海外企業にとって日本進出は容易?
今は日本は円安。海外事業者にとっては投資の対象となり易い環境にあります。人口は減少傾向にあるものの、引き続き世界で三番目のGDPで、大きなマーケットです。
海外のグローバル企業(を目指す企業)にとって、日本は進出し易い、美味しいマーケットなのでしょうか?
前々職で投資をしていた頃、投資先企業や共同出資している海外のベンチャーキャピタルなどから、日本市場参入の相談を受けることがありました。また、これまで、海外テック企業の日本のカントリーマネージャー職について、エージェントから数々アプローチがありました。そして、その相談やアプローチの多くに対して、日本参入は容易ではない、本当に難しいよ、覚悟して取り組んでね、と提言してきました。
その主な理由を三つ挙げると、
1. 消費者の嗜好の違いが壁となる
B2C事業にとっては、一般消費者の嗜好はとても特殊です。平均的な日本の消費者は非常に細かい使用感に拘ります。UI/UX、触り心地など、プロダクトの出来と同等かそれ以上に、見た目や使い心地はとても重要。カスタマーサポートへの期待値、要求レベルも世界一高い。
また、日本語という特殊な言語の壁もあります。ローカルのコンテンツ作りは必須条件。ナップスターという音楽配信(iTunesと同じサービス)サービスは、洋楽は充実していたものの、邦楽の楽曲を集められなかったため、それが理由で契約後の解約が多発してしまいました。
その背景にあるのは、日本の音楽レーベルが楽曲を提供しなかったことが要因です。当時はまだ音楽業界全体が、ネット事業者に対する恐れが先行していました。特に日本においては時代が追い付いていなかったのでしょう。
2. 企業との協業関係構築が壁となる
B2B事業者にとっては、またB2Cでもパートナー連携などの開拓をする場合には、日本企業との契約も大きな壁となります。細かな文言の調整をするうち、NDAを締結するのに半年かかってしまったり、請求金額が一円”少ない”(切り上げ、切り捨ての仕様の違いから)という理由で、再発行やシステム改修を求められたり、といったこともありました。
日本企業は細か過ぎる、ルールに縛られ過ぎる、と言われています。また、論理的、合理的な主張や説明が通じない一方で、深夜まで飲みに付き合うと解決してしまうこともあり、理解に苦しむとも言われます。
3. 人材採用が最も大きな壁となる
中途採用条件に”ビジネス英語能力”を入れると、極端に候補者数が減ります。これまで勤めた外資系企業において、採用基準を満たす英語レベルを満たす人材をサーチする際、会社によって異なりますが、日本の就業人口に対して1~5%しかいない、と言われていました。それ以外、すなわち大半のビジネスパーソンは、仕事がとってもできるのにも関わらず、外資系グローバル企業の採用プロセスに進みもしない、入り口でふるいにかけられてしまう、ということです。
また、日本は人材の流動化が進んでいないため、日系企業の優秀な人材が転職市場にあまり流れてきません。その結果、外資系は少ない人材プールの中で転職を繰り返す人が多く、企業にとってみれば、長期的な視点で事業にコミットする優秀な人材の獲得、が非常に難しい、と言われています。
*働く側の視点で言えば、一定水準以上の英語力を身に付ければ、競争率が低い日本の英語人材プールに入り、グローバル企業への門が開かれると言えます。
では、どうすれば成功する確率を高められるのか?
例えば、日本の消費者に疑問の余地を与えないくらいに、世界で圧倒的に勝ち切って、デファクトスタンダードになる。そこまで普及すれば、日本の消費者にも受け入れられ始める時期が来るのでしょう。
また、既にパートナーネットワークを構築してきた日本の類似企業を買収する、というのは、法人顧客やパートナーを増加させるための一つの手段。人材面では、マネジメント層以外は英語の必要レベルを低くして、英語はできないが仕事ができる人材を広く募集する。そのためには、入社後研修や各種プロダクト説明の資料は全て日本語化が必要ではあるけども。
これらの程度のことなら難しくは無さそうには見えるでしょう。現にMSFT、 Google、SF、Toktokなど成功している企業もあります。でも、実際はそう簡単な話ではなく、それぞれに困難や弊害が伴います。結果、やはり非常に多くの企業が、日本進出を断念したり、進出はしたものの撤退を余儀なくされた、という事例が後を経ちません。やはり、
「多くの海外企業にとっては、日本は難しいマーケットであることは間違いありません。」
以上、noteっぽくない記事でしたが。ここまで読んでいただいてありがとうございます。その他の記事もご参考に。
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