【読書ノート】『デューク』
『デューク』(『つめたいよるに』より)
江國香織著
長い間可愛がっていた愛犬デュークが、亡くなった。そんな悲しい日なのだけど、主人公の「私」は、渋谷へ仕事に向かう。涙が止まらないまま。電車に乗っていると、その少年は、席を譲ってくれた。そして物語が始まる。
エンディングは、鳥肌が立つような美しい物語だった。
キーワードを挙げてみる。
①プール(少年はプールに行こうと誘う)とは、何を意味するか?
1. 流動性と変化:プールは水で満たされた場所であり、水は常に流れて変化する。この流動性と変化は、哲学的には無常性や流転の象徴とされる。プールを通じて、物事は絶えず変わり、流れていくことを思起させられる。
2. 内省と浸透:プールはしばしば静寂と落ち着きの場所として利用される。水中に浸かることは、心身をリラックスさせ、内省や瞑想に集中する機会を提供する。
3. 共有とつながり:プールは人々が集まり、共有の場を提供します。泳ぐことや水遊びを通じて、人々は交流し、つながりを深めることができる。これは社会的つながりや共同体の形成の象徴として解釈される。
4. 浄化と再生:水は浄化や再生、清浄の象徴として広く認識されている。
②渋谷という街が、意味すること
渋谷は常に変化し、新しいトレンドやアイデアが生まれる場所として知られている。街の風景や人々の行動は瞬く間に変化し、流れていく。この流動性と変化は、哲学的には無常性や流転の象徴とされる。
③古代インドの細密画(少年が好んだ作品)
1.絶対的な美:細密画は非常に詳細で緻密な描写が特徴であり、完璧な美を追求する。絵画の細部に込められた美しさや優雅さは、絶対的な美への尊敬や理想化された世界への渇望を象徴する。
3. 循環と永遠性:古代インドの細密画には、循環的な時間や永遠性の概念がしばしば描かれる。複雑なパターンや幾何学的なデザインは、無限の流れや時間の連続性を表現している。これは生命のサイクルや宇宙の永遠性を象徴する。
これらのキーワードを踏まえて、本書の主題を考える。
愛情は、すべての基本だということ。「私」のデュークへの愛情をデュークは、受け取って、喜んでいたということなのだろうと思った。
非常に美しい文章で、心が震わせられる。
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