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【掌編小説】 ねね

『ねね
俺のことどう思ってる?』

彼が
何時に無く
真剣な眼差しで

気持ちを
ぶつけてきたから

これは
はぐらかしたりできないんだと
覚悟する

はっきり
付き合うって
言葉は交わさないまま

なんとなく
一緒にすごすことが多くなり
ご飯食べにいったり
デートっぽいことしたり
もちろん身体の関係もある

だからといって
彼のことが
好きなのかといわれると
そうでもない

嫌いではないが
好きの感情ではないのだ

普通は
女の子の方が
はっきりした
関係を望むものなのだろうが

そこを
うやむやに
していたのは
わたしのズルさ
なのだろうか

『どうって?
ちゃんと好きかってこと?』

『そう』

『嫌いではないかな』
とわたし

嘘は言えない

『何だよそれ』
眉間にシワを寄せ
ちょっと困って悲しそうな顔の彼

『ごめん
でも正直な気持ち
嫌ならもう会わないでいいよ』

『そんな簡単に
切るつもりなのかよ』
苛立ちが声に混じる

『だって
このままじゃ
続けられないんでしょ?』

あぁ自分の心が
思い通り
動かせたら
良かったのにね

でも
思い通りにならないこと
知ってるから

本当に
ごめんね

そういうわたしも
自分の心に
振り回されっぱなしだ

もう半年以上も前に
別れた元彼を
忘れられずにいる

心の片隅に
居座って
ふっとした拍子に
現れる

もう忘れたと
何度も自分に
いい聞かせてはみるものの

予期せぬ
タイミングで
現れては
まだ
忘れられてないんだと
思い知る

もう
元に戻ることは
ありえないというのに

心が
いうことを
きいてくれない

次の恋でも
してみたら
忘れられるかもと

なし崩しの
考えで
今の関係に
なっているのだが

やはり
相手に対しても
悪いなという
思いもある

長い沈黙のあと

『待つっていっても
無理なんだろ?』
と彼

『うん
本当ごめん
一緒にいてくれたこと
感謝してる』

彼の
今までの
優しさを思うと
胸が痛むが
どうにもできない
自分がもどかしい

彼と別れ
1人きりになると

申し訳なさと
いつまでも
元彼を忘れられない
自分の情けなさで
泣けてくる

いつになれば
忘れられるかの
確信もなく

先の
見えない
真っ暗の
迷路から
ぬけだせない

泣けるだけ
泣いて

忘れられない
感情ごと

涙で
流し去ることが
できれば
いいのに

なんて
考えながら

眠りにつく

せめて
夢だけは
ハッピーエンドで






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