労働相談員

社会保険労務士おくむらおふぃす所長.特定社会保険労務士.得意分野は個別労働関係紛争解決…

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社会保険労務士おくむらおふぃす所長.特定社会保険労務士.得意分野は個別労働関係紛争解決.これまでに労使双方から約10,000件の労働相談を受け、150件を超える労働者と会社との間の労使トラブル解決実績.労働局総合労働相談員.簡易裁判所民事調停委員.

最近の記事

在職中ですけど、残業代請求します!

前回までのあらすじはこちら 私は、例によって例のごとく、労働審判手続申立書に準じたあっせん申請書を作成し、大阪労働局に郵送して提出しました。併せて代理人許可申請書と委任状も郵送しました。 今回の事件の争点は残業の有無と残業があった場合にその時間です。 数日して大阪労働局からあっせん申請を受理したとの連絡がありました。 私は、大阪労働局でのあっせんは以前にも一度経験していました。その時の事件の内容は不当解雇で、結局賃金の半年分相当の解決金を会社が支払うことで合意しました

    • 在職中ですけど、残業代請求します!

      しばらくブログのアップを怠っていましたが、就業規則の作成依頼とか顧問先の労働者から請求された残業代の計算とか、子守とか、気忙しいことが何かと多ございました。 過去のメールを整理していると、メールの履歴からその当時依頼を受けていた事件が思い出されます。 依頼者は、聞けば誰もが知っているような大手の人材派遣会社の大阪の支店に勤務する兵庫県在住の猫好きな女性でした。派遣社員として勤めているのではなく、派遣会社で事務の仕事をされている方でした。何でも、出退勤時刻通りだと残業が発生

      • 10年前のメールから 『不遜な申立て』

        続き 依頼者の女性は千葉の労働局にあっせん申請書を郵送する方法で提出しました。しかし相手方(被申請人)である会社はあっせんに参加しませんでした。あっせんは相手に参加を強制することができません。相手があっせんに参加しないことを表明するとあっせん手続ははそこまでです。女性が申請したあっせんは被申請人があっせんに参加しないことにより打ち切りとなってしまいました。 私は依頼者の女性に今後どうしたいかと意向を尋ねたところ、女性は私に「自分で労働審判をしたい」と回答しました。そこで私

        • 10年前のメールから 『不遜な申立て』

          10年前のメールを整理していると、当時のクライアントとのやり取りからいろいろな記憶がよみがえってきます。 千葉県内の太平洋側に面した町で、スーパーマーケットを展開する会社に勤務していた契約社員(有期労働契約労働者)の女性が、雇止めされたということで、私に紛争解決の依頼をされました。 その女性はスーパーマーケットを展開する会社の本部で経理事務の業務を行っていたのですが、その会社が展開するスーパーマーケットのうち1店舗を閉鎖した後の、雇止めでした。したがって雇止めの表面上の理

        在職中ですけど、残業代請求します!

          10年前のメールから 『大震災後の残業代請求』その2

          前回の続き 大地震後の労働審判手続の第1回期日は取消しになり、後日改めて第1回期日が指定されました。 労働審判手続きの第1回期日には結局相手方は誰も出廷しませんでした。もちろん答弁書も出ていませんでした。訴訟の場合だと答弁書も出さず被告も口頭弁論期日に出廷しないのであれば、結審して判決になりますが、労働審判はあくまで裁判上の和解を図る場だからでしょうか、第1回期日では、審判官と審判員が申立人である依頼者から事情を聴取して、第2回期日が指定されました。法律上は、関係人が理由

          10年前のメールから 『大震災後の残業代請求』その2

          10年前のメールから 『大震災後の残業代請求』その1

          最近メールの整理をしています。古いメールを片っ端から削除しています。10年前の2011年のメールを整理していると、当時のクライアントとのやり取りのメールがたくさん残っていて、一部読み返してみると忘れていた記憶がよみがえります。 当時は、労働者からの労使紛争解決の依頼を全国から受けていて、お手伝いをしていました。多いのは残業代請求で、貸金の過払い金バブルの次は残業代バブルなどといわれていました(実際に残業代バブルは起きませんでしたけど)。それから解雇事件も何件かやっていたよう

          10年前のメールから 『大震災後の残業代請求』その1

          労働相談の受け方~労働相談の進め方~

          労働相談の目的を達成するために重要なことは、まず相談者との信頼関係を構築することであり、そのためには相談者の話すことを傾聴すること、傾聴の基礎をなすものは受容と共感的理解にあるということを、前回のブログで書きました(前回の記事はこちら→労働相談の受け方~傾聴のための「受容」と「共感」~)。 今回は、私たち労働相談を受ける者の技術的側面について書いてみます。 傾聴の基礎をなす受容と共感的理解は私たち労働相談を受ける者の相談を受けるときの意識の在り方です。これに対して労働相談

          労働相談の受け方~労働相談の進め方~

          労働相談の受け方 ~傾聴のための「受容」と「共感」~

          労働相談の目的は、相談者の悩みや疑問を把握し、その悩みや疑問が相談者の法的な権利義務に関するものなのかを整理し、法的な権利義務に関するものであれば法的な問題点を明らかにして、相談者が法的な権利義務に関する事項について解決を希望するのであれば、解決手段や方法、相談者が法的に主張すべきことやこれに対する予想される相談者の相手方の反論等を相談者と共に考え回答することです。(特定)社労士の立場であれば、さらに進んで相談者の代理人あるいは補佐人となって、労使紛争の解決を協働することもあ

