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オリジナル蔵書印を作った #買ってよかったもの

1 蔵書印をご存じですか?

蔵書印をご存じでしょうか。
本の持ち主が「この本は私のものです」とお知らせするために押す印のことです。例えば図書館の本の見返しや裏表紙になどに「○○図書館所蔵」と印が押されているのを見たことありませんか。あれが蔵書印です。
ハンコ文化の日本や中国では「蔵書印」ですが、西洋では紙に印刷した「蔵書票」というものを貼るそうです。
いずれにしても、「これは○○さんの蔵書なんだね」と分かるようになっています。

こちらのサイトでは、勝海舟や正岡子規の蔵書印が見られます。

また、大学の研究機関である国文学研究所のサイトに「蔵書印データベース」というものもありました。蔵書印は、立派な研究資料のようです。

蔵書印は、「○○蔵書」と文字を押印するものが多いのですが、蔵書票は文字のデザインを工夫したり、イラストを入れたり、古典の格言を加えたり、持ち主の趣味や好みが詰まったオリジナリティあふれるものがたくさんあります。

日本書票協会という団体もあるようで、蔵書票には愛好家がたくさんいらっしゃるようです。

2 蔵書印が欲しい

蔵書印の存在を思い出したのは、安野ニツカさんのこのツイートのおかげです。ニツカさんの素敵な児童書コレクションを拝見していたときのおしゃべりからでした。

「自分の愛読書に、オリジナルの蔵書印を押す」って素敵だなあと思いました。

しかし、実を言えば、私は本を汚すに抵抗があるんです。教科書でもなければ、本に線を引くこともしませんし、ページの端を折る、いわゆるドッグイヤーにすら抵抗があります。美しく完璧な名画にペンキをぶちまける行為のような罪悪感があります。

学生時代は、マンガのカバーの背を真剣に見比べて、潰れて平たくなっていたり、折れ目がついていたりしない、丸く弧を描いているものを必死で選ぶほどキレイな本が好きでした。(今は、そこまで神経質に探しませんが)

蔵書印や蔵書票で自分の蔵書を整えるのは素敵。でも本を汚すことになるし、自分には無用かなと思っていました。

そんな私の気持ちが、最近変わってきました。
長い間、私にとって本は、買って、読んで、売ってを繰り返す、循環するものでした。読めばおしまい、手放してまた新しい本を買う。そうやって、たくさんの本を買って、手放してきました。

また、本のコレクションも変わってきました。
これまで、私の本棚には、ハウツー本ばかり並んでいました。ダイエット、メイク、ファッション、英会話、自己啓発。自分を良くしようという心がけはいいんだけれど、どれも三日坊主。感情を揺さぶられたり、感性を磨く小説やエッセイ、自分の好きを集めた絵画や写真の本は圧倒的に少なかったんです。
年を重ね、自分に余裕が出てきた頃から、昔、小説やエッセイが読み返したくなりました。すっかりホコリをかぶってしまった自分の感性の根っこを、もう一度掘り返したくなったのかもしれません。今、古書店を探して買い直しています。

一生、手元に残すべき本がある。
ほかの人から見れば、ただの小説やエッセイでも、自分にとってはバイブルのような、お守りのような、ぼろぼろになればなるほど、なお愛おしさが増す本。そんな本があるのだと、最近ようやく気づいたのです。
もちろん、本棚の容量は有限で、全部を残すことはできないけれど、昔大好きだったものは、いつまで経っても好きなのです。だから、できるだけ残しておきたいと思いました。

そしたら、無性に蔵書印が欲しくなったのです。

せっかく作るなら文字だけではちょっとつまらない。私らしい、オリジナリティあるデザインの蔵書印がいい。できれば、西洋の蔵書票のように、文字やイラストを盛り込んだのがいいなあ。
それをゴム印にして、本に押したらいいかも。
だけど、私にはイラストを描く画力はありません。ネットで無料の画像を探してきてデザインするセンスもないし・・・・・・

そう思ってあきらめかけていました。

3 トラの年賀状が届く

2022年のお正月、猫野サラさんから年賀状を頂きました。2022年の干支は「寅」です。そして2022年、私は年女。
サラさんから頂いた年賀状に描かれたトラが素敵だったんです。
寅年にちなんで、数年前からトラグッズを集めています。トラグッズとはいえ、何でも良いわけではなく、カワイイとかカッコイイとか、私の中で「好きだな」と思えたものだけを集めています。
年賀状に描かれたトラは、本物っぽくてカッコイイのに、どこかかわいらしさもあり、好きなデザインでした。

「このトラのイラストが蔵書印になったらいいなあ」
と思いつつ、サラさんにお願いするかどうか、ずっと迷っていました。

そんな折、サラさんに直接お会いして、サラさんの気さくな人柄に触れ、私のつたないお願いも笑わずに受け止めてくださると確信して、やっとお願いすることができました。

4 イラストができました

サラさんには、TwitterのDMからイラストをお願いしました。
お願いしたのは以下の点。
・年賀状のトラをアレンジしてもらいたいこと
・どこかに「EX LIBRIS」と「RUMI」と入れてほしいこと
(「EX LIBLIS」とは「~の蔵書より」という意味)
なお、参考になる画像を何点かお見せして「こんな感じで」とお願いしました。

