おやじパンクス、恋をする。#105
俺はグラスの縁をくわえ、傾けた。その苦いような甘いような濃ゆい液体が舌に触れて、少し感電したみたいな振動が走った。
涼介のボコボコの顔と、ボンの照れた顔が頭に浮かんだ。
俺は言った。
「勇者はよ、関係ない村人の頼みだって聞かなきゃいけねえんだ」
「……なにそれ」
「関係なくても、聞かなきゃならねえんだ」
「意味分かんない」
バカにされてるとでも思ったんだろう、彼女は顔をしかめた。
「ましてやさ、困ってんのは村人じゃなくて、キミなんだぜ」
「……」
「一人で抱えこんでんじゃねえよ」
彼女しばらく黙っていたが、大きな溜息をつくと、ジョッキに残っていた半分くらいのビールを一気に飲み干して、ドンッとカウンターに置いた。
「マサ」
「なんだよ」
「今日も貸し切りにしてよ。相談に乗って」
彼女は言った。
「そうこなくちゃ」
俺はそう言って、カズと涼介、そしてタカボンに集合メールを送った。
この小説について
千葉市でBARを経営する40代でモヒカン頭の「俺」と、20年来のつきあいであるおっさんパンクバンドのメンバーたちが織りなす、ゆるゆるパンクス小説です。目次はコチラ。
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