おやじパンクス、恋をする。#024
この小説について
千葉市でBARを経営する40代でモヒカン頭の「俺」と、20年来のつきあいであるおっさんパンクバンドのメンバーたちが織りなす、ゆるゆるパンクス小説です。目次はコチラ。
――そうだ。彼女は昔からこういう話し方だった。まるでアメリカ映画に出てくる勝気なヒロインの日本語訳みてえな、断定的で男勝りな話し方。
いや、つうかちょっと待ってくれ、帰れだって?
「……あ、え? そうなの?」
俺が言うと、彼女はバツが悪そうに俯いた。さっきの笑顔が、無邪気な笑い声が嘘みたいな、辛そうな表情。それを見たら、俺はなんだか悲しくなってきた。
いやいや、そんな顔しねえでくれ。だって、キミはなにも悪くねえじゃねえか。
なんの約束もねえ、いやむしろ過去に一度会っただけの、しかも三十年も前に一度会っただけのよく分かんねえオッサンが突然押しかけてきてんだ。しかも、どうみても品行方正にゃ見えねえ不良中年を三人も引き連れて。
悪いのは全部、百パーセントこっちなんだ。
だからそんな顔をしねえでくれ。なあ。
でも、まったく、情けねえよな、心の中でそう感じているのは確かなのに、俺にはそれを実際に口に出す勇気はねえんだよ。
そんな俺の状態に気付いたのか、後ろからいろんな声が飛んでくる。
「じゃあ仕方ねえな、日を改めようぜ」そう言ったのはボン。
「そうだそうだ、日を改めたほうがいい」タカよ、それはボンがもう言っただろ。
「感動の再会は果たされたんだ、今日は引き下がろう」おい涼介、なんだそのカッコつけた言い方。そもそもはてめえが勝手に……
「じゃあ、またね」
俺が心の中でツッコミを入れている最中、彼女はそう呟くようにそう言って、俺の胸に飛び込むように近づいてきたがもちろんそういう理由ではなく、驚いた俺がうわっと後ずさりして玄関から出てしまうと、あっという間に扉を閉めちまったんだ。
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