すぐにお返事をいただき、快く引き受けてくださいました。
蔵書印や蔵書票についてはもちろん、ゴム印の発注方法まで調べてくださって、本当にありがたかったです。画像データには、いろんな形式があるので
お店によって入稿できるデータ形式が違うと教わりました。
こういう、受注した仕事のその先まで考えてくれる人が、本物のプロですね。

元のイラストに枠を足してもらったり、ゴム印のサイズに合わせて画像の大きさを調整していただいたり、TwitterのDMでお話ししながら、詳細を詰めていきました。

数日後、サラさんからイラスト案を、3案送っていただきました。まさか3つも描いてくださるとは思わず、感激でした。
その中で候補を2つに絞り、どちらを選ぶかすごく迷いました。
それがこの2つ。
①は年賀状のトラのイラストをアレンジしたもの。
②は新たに描いてくださったもの。

どっちもいい!!

①はカッコイイし、②もカワイイ。1つを選ぶと1つがボツになるんだけど、どっちもボツにできない!!
迷い迷って、結果2つとも買い取らせてもらいました。

ゴム印の仕上がりサイズに合わせて、2.6cm角で、PNG、PDF、PSDの3種類のデータ形式で納品していただきました。

こういうやりとりが全部TwitterのDMでできちゃうのも、ネット時代の恩恵です。

5 いざ、蔵書印を作る


頂いたデータ形式で入稿できる、オンラインのはんこ屋さんを見つけました。

はじめて使うお店なので、まず1つ注文してみることにしました。
待つこと、数日。トラブルなく、できあがりました。
サラさんのイラストそのままの蔵書印が完成しました。

親トラ蔵書印完成。かっこよ!

永久保存版の「真夜中インター」に押印、ポン。
再現性はバッチリ。細かいトラの毛や背景の水墨画のような山も、しっかり印字されています。

満足な仕上がりでしたので、子トラも発注。
できました!

やっぱり、カワイイ。

こちらも、毛並みのもふもふ感がしっかり表現されています。

並べてみました。トラの親子です。

6 蔵書印を押す

買ってきたカードに、子トラ蔵書印を押しました。買って日の浅い本や、手放す可能性のある本には、このカードを挟み込みます。

そして、ずっと手元に置いておきたい本には、親トラ蔵書印を押しました。

いくつか蔵書印を押してみて、気づいたことがあります。

本にはいろんな紙が使われていました。スタンプのインクがすぐ乾くものもあれば、いつまで経っても乾かないものもありました。肌触りがなめらかなもの、ざらざらしたもの、紙の厚いもの、薄いもの、色の濃淡、和紙か洋紙かなど、見返しの紙一枚にも、本の作り手の思いが込められていたことに、今まで全く気づいていませんでした。


それから、蔵書印を押すことで、よりその本への愛着が増しました。
本を汚すことに抵抗があると、先ほども書きました。実際のところ、そのことに抵抗がなくなったかといえば、そうでもないです。

同じように本棚に並んでいる本なのに、印を押すのに抵抗がある本とそうでない本がありました。本を手に取ってパラパラとめくると「これは押しても大丈夫」「これはダメ」と、どこからともなく答えが降ってきます。
印を押していいと判断した本に、印をポンと押すと、「本」という物だけではなく、「本の中の言葉全部」が自分のものになったと感じました。

それ以外の本には、黄色の子トラの蔵書カードを挟んでいきます。いつか「これは私の言葉だ」と思える日には、親トラの印を押すつもり。それまで寝かせておきましょう。

7 蔵書数に驚く

さて、子トラの蔵書カードを100枚作ったのですが、本棚の3分の1の整理も終わらないうちになくなってしまいました。本棚のほかにも、リビングや寝室、作業部屋に置いてある本もあり、いつの間にかこんなに本が増えていたのかと驚きました。これはなかなか大仕事になりそうです。
あと、ここまでカードでやってきましたが、付箋に印を押して本の見返しに貼るというのも蔵書票っぽいし、現代感があっていいかもしれないと思いはじめています。(落とす心配もないし、いつでも剥がせる)

作業は、年内に終わるように頑張ります。

サラさん、素敵なイラストをありがとうございました。

ここで少し、サラさんのnoteをご紹介します。

今年サラさんが書いたnoteは162本だそうです。ほぼ2日に1本、公開されておられて、本当にすごいです。
さて、その162本の中から選りすぐりを月別にまとめたnoteです。サラさん2022の集大成がここに! そして、改めて文藝春秋への掲載、おめでとうございます!


そして、サラさんのお仕事依頼noteはこちら。

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