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投球障害肘の段階的復帰プログラム

投球障害肘は投球障害肩同様休んでいても治りません。
特に肘障害では病態や年齢により復帰までの道のりも
さまざまです。
単純に痛みが引くまでの期間を休めば良いわけではないです。

今回は投球障害肘について
特に現場で多く経験する内側障害を中心に
年齢を考慮した復帰プログラムをお伝えしていきます。


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■野球現場での投球障害肘


野球現場では投球障害肩と共に肘関節に痛みを
訴える選手は多くいます。
特に小学生や中学生の成長期の選手に多いとされています。

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※sakata J:Phtsical Risk Factors for a Medial Elbow Injury in Junior Baseball Players:A Prospective Cohort Study of 353  Players.Am J Sports Med.2017 ;45(1):135-43 


実際の野球現場に帯同してみて
投球障害肘は再発率が高い印象があります。


高校生や大学生の選手で肘に痛みがある選手は
「小学校の時に痛めたことがあります」

「野球肘と診断されたことがあります」

など
過去に肘関節を痛めた経験がある選手がほとんどです。


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投球障害肘は骨軟骨が未発達な小~中学生期の発症が多く、
成長期の段階で根本的な解決をせずにいると
成人期で再び障害を引き起こすことがあります。
障害を繰り返さないように
病態 原因を改善することがとても重要となります。



■投球障害肘とは

投球動作において投球障害肘は
2つのphaseで障害が生じやすいと考えられています。

|MER
外反ストレス
MER(Maximum External Rotation) 

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肩関節最大外旋時に肘関節には外反への力が加わります。
この時にMCLや肘関節内側筋群に負荷が生じます。


|Ball-Release~Follow-through
伸展+外反ストレス

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投球動作中の肘関節はBLにかけて伸展+回内運動します。
過度肘関節伸展では後方への負荷を生じさせます。
肘関節伸展に伴う、回内運動タイミングが遅延すると
肘関節への外反ストレスが発生します。



では、なぜ上記の2つの相で障害が生じるのでしょうか


■投球障害肘の原因

肘関節は肩関節と手関節および手指に挟まれた中間関節です。
肩関節や手関節にまたがる多くの筋肉が肘関節運動に
関与しているため、投球障害肘の原因を探るためには
肩関節や手関節および手指の機能の影響を考慮し
展開していく必要があると考えます。

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投球動作においても同様のことが考えられます。
肘関節は基本的に1軸性の関節であり、主な運動は屈曲/伸展です。
投球障害肘の発生には、外反ストレスが大きく関与します。
このことは、投球動作に伴う、
肩関節や前腕の回旋運動により
肘関節へ外反/内反の動きが強制
され
肘関節への障害が発生すると考えられます。

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投球障害肘を捉える上で、肩関節や手関節および手指の
機能を把握することで、原因の究明につながります。


|機能的問題


〈肩関節からの影響〉

TER(Total External Rotation)各関節の総合可動域
MER時は肩甲上腕関節外旋だけでなく
肩甲骨、胸椎も連動します。
この、連動性が低下することで、肘関節の外反ストレスが増大し
障害を発生させる要因となります。

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〈手関節および手指からの影響〉
前腕回旋制限
前腕の回旋制限は特に、Ball-Releaseでの回内運動が重要となります。
肘関節伸展とともに回内することでリリース時に
手関節が背屈/橈屈位になり前腕屈筋群の動的支持機構が機能しますが
回内制限をきたすと、リリース時に手関節が尺屈位になりやすく
前腕屈筋群の動的支持機構の機能が低下します。

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〈内在筋機能の影響〉
手内在筋の機能はボールを握る動にとってとても重要です。
ボールの握り方には大きく分けて2種類あります。

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一般的には、内在筋を利用した
母指尺側握りが良いとされています。

指腹握りであると、外在筋の活動が高くなり
前腕の動きに制限が生じる
と考えられているからです。

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手内在筋機能が低下すると、手外在筋優位となり、ボールを強く握りこむことで肘下がりや、リリース時の前腕回内制限を引き起こします。

〈ボール握りと肘下がり〉
過度なボールの握りこみは、前腕の回内制限を引き起こし
上肢の回旋運動連鎖の破綻を引き起こします。
Take-backで必要な肩関節の内旋は、ボールの握りによっても
変化します。

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|投球フォームの問題

投球動作では、下肢からの運動連鎖を
下肢→体幹→上肢と連動させて行います。
この一連の動作に問題が生じると、特定の関節への
負荷が大きくなり障害につながります。

投球障害肘では、成長期での発症が多いことから
身体的、技術的に未熟な選手に多く発生し
身体機能低下と合わせて不良フォームによる誘因も多く考えられます。

下記に示す3つの不良フォームは、投球障害肘につながることが
多いとされています。


〈肘下がり〉
Top~BRにかけて両肩の結んだラインより肘の位置が低い状態

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〈体の開きが早い〉
 FP前に体幹が投球方向への回旋が生じている状態

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〈踏足の股関節内旋制限〉
踏込足への体重移動が不十分でフォローの際に骨盤の回旋が少ない状態

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■野球肘の投球開始基準

投球障害肘では基本的に保存療法を選択することが多いです。
そのため、投球開始には理学所見の陰性化が重要になってきます。
Little Legagur’s ElbowやMCL損傷では
画像所見の修復を待つことなく投球を開始していきます。


※離断性骨軟骨障害(OCD)では画像所見を踏まえて判断させるため
 疼痛がなくても医療機関からの投球開始許可が必要であり
 現場の独断で投球開始しないように注意してください。


投球障害肘は、発症部位や損傷組織、年齢により
投球禁止期間はさまざまです。
病態ごとの投球開始基準はこちらのnoteを参考にしてください。



|野球現場における投球開始基準


投球障害肘の投球開始基準は年齢によって異なると考えています。
基本的には医療機関での、投球開始許可が出てからの開始となりますが
投球開始基準は成人期と成長期では、捉え方を分けたほうが良いと考えています。

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