出たー! 名言きました!
私でも知っている名台詞ですね。
いやぁ、冨岡さんカッコいいなあ、声優も櫻井孝宏さんだし。
そんなことを思っていると冨岡が話を続けます。
おうおうおう、どうしたどうした??
びっくりしたぁ… 急にめっちゃ喋るやん……
うん、確かに分かるけど、「生殺与奪の権を他人に握らせるな!」というインパクト大なフレーズでかなり言いたいことは伝わったよ?
大丈夫大丈夫、ありがとうね冨岡さん。
そこまで説明しなくてもいいよ、お疲れ様。
しかし、こんな筆者の思いをよそに、冨岡はさらに心の中で語り始めます。
どんだけ語るねん……
長すぎて話が全然入ってこないよ……
あと、約2分間ずっと禰󠄀豆子を片手で抑えながら話してるから、話に集中できないよ……
ここまで、立派に「過剰説明系主人公」としての役割を果たしてきた炭治郎ですが、新たに現れた冨岡に完全にお株を奪われてしまいました。
さすが鬼殺隊の実力者。
自分が思っていることを一から十まで懇切丁寧に説明する能力まで身につけているとは……
一方の炭治郎ときたら……
冨岡に諭されたショックで自分の気持ちが言葉にならないようです。
それじゃ、まるで普通のアニメの主人公じゃん!
炭治郎は「過剰説明系主人公」です。
そういうときこそ
「長々と1人で語り出したぞ!?」とか、
「片手だけで禰󠄀豆子を…!?」とか、
そういう、見たら分かる脊髄反射の過剰説明をしなきゃだめだろ!
過剰説明の権を他人に握らせるな! 炭治郎!!
おわりに
さて、細かいところを言えばまだ「説明過剰ポイント」はあるのですが、長くなってきたのでこの辺りで筆を置くことにします。
私は流行当時『鬼滅の刃』にはハマらなかったタイプなのですが、
以上のような「説明過剰コメディー」としての観点から捉えると、『鬼滅の刃』が10倍面白くなりました。
第2話以降で、炭治郎含む様々な登場人物がどのように過剰な説明をしていくのか、楽しみでなりません。
まだ『鬼滅の刃』を見たことがないという方も、一度観たという方も、
本記事のような視点で観てみると、新たな発見があるのではないでしょうか。
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