          労働相談の受け方 ~傾聴のための「受容」と「共感」~

          労働相談の受け方~的を得たアドバイス~

          以前、労働相談の受け方というブログを投稿しました。 (ブログはこちら→労働相談の受け方) 今日は、相談員の相談者に対する的を得たアドバイスについて書いてみたいと思います。 労働相談は、文字通り労働に関する相談ですが、その内容は多岐にわたります。労働相談は労働者の方が圧倒的に多いのですが、労働者の方からの相談の多くは、賃金不払いや解雇予告手当の不払い、解雇、退職、ハラスメント等、法的な点から自分自身の権利が侵害されているかどうか、権利が侵害されている場合にその解決方法について

          労働相談の受け方~的を得たアドバイス~

          パワハラの解決 その1

          労働者の立場でパワハラの解決を図る場合、大きく二つのことが考えられます。一つは勤務先の事業場で上司等からパワハラを受けた場合に、パワハラの再発防止を事業主に求めること、いわゆる職場環境の改善を求めることです。もう一つは、パワハラを受けたことにより精神的苦痛を生じこれを慰謝するための慰謝料請求や、うつ病に罹りこれを治療するための治療費等が発生した又は休業や退職等により逸失利益が発生したなどの場合の損害賠償請求などの私人間の民事上の請求です。 以上のうち、労働者が事業主に対して

          パワハラの解決 その1

          裁判所の民事調停

          私は、令和元年10月から簡易裁判所の民事調停員を務めています。昨年の前半は新型コロナウイルス感染拡大を受けて、裁判所の訴訟を始めとして民事調停期日もほとんどが取消しとなったために、実際に調停委員として仕事をするようになったのは昨年の夏以降です。 民事調停は、民事調停法という法律に基づいて裁判所内で行われる私人間の民事上の紛争の解決を図る制度です。ただし、夫婦間や親子間の身分に関する紛争又は家庭内の紛争については、家事事件手続法に基づいて家庭裁判所内での家事調停手続きよって解

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          契約社員の雇止め

          契約社員とは、使用者との間で、期間の定めのある有期の労働契約を締結して働く労働者のことです。どうして契約社員と言うようになったのか、そもそも契約期間の有無にかかわらず、使用者の指揮監督を受けて働く労働者は、必ず使用者との間で契約を結んでいるのですから、ことさらに有期の労働契約で働く労働者のみを契約社員というのも変な話ですが、なぜだかそう言われています。 期間の定めが有期の労働契約の契約期間については、短いものでは数日から長いものでは数年までいろいろとあります。労基法上、一契

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          特定社労士の立場からの労使トラブル解決業務の業務ごとの難易度

          私はこれまで、労使トラブル解決業務を、労使どちらからの依頼にも関わらずに受けて行ってきました。とは言っても圧倒的に多いのは労働者からの依頼で、使用者からの依頼は数えるほどしかありません。労働者からの依頼で解決に至らなかった案件、つまり会社から解決金の支払いを受けることができなかった案件は数件で、あとは解決金の多寡はありますが、すべて会社から解決金を支払ってもらうことを内容とする和解によって解決に至っています。 労働者からの労使トラブル解決に係る業務の依頼で多かったものは、解

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          懲戒処分・懲戒解雇とは

          先日、富士そばという店舗名で複数の店舗を展開している会社が、労組幹部二人を懲戒解雇したというニュースを読みました。 ニュースの内容はこちら↓↓↓ https://www.asahi.com/articles/ASP25574WP23UUPI003.html この記事を読んでの私の感想としては、この会社が行った懲戒解雇は大丈夫かな、です。 今回労組側は争う姿勢を明確にしているので、懲戒解雇を受けた労組幹部の2名は、恐らく団交では解決しないでしょうから、裁判所に地位確認を求め

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          労働者から残業代の支払いを請求されたら  否認or抗弁

          会社の経営担当者や人事担当者だったら、ひょっとしたら退職した労働者からの残業代の支払いを求めるお手紙を受け取った経験があるかもしれません。 こういったお手紙を受け取った場合、労働者からの請求のすべてに応じる場合を除いては、会社として何らかの反論をして、支払いを拒否するか、一部の支払いには応じるとしても労働者の請求のすべてには応じられないといった回答になるでしょう。会社の対応として一番良くないのは労働者のお手紙を無視して何らの回答もしないことです。回答をせずにいると、後日、労

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          労働契約の最低基準効としての労働基準法と特別刑法としての労働基準法

          労働基準法には2つの顔があります。一つは、労使間の労働契約の権利義務に関する最低基準効としての顔。もう一つは違反した使用者に対する刑事罰を科す特別刑法としての顔です。 労使間の労働契約の最低基準効とは、労働契約の内容となる労働条件について、労働基準法で定める基準を下回る部分については強制的に労働基準法で定める基準に引き上げられるということです。 例えば、労使間の個別の労働契約で、労働者が法定労働時間を超える労働、いわゆる残業を行った場合の賃金について、割増をせず通常の賃金

          労働契約の最低基準効としての労働基準法と特別刑法としての労働基準法