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「できることならスティードで」

25年の記憶をたどって、ジャニーズの中で最初に「かっこいい!!」と思った相手は加藤シゲアキさんだった。18歳くらいまでジャニーズに関心がなかったため当時は顔と名前が一致するのはSMAPのみというくらいアイドルに関して疎かった。
彼をはじめて「かっこいい!!」と認識したのも、アイドルとしてキラキラしている姿ではなく、連続ドラマに出演されているのを見てだった。他局の歌番組で歌って踊っている姿を見て、「え!!〇〇(役名)やん!!」と驚愕した覚えがある。(その十数年後にジャニオタになっているなんてあの頃のわたしは想像もしていなかっただろう。)そんな彼は2012年に作家としてデビューしている。ジャニーズ初となる作家との二束の草鞋を履くアイドルが誕生したのだ。NEWSのファンである友人から借りるなどして著書はすべて読んだ。そしてやっと昨日読了した。

彼の初となるエッセイ。「できることならスティードで」を。

このエッセイの発売は、ここ数年でエッセイといわれる分野を好きになったわたしにとっては願ってもない吉報だった。発売当日にずらりと並ぶ新刊が宝物のようにキラキラ輝く。まるで彼の私物と対面しているような気持ちになり、宝物をそっと手にして口角があがる。おっとこれでは変態だと思われてしまうので口元を引き締めレジへ。(自分が変態と思われるのは仕方ないとして、彼のファンが変態だと認知されることの方が心苦しい。)と、発売当日に購入して順調に作品に向かい合うはずだったのだが、積読状態で本棚にディスプレイしたままだったこの作品に土下座したのは一昨日の朝。
言い訳としては一番最初の章のタイトルから漢字が読めず、「お前の脳みそではこの本はまだ早いわ」なんて言われているように感じ(そんなこと誰も言ってない)、怖気づいて手を止めてしまったのだ。いろんな読み方を検索してみたが該当せず思わず目をそらしてしまった。(読み進めると本文にしっかりとふりがな表記されていた・・・ありがとう。そしてごめんなさい。)そんなことをしていると気づけば購入してから一カ月半がたっていた。ファンとしてあり得ない。いや、もうファンなんて名乗るのもおこがましい。仕事で忙しい友人も読んでいるのに何をしているんだわたしはなんて思いつつも、難しい漢字を見ては頭を抱えて本棚にしまうという愚かすぎる無駄な行為を繰り返していた。

そんなバカなことを繰り返していると、先日の土曜日、日テレの「世界一受けたい授業」で加藤シゲアキさんが先生として登場。その著書をもとに旅の楽しさを話してくれるというではないか!まだ読んでいないので気後れしつつもこれをきっかけに読み始めるチャンス!と思いしっかり鑑賞。そして「あああああ!なんでまだ読んでいないんだ!あほかわたしは!!いや、あほやから読めてなかったのやけど・・・」と自分にがっかりしつつもこれから読めるわくわく感で胸が高まる。
「よし!読むわ!ちゃんと読む!」
誰も聞いていない宣言をリビングで行って活力に満ち溢れていたとき、隣で一緒に鑑賞していた姉に
「え。まだ読んでへんの?結構前に買ってたよな?」
と正論をぶち込められ、小さい声で
「あ~それはなぁ・・・漢字がね・・・読めなくて・・・」
なんて情けない答えを返す25歳。なんと悲しい現実。
「どれ?見せてみ?」と言われ、本を持ってきて「この文字・・・」と一番最初の漢字を指さす。
「あぁ・・・これはね黎明(れいめい)やね」
・・・嘘やろ。わたしの手を伸ばしてはひっこめてきた時間なんやったん!本当にただの愚かすぎる無駄な時間やったんやん。
「今度から聞き。教えたげるわ」
なんてかっこいいのお姉様!漢検とか何も持ってないはずやのに!むしろわたし2級所持者やのに!という心の叫びは届けずにお礼を伝える。あぁやっと読める。これで心おきなく読める。そう、ここを通過してしまえば早かったのだ。めくれなかった2ページ目以降をめくっていくと自分でも驚くくらいのスピードで彼の世界に入っていった。

今までの加藤先生の作品も読んできたがわたしはこのエッセイが大好きになった。声を大にして伝えたい。大好きだ。正直、自分の想像力が低いこともあって処女作である「ピンクとグレー」は難しく感じていた。腑に落ちない点があったというより、芸能人だから持つ感情があるのかな~なんて、アイドルである加藤シゲアキというフィルターを通して読んでいた。でも「傘をもたない蟻たちは」で、おもしろいーーー!と感じ、上下巻に渡る長編作品「チュベローズで待ってる」では、完璧な伏線回収に舌を巻いた。もうアイドルである加藤シゲアキはいなかった。作家だった。加藤シゲアキ先生だった。(いや、それまでもそうなんですけどほんと自分の読解力不足でごめんなさい。)このエッセイはアイドルの仕事も垣間見えるが、正真正銘、加藤シゲアキという一人の人間の生活であり脳内だった。

あたりまえのことかもしれないが、歌って踊るキラキラの代表ジャニーズの彼もひとりの人間だった。エッセイのおもしろさって、まるで人の日記や脳内をのぞき見しているような感覚になれることだと個人的には思っている。普段見るはずのない生活の一部、感情の一部、習慣の一部に直で触れているような感覚。この作品もまさにその面白さでいっぱいだった。アイドルとしての彼ばかりをよく見ているからかもしれないから、作家としての彼も熟知しているファンの方からすると想像の範囲だったりするのかもしれないが、彼のひとりの人間としての一部を覗けることがとてもおもしろかった。キラキラしている部分だけじゃない。それはもちろん今までのインタビューやライブDVDからも知っていたことだが文で伝えられるとさらに生々しく思う。そしていろんな葛藤があったことを知ったりもする。表に立つ人もこうやって乗り越えるものがあったり、ぐっと下を向いていた視線を上げようろ踏ん張るんだと実感する。

共感する部分があったり、今度こうやってみようと思うことがあったのも発見だ。料理で世界を旅してみる。過去へのタイムトラベル。いろんな旅がある。今すぐ旅に出たくなるが、こんな状況だ。今は落ち着いてまず入念な下調べをしようじゃないか。(世界一受けたい授業で先生がおっしゃってました!)次の目的地に向けて準備万端で行けるように。その時はこの本も持っていきたいな。きっとこの本は何度も読み返してしまうだろう。だってもう2巡目が終わったところで、今は読書好きの父親におすすめしているのだから。ボロボロのくたくたになるまで読み返したい。そして旅に出るときにはそっとカバンに入れておきたいので、どうか文庫本が出ますように。

この本に出会えたのもジャニオタであるわたしとNEWSが大好きな友人のおかげだ。二人の好きなことには熱中するオタク気質の才能に感謝しかない。そして、この外出が厳しい期間のお供になる素敵な作品を出してくれた加藤先生に心から感謝の気持ちを。

いつか、心おきなく人々が旅に出る日が訪れることを願って。

まずは、スリランカ バワ建築 で検索するところから。
そして読めない漢字はお姉様に聞くこと。


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