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おやじパンクス、恋をする。#147

「それで?」

「うん、最初はとりあえず、ご飯に連れてったんだって」

「へえ」

「金を貸せ、はいわかりましたとはいかないけど、事情くらいは聞いてやろうってことだろうね。でも、そこで聞いた話が、思った以上にヘビーだった」

「ヘビー?」

「うん。そのときにはあいつ、既に一人だったんだよね。育児放棄の母親は家出しちゃって、仕事人間の父親も家にまったく戻らなくなって。与えられていた多少の生活費もすぐに底をついて、家賃もずっと滞納してて、それでどうしようもなくなってお金を借りにきたわけ」

「はああ、そりゃヘビーだ」

「うん。で、梶パパはああいう人だから、そういうの捨て置けないのよね。中学生の雄大に金を貸すわけにはいかないけど、なんとかしてやろうってことで、梶商事のアルバイトとして雇うようになった。給料の前借りって形で滞納してた家賃も肩代わりしてあげて、社宅の一室を与えて、社員食堂でごはんも好きなだけ食べられるようにして」

「すげえな。さすが梶さん」

 感心して言うと、彼女は肩をすくめ、ホントよね、でも、と言った。

「でも、なんだよ」

「そこまでやってもらえたら普通、感謝するでしょ。でもあいつは、ありがとうございますの一言も言わなかった。ただ淡々と、言われたままに動いてただけで」

「マジかよ」

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この小説について
千葉市でBARを経営する40代でモヒカン頭の「俺」と、20年来のつきあいであるおっさんパンクバンドのメンバーたちが織りなす、ゆるゆるパンクス小説です。目次はコチラ

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