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『稲盛和夫一日一言』 11月2日

 こんにちは!『稲盛和夫一日一言』 11月2日(木)は、「大義名分を共有する集団」です。

ポイント:大義名分のある目的を確立するとともに、その共有に努め、全従業員が心から喜んで協力してくれる集団をつくり上げることが、リーダーたる者の責務。

 2016年発刊の『稲盛和夫経営講演選集 第6巻 企業経営の要諦』(稲盛和夫著 ダイヤモンド社)の中で、ビジョンを確立し、それを集団で共有することの大切さについて、稲盛名誉会長は次のように述べられています。

 私は、創業3年目に起こった若手社員の造反事件によって、従業員は家族まで含めた将来にわたる保証を会社に求めているということを、心底から知らされました。
 このときに初めて、企業を経営することの真の目的は、技術者の夢を実現するということではなく、ましてや経営者自身が私腹を肥やし豊かになるというものでもなく、現在はもちろん将来にわたって従業員やその家族の生活を守っていくことにある、と気づいたのです。
 同時に、経営とは経営者が持てる全能力を傾け、従業員が物心両面で幸福になれるよう最善を尽くすことであり、企業は経営者の私心を離れた「大義名分」を持たなくてはならないという教訓を得ることができました。

 公明正大な事業の目的や意義があってこそ、従業員の心からの共感を勝ち取ることができ、全面的な協力を得ることができます。また、経営者自身も堂々と胸を張り、経営に全力投球ができるようになるのです。

 この事件によって気づきと教訓を得た私は、「全従業員の物心両面の幸福を追求する」ということを経営理念の筆頭に掲げました。さらに、社会の公器としての責務を果たすために、「人類、社会の進歩発展に貢献すること」という一節も加え、京セラの経営理念としたのです。

 経営者は、その組織が何を目指すのかというビジョン、目標を高く掲げ、それを集団に指し示していかなければなりません。組織をどういう方向に導いていくのかという方針を示し、進んでいく先にはどのような未来があるのかという展望を描き、さらにはその実現に至る具体的方策まで指し示し、集団を導いていくことが求められます。

 目標へと導いていく過程では、予期せぬさまざまな障害があるものです。しかし、どのような課題が立ちふさがろうとも、ビジョン、目標の実現に向けて、経営者自身が強い意志をもって臨み、組織を一つに束ね、その思いと力を結集していく以外に目標を達成していく方法はありません。(要約)

 「大義」には、「人として踏み行うべき重大な道理、道義」といった意味がありますが、ならば、それは「私」を離れた「公」のために行うべきことでなければならないはずです。まさにこの「大義」というものが、人を動かす大きな力を持っているのです。

 名誉会長は、「企業統治にあたって一番大事なことは、全従業員で共有でき、そのモチベーションアップにつながるような、公明正大な企業目的を持つこと」と説かれています。

 この考え方は、第二電電(現KDDI)創業の際も、また日本航空再建の際にも同様に貫かれました。また多くの盛和塾生企業が、企業の目的として「全従業員の物心両面の幸福を追求する」という言葉を経営理念の一部として掲げていることからみても、それが「大義」にあたることがわかります。

 全世界の平和を実現するといった壮大な目的ではないものの、同じ集団にいる従業員を幸福にしていきたいという企業目的は、私利私欲を超えて、誰もが心の底から共感し、共鳴できるものです。

 自らの会社の目的をつくり、それを社内で共有することに務めることで、会社はがらりと変わり、「大義名分を共有する集団」となっていくのではないでしょうか。


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