「ひきこもり」と「浮世絵」

2015年に内閣府が行った調査では、15〜39歳のひきこもり者数は、54万人でした。2018年の調査では、40〜64歳のひきこもり者数は、61万人でした。調査時期が違うので正確には分かりませんが、合わせると100万人は超える予測です。

ひきこもる人が増えると労働者も減るので、国としての生産性は下がります。社会的には大きな問題、という文脈で語られることが多いです。また、ドラマなどで描かれるひきこもっている方の人物像は、暗くて、鬱積したものを持っていて、異常者のように描かれがちです。100万人もいるので、中にはそういった方もいるかもしれませんが、多くの方とお会いしていると偏ったイメージだと分かります。

社会の中ではネガティブなイメージが強く、またそれを受けて本人たちもひきこもっている自分に対して罪悪感や焦燥感を感じていることが多いです。しかし、物事には良い面と悪い面が必ずあるように、ひきこもりに関してもネガティブな面ばかりではなく、ポジティブな面もあります。

ひきこもりのポジティブな側面を考える際、江戸時代を振り返るとヒントが隠されています。その時代に鎖国していた日本は、国家レベルでひきこもっていたとも言えますね。

鎖国していた日本は、世界から取り残された面があります。一方で、浮世絵を代表とする独自の文化が花開きました。それが陶磁器の包装紙に使われて海外に伝わり、ゴッホやモネなど印象派の画家たちに影響を与えたという話は有名です。鎖国して外との交流を控えたために、個性豊かな文化が花開いたわけです。

この現象は、個人に関しても同じことが起こります。カウンセリングをしていると、ひきこもりの方とお会いする機会が多いのですが、独特な考え、価値観を持っている方が多いです。場合によっては、ひきこもることでその方の魅力は守られた、ひきこもって良かったのだろうなと感じることさえあります。

とは言え、ひきこもっている当人からすると、ポジティブな面について語られても、何のなぐさめにもならないかもしれません。もっと苦しいんだ、抜け出したいけど抜け出せないんだという意見もあるでしょう。ではどうやったら抜け出せるか?について、次回以降に書こうと思います。

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