地元エッセイ(15)おばあちゃんのおかげでベジタリアン
僕のおばあちゃんはJAに野菜を卸す農家だ。
だから、小さい頃からよく野菜を食べさせられた。はじめは子どもらしく苦手だったが、気を使うということを覚え始めてからは、無理に食べるようになった。
しかし不思議なもので美味しい美味しいと言って食べていれば、小学校高学年の頃には本当に美味しく感じるようになっていた。
僕の実家では夏になるとよく焼肉をする。その際の野菜のほとんどは自分の家で取れるものだ。そして、そのとき一番出る野菜がししとう。ししとうは緑色のとうがらしみたいなものだが、とうがらしと違って辛くなく、苦味もそこまで強くない。細いピーマンみたいなものだ。だが、たまに辛いものにでくわすこともある。ある種のロシアンルーレット(辛いものがひとつもないときもあるので正しくないかもしれない)は中高生にとってちょっとしたギャンブルだった。
そうやって良いものを食べていたせいで、ファストフードと呼ばれるものやコンビニのご飯をあまり美味しいと思なかった。それでも物珍しさや、おばあちゃんはしない濃くて若者向けの味付けには惹かれて買って食べていたが、どれを食べてもうちの米や野菜の方が美味しいな、とどこか誇らしげに思ったものだ。
京都で一人暮らしをしても、野菜への愛は冷めなかった。友達と焼肉をするときは、必ずししとうを買ったし、実家にはししとうの時期になると送ってきて欲しいと催促もした。思いの外、友人や先輩らにもししとうは好評で、肉より早くなくなったこともある。知り合いの実家から送られてきたものだからと優先的に食べてくれたのかも知れないが、それでもうれしかった。
京都に来て驚いたのは、京都の野菜も美味しいということだ。京野菜と呼ばれるそれらは僕の地元でつくられたものと比べても同じくらい、モノによればこちらのほうが美味しいと思うこともあった。そして、意外と高知県の野菜が全国に流通しているということ。いつももしかして我が家のものではないかと、製造番号を確認してしまう。だが、未だ一度も我が家のものを見つけられていない。
二十歳を超えた今、焼肉を食べると胃がもたれるようになってしまった。しゃぶしゃぶや焼肉の食べ放題に行っても、野菜ばかり食べていたら、肉好きの知人から「お前はヴィーガンか」と言われたこともある。
ヴィーガンを否定するつもりはない。肉より野菜の方が美味しいと思う瞬間は僕は多い方だし、栄養素でいっても肉が最強なわけではない。僕はどちらも好きだ。強いていうならベジタリアン、野菜好きなだけである。
今も、小さい頃も、僕がこうして健康的にいられるのは間違いなく祖母が作ってくれた野菜や米のおかげだろう。僕はおばあちゃんのおかげでベジタリアン、いや野菜好きになれた。
また帰ったときは、食べたいし、なんなら作るのを手伝ったり取材してみたいものである。
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