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「独立器官」(『女のいない男たち』その5)

「独立器官」(『女のいない男たち』その5)
村上春樹著

著者(僕)の知人渡会(とかい)が、ある女性に恋してしまったことを僕に打ち明けるところから物語が始まる。

なかなか、主題を掴むことが難しいと思った。

渡会は、52歳の男性、六本木で美容クリニックを経営する医師。彼は独身でいることを良しとして、常に2〜3人のガールフレンドとデートをしたり、セックスしたり充実した人生を送っていた。

元々、恋愛に深く落ちることはなかったのだけど、16歳年下の既婚、子持ちの女性に深く恋に落ちてしまう。そして、彼女が、自分ではなく、他の男性の元に駆け落ちしたことを知り、ショックを受けて、死んでしまう。

それまでの人生には、未来について、不安感がなかったで、様々なことを真剣には、悩むようなこともなかった渡会だったが、彼女との恋愛を通して、不鮮明な未来に気づいて、生きる不安に陥る。

愛する存在がいるということは、その存在が、いない時間の孤独感との戦いでもある。

「すべての女性には、噓をつくための特別な独立器官のようなものが生まれつき具わっている」というのが渡会の個人的意見だった。

渡会は、長い間、様々な女性との恋愛は、自分の独立器官がもたらした技であることに気づく、一方、15歳年下の彼女のその独立器官にやられてしまった。

女性との真剣な恋愛、そして、その恋愛を失う恐怖を通して、人生は、不確実性というものを客観的に感じ取って壊れてしまったということなのだろうなあと思った。

恋愛は、真っ直ぐに取り組むことが、大事なことなのだということだなあ。

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