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『稲盛和夫一日一言』 9月8日

 こんにちは!『稲盛和夫一日一言』 9月8日(金)は、「上場 ②」です。

ポイント:上場はゴールではなく、あくまでも新たなスタート地点であり、企業はその後もさらに発展していかなかればならない。上場とは、経営者が決意を新たにする場。

 2010年発刊の京セラ社史「果てしない未来への挑戦」(非売品)には、1971年10月1日に上場後、10月10日に滋賀工場のグラウンドで行われた上場記念祝賀パーティーにおける稲盛名誉会長の挨拶文が掲載されています。
 以下、その一部を紹介します。

 私はこのたびの上場につきまして、次のように考えたわけです。
 素直にうれしいと思ったのですが、と同時に何か胸が重たい感じがしました。我々は今日まで、皆さんと皆さんの家族を含む幸せを、ということで経営をしてきたわけです。ところが、今回、上場となってまいりますと、我々社員だけではなく、我々を支援してくださる一般の投資家や株を購入してくださる方々を迎えるわけです。

 その方々は、私どもが過去に素晴らしい成績を収めたから、今後も発展するであろうと思って購入してくださったわけですから、我々は今後とも必ずレースに勝たなければならないという宿命を負ったような気がするのです。
 しかも、それは一戦だけではありません。今後、永遠に続くレースを勝って勝って勝ち抜かなければならない、という気がします。

 我々を取り巻く環境は、我々に多大な期待を寄せております。その期待を裏切らないように、頑張っていきたいと思っております。
 しかし私には、皆さんという素晴らしい社員がついてきてくれています。私は皆さんとともにひたむきに頑張っていく決意でありますだけに、一致団結した考え方、その努力を持ってすれば、私は素晴らしい展開ができると信じております。


 私自身、今回この上場を機に、12年6か月前の創業のときにかえって、皆さんと汗みどろ、どろんこになって頑張っていこうと思っています。私を支援してくださる皆さんを信じて、今後も先頭を切って頑張らせてもらいますので、宜しくお願いいたします。(要約)

 今でこそ様々な事業を展開している京セラですが、創業時はセラミック部品の単品生産からのスタートでした。製造工程で原料のセラミック粉末を扱うと、まさに” 粉まみれ ”になりますし、それを調合・成形して焼成する際には高温の焼成炉を使用しますから、まさに” 汗みどろ ”になります。

 今日の一言には、「私は上場のとき、創業のときの初心に返って、さらに社員と一緒に汗みどろ、粉まみれになって頑張ろう、と社員に説き、また自分自身、決意を新たにした」と書かれています。
 創業以来、常に社員の先頭に立ってこられた名誉会長が、まさに決意を新たにされた場、機会であったということがよく伝わってきます。

 会社は初上場の翌年にあたる19721年9月、東京証券取引所市場第2部にも上場を果たし、その後も市場から高い評価を得て、株価は高値を更新し続け、京セラ=高株価神話が生まれました。

 一連の株式上場によって得られた資金の総額は、31億5,000万円。その資金は、主力製品の量産化や新工場の建設費用といったさまざまな事業に投資され、その後の事業拡大の礎となっていきました。

 よく「人生には大きな転機が3回ある」と言われていますが、どのようなタイミングでどのような転機が訪れるのか、楽しみでもあり、また少し怖いような気持ちもします。

 自身の人生において、いつどのような転機があり、その際に自分はどのような決意を新たにしてきたのか。日々忙しく過ぎる時間の中で、少し立ち止まってそこに思いを巡らせるのも、大切なことなのではないでしょうか。


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