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#97 白透かしと黒透かし~紙幣に使われているスゴイ技術~

『紙について楽しく学ぶラジオ/Rethink Paper Project』
このラジオは、「紙の歴史やニュースなどを楽しく学んで、これからの紙の価値を考えていこう」という番組です。
この番組は、清水紙工(株)の清水聡がお送りします。
よろしくお願いします。

お札のふるさとは、越前和紙の里

日本初の全国共通の紙幣、知っていますか?
その名も「太政官札(だじょうかんさつ)」です。
1868年5月から1869年7月まで発行されたそうです。
1868年といえば、明治維新の年ですね。
つまり、明治時代に入って初めて、全国共通の紙幣が発行されたということです。
太政官札は、今の紙幣と違って、手漉きで製造されていました
なんと、越前和紙の里でつくられていたんです。
そう、実は、越前和紙の里は、お札のふるさとなんです。
伝統的な和紙の原料である「楮(こうぞ)」という植物の皮が原料だったそうです。
しかし、ここに問題がありました。
楮の繊維は長くて強いんですが、一方で、紙の表面が平滑になりにくいんです。
紙幣なので、紙の上に印刷をするわけですが、紙の表面が平滑でないので、印刷がしにくい。つまり、微細な表現ができないんですね。
こうなると、偽札が簡単にできてしまう
なので、この「太政官札」は短命に終わってしまいました。

現在のお札の材料は、三椏とマニラ麻

現在のお札の原材料は何だと思いますか?
木材パルプだと思ったそこのあなた、違うんです。
なんと、現在のお札の原材料は、「三椏(みつまた)」「マニラ麻」といった伝統的な和紙の原材料を使っているんです。
和紙の原材料を使っていたって、意外じゃないですか?
「太政官札」では「楮」を原材料としていたのに、今のお札は何で「三椏」と「マニラ麻」を使っているのか?
答えは簡単です。
繊維が短いから。
繊維が短いと、紙の表面が平滑になって、印刷適正が上がる訳です。

透かしの技術

そして、繊維が短いとできることがもう一つあります。
「透かし」です。「すき入れ」とも言いますね。
お札の真ん中の丸い枠を光に当ててみると、人物が透けて見えますよね。
今の千円札だと、野口英世さんが透けて見えると思います。
あれが、「透かし」です。
卒業証書で、学校の校章とかが「透かし」で入っていることも多いですよね。
どうやって、「透かし」を表現しているかというと、紙の厚みを変えるんです。
お札で言うと、紙に微妙な厚薄を付けて、野口英世さんを表現しているんです。
すげぇですね。
なので、繊維が短いほど、細かい表現ができるようになる訳です。

黒透かしと白透かし

この「透かし」ですが、実は2種類あるんです。
「白透かし」「黒透かし」です。
どういった違いがあるのでしょうか?
「白透かし」は、表現したい線の部分を薄く漉く。
逆に「黒透かし」は、表現したい線の部分を厚く漉く。
簡単に言うと、これだけです。
ちなみに、卒業証書に使われているのは、「白透かし」です。
じゃあお札に使われているのはどっちだと思いますか?
正解は・・・両方です!
出ました、ひっかけ!(笑)
お札に使われているのは「白黒透かし」と言って、めちゃくちゃ高い技術なんです。
政府が「白黒透かしは、めちゃくちゃ高い技術だから、真似できないだろ」と高みの見物をしている訳がなく、そこは、ちゃんと法律で規制されています。
そりゃあ、めちゃくちゃ技術力の高い紙漉き職人が勝手に「白黒透かし」を使ってお札を作り出したら困りますからね。
この法律の名前が、「すき入紙製造取締法」と言います。
法律の最初の部分だけご紹介しますね。

黒くすき入れた紙又は政府紙幣、日本銀行券、公債証書、収入印紙その他政府の発行する証券にすき入れてある文字若しくは画紋と同一若しくは類似の形態の文字若しくは画紋を白くすき入れた紙は、政府、独立行政法人国立印刷局又は政府の許可を受けた者以外の者は、これを製造してはならない。

引用:すき入紙製造取締法

ムズイ。何を言ってるのかサッパリ分からないですね。
簡単に言うと、「黒透かしは絶対使っちゃダメ。まぁ、白透かしは使っていいけど、公的な紙に使われている文字とか絵に似ている表現は、政府か国立印刷局に確認を取ってから使ってね。」です。
そう、「黒透かし」は使っちゃダメなんです。
しかし、最近はこの規制がだんだんと緩んできているようです。
2013年5月に、特種東海製紙さんが、「黒透かしをさせてください」と言ったところ、許可が下りたんです。
恐らくこの時、日本全国の製紙メーカーが、「いや、いいんかい!」と言ったはずです。
この特種東海製紙さんの事例が、日本で最初の黒透かしの許可だそうです。

日本はお札の製造技術が高いと言われていますが、こんな歴史や技術が隠されていたんですね。
面白いですよね。

それでは、本日も最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。

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