「好き」は人を輝かせる。
私は好きなことが多い。
クラリネット、ハンドメイド、ボルダリング、美術館。
これだけで充分多趣味と言えるだろう。
だが他にもコンサートや落語、ミュージカルなど舞台を見ること、料理、古着、人と会って話すこと、読書、インテリア、旅行などなどとにかく好きなことが多すぎて休みの日は大忙しなのである。
仕事などしている場合ではないのだ(クズ)
私が遊んでばかりで働かないクズだと言う話はさておき、先日、撮影モデルをやってきた。
撮影モデルとは美容師さんがメイクやヘアアレンジの練習やコンテストなどの応募のためにセットをして撮影するモデルのことである。
プロの方にお願いすることも無くはないらしいがそれはお金がかかるので知り合いや美容師同士などの素人にお願いすることが多いらしい。
私も知り合いの美容師さんに依頼されて今回のモデルをやることになった。
撮影モデルは長丁場だ。
ヘアセットをしメイクをし衣装に着替えようやく撮影だ。
モデルはただ座ってればいいもののずっと立ちっぱなしの美容師さんは大変な重労働である。
先日の撮影もお店の閉店時間から始まり他のスタッフさんは帰ってしまった後も続いた。
ただでさえ仕事終わりで疲れていただろう。
なのにその美容師さん(Kさん)ときたらなんと仕事の疲れなんて何処吹く風。
新しいおもちゃを貰った子供の如く生き生きと、目をキラキラさせながら作業を進めていくのである。
他のスタッフさんが帰ってしまい2人きりの店内。
なんとなく雑談をし始め、ふと思ったことを聞いてみた。
「Kさんはどうして美容師さんになったんですか?」
すると意外な答えが返ってきた。
「実は元々公務員になるつもりだったんです。でもどこも受からなくて。それでバイトしながら浪人してたんですけどバイトしながらだと勉強なんてできないんですよね。で、どうしようかなーと思ってたところに当時通ってた美容室の美容師さんに『美容師になれば?』って言われて。それで専門学校に行ったらすっかり美容の世界にハマっちゃったんです。それまでは全く興味ありませんでした」
なんとも意外な答えだった。
学生時代からオシャレが好きだったとかそういうことではなかったそうだ。
私「じゃあ公務員試験に受かってたらここにはいなかったんですね」
Kさん「そうですね。いまは美容師になって本当に良かったと思ってます」
そう話すKさんはとても輝いてるなと思った。
楽しく撮影も終え、帰り道に考えた。
「好き」がある人はなんて魅力的なのだろう。そして「好き」があるのはなんて幸せなことなんだろう、と。
私自信うつ病でSNSなどでメンタルヘルス界隈をうろうろしていると
「好きなことがない」
「休みの日何をしていいかわからない」
といった声は多いと感じる。
いや、メンタルヘルス界隈に限ったことではないかもしれない。
社会人になった途端何故か「好き」が無くなってしまう人は結構多い。
Kさんは「好き」を仕事にできているかなり稀なケースではあるかもしれない。
「好き」は多くても私のように趣味で留まっている人も数多くいるだろう。
それでも無いよりはあった方が絶対いい。
人生100年時代だ。
長い人生を「好き」に使った方が幸せではなかろうか。
帰り道に出口まで送ってくれたKさんがぽつりと呟いた。
「あんまり変にしっかりしたくないですね。遊び心とか忘れたくないです」
その言葉が心に残っている。
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