「今日のあなたに」が就活体験記で埋まっていて憂鬱なあなたへ
先日、ある企業の就活リクルーターを名乗る男性から電話がかかってきた。
会社で働いたことがない私が想像する
ハツラツとしていて、おでこの出てる髪型で、紺色スーツを着て、とんがった靴を履いて、街を颯爽と歩いてそうな社会人の声ではなく、
恋愛アニメに出てくる男性声優さんのような、あまあま爽やかボイスで、
「ぜひ、旭るーないさんには今後の当社の選考に進んでいただきたく、ご連絡いたしました。
当社では、選考に進んでいく上で、学生にリクルーターをつけてまして~」
うんたらかんたら
と流しそうめんが上流から下流に流れるように、滞りなく説明された。
あまりにもよどみのない説明に圧倒されてしまい、
やすこのように「ハイーーーー」と、
か細く何度も返すことしかできなかった。
そして、リクルーター甘目ボイスお兄さんは、意気揚々と訊ねてきた。
「ところで、旭さんの現在の就活状況はどうなっていますか?」
この流れで、この質問はごく自然。
しかし、私の就活はおそらく?たぶん?順調ではないらしいので、その時、答えるべき企業名が一つもなかった。
そのため、質問には、
「あぁーー、就活はのんびりしたいと思っていてーー。自分の大切なことを大事にできる企業をゆっくり見つけようしてますー。」
と答えた。なんか読み直すと、開き直っているようだし、
内定が無くて強がっているように聞こえる。
痛々しい。
中学生の頃の交換ノートを読んだ時くらいの痛々しさを感じる。
けれど、その時、いや最近は本当に心からそう思うようになった。
すると、リクルーター甘目ボイスお兄さんは
「へぇーそうなんですねぇ。
でも、今って就活は早期化してるじゃないですかぁ。年上からのアドバイスとしても、就職先は早く決めた方がいいと思いますね~。」
耳がただれるくらい何べんも聞いたフレーズに、
私は非常に焦らされてしまい、
「でも、自分の大切なことが大切なので、大切にしたいですね~」
小泉進次郎に負けない小泉構文を生成。
そこで、リクルーター甘目ボイスお兄さんは、
「ちなみに旭さんが大切にしたいことって何ですか??」
と質問。
そりゃあ、あれだけ大切。大切。大切。って言ったら、
何が大切か気になりますよな。
「えーと。書道とか編み物とか、絵を描いたり、文章を書いたりすることですかね。
なので、焦らされないで、のんびり働けるところで働きたいですねーー。」
就活状況のやり取りの時点で、この企業の選考を受けることは無さそうだなと思ったので、正直に答えてみることにした。
採用担当の方と話す機会は、多い方が良いと思ったし、自分の本音がどのように映るのか気になった。
甘ったれた自分の回答に、リクルーター甘目ボイスお兄さんはこう答えた。
「たぶん、恐らくですけど、
旭さんが求める企業はどこにもないと思います。
年上からのアドバイスなのですが、旭さんは就活を辞めた方が良いのではないでしょうか。」
えーーーーー。びっくり。驚き。自分は、会社勤めに向いてる人間だと思っていたので、すごい驚き。
周りの人にも、会社働きが向いてるよって言われてきたので、本当に驚き。
それはさておき、そりゃあ、そんな呑気な回答じゃ社会不適合者と思われるよな。
「私は非常に忍耐強いので、会社勤めは向いてると思います。私は、今までの人生の選択において、苦手なことに挑戦する形をとってきました。自ら努力できることを知っているので、頑張りを強制するところで働きたくないと考えています。」
急な自分語りで、自分は社会人に向いてるぞとファイティングポーズ。
思い出すだけで、恥ずかしい。
「しかし、社会人であるなら結果を出したり、成績を出したりすることは求められますよ。」
(社会人って、みんな結果や成績を出しているのか。。。。大変だ。)
「私は常に頑張っていて、生き急いでいて、エレン・イェーガーなんです。なので、頑張りを強要されたくないんです。」
「ははっ。そうですよね。私もそう思います。
うちの会社でも、結果が出せなかったら注意されてしまいますが、やることをやれば怒られませんよ。
そういう意味でも、メリハリがついた会社なので、旭さんにマッチしているかもしれません。
説明会に参加してみませんか。」
長々とした自分語りをものともせず、説明会参加を促すまでの流れが鮮やか。
長電話になってしまい申し訳なかったので、
リクルーター甘目ボイスお兄さんの説明会の誘いに乗ってみることにした。
そして、説明会の予約を終わらせたところ、
「旭さん、最後に当社に関して質問ありますか?」
と通話が終わりに近づいていることを表す質問をされ、安堵を感じたが、
一点重要なことが不明確だなと気づいたので、最後にせっかくだからと思い、質問してみた。
「転勤の可能性はありますか?」
「はい、あります。当社は、全国転勤となっております。」
「あの、申し訳ありません。ベイスターズの試合をいつでも見ることができる地域で働きたいので、マッチしてないと思います。」
「そうですね。説明会をキャンセルしておきます。旭さん、今後も就職活動大変かもしれませんが、頑張ってください。」
ここまで読み終わった人は、
旭は、就活軸と自分が働きたい条件をはき違えているのではないか?
と思うかもしれない。
でも、今の自分にはそれが丁度いいと思う。
生活のコンディションが悪いと、勉学を頑張れないことは既に知っているのだから、仕事でも同じである。
自分の望みに100%かなう企業がないことは十二分に知っている。
できるだけ、自分に合っているところで、
自分でも雇いたい会社をゆっくり見つけ、働けばよいのだ。
そして、様々な人と出会い、自分の好きなことを楽しみ、面白いエッセイを書き、スーパーオフィスレディーになるのだ!!!!
こんな奴と長電話させられたリクルーターが不憫でしょうがないと思う方もいるかもしれないが、この就活すれ違いコントのおかげで、就活サバイバーとしての在り方も再度見直せた。
本音と建前を巧みに使い分けることの重要性を改めて痛感できたし、私の至らない点をのんびり改善していきたいなと思った。
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