おやじパンクス、恋をする。#205
瞬時に俺は捜査本部の刑事の気分。行方不明の梶雄大について、誰かが有力情報を掴んだに違いねえ。
俺は急いでTシャツを着ると、飛びつくようにiPhoneを手に取った。
誰だ? ボン刑事か、タカ刑事か、それともカズ刑事か……
とか思いながら画面を見ると覚えのねえ固定電話だ。まさか、雄大がどっかからかけてきたのか?
いろんなこと考えたが、緊張して出てみれば全然違った。涼介のおやっさんからの、バイクが直ったから取りに来いっつう、客相手とはとても思えねえ無愛想な連絡だった。
「うちぁ狭めえんだ、このクソポンコツ、邪魔でしょうがねえ」
翻訳すると、「お預かりのバイクの修理が完了いたしましたので、お手数ですが店舗まで受け取りお願いします」ってことだ。
全く、サービス業の風上にもおけねえが、だがまあ、このタイミングで足ができたってのは幸先が良い。俺はおやっさんに今すぐ取りに行くと伝えると、家を飛び出した。
この小説について
千葉市でBARを経営する40代でモヒカン頭の「俺」と、20年来のつきあいであるおっさんパンクバンドのメンバーたちが織りなす、ゆるゆるパンクス小説です。目次はコチラ。
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