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契約社員の雇止め

契約社員とは、使用者との間で、期間の定めのある有期の労働契約を締結して働く労働者のことです。どうして契約社員と言うようになったのか、そもそも契約期間の有無にかかわらず、使用者の指揮監督を受けて働く労働者は、必ず使用者との間で契約を結んでいるのですから、ことさらに有期の労働契約で働く労働者のみを契約社員というのも変な話ですが、なぜだかそう言われています。

期間の定めが有期の労働契約の契約期間については、短いものでは数日から長いものでは数年までいろいろとあります。労基法上、一契約期間の上限は、ダム建設などの長期に及ぶ契約期間を設ける必要がある場合を除いては、3年(専門的知識を有する者でその専門的知識等を必要とする業務に就く場合や満60歳以上の労働者との間で労働契約を締結する場合には5年)となっています。派遣労働者はほとんど有期の労働契約となっているようで、その期間は2か月間や3か月間として、これを繰り返すことが多いようです。対して直雇用で採用されている労働者で契約期間の定めがある場合には、一契約期間は6か月から1年程度となっている場合が多いように思います。

有期の労働契約は契約期間満了によって当然に労働契約が終了するのですが、中には契約期間満了前に労使間で労働契約を更新することで合意して、労働契約期間満了日の翌日から新たな有期の労働契約の下で引き続き働き続けるということもあります。場合によっては更新後の労働契約は期間の定めのないいわゆる正社員としての契約になっていることもあるかもしれません。

労働契約に期間の定めがある場合、つまり有期の労働契約の場合、その契約期間を満了すれば当然に自動的に労働契約は終了します。したがって契約期間満了による労働契約の終了は、いわゆる解雇とは異なります。この辺りについて、労働者の中には混同している例が散見されますが、解雇は契約期間の定めのない労働契約や契約期間の定めのある有期の労働契約の契約期間中途での、使用者による労働者に対する一方的な労働契約の解約という法律行為です。

労働契約期間満了による労働契約の終了を、雇止めといいます。

労働契約が期間の定めのある有期の契約である以上、契約期間満了によって労働契約が終了する、つまり雇止めになることが本来のことなのですが、場合によっては、雇止めが無効と判断されることもあります。例えば、名目上契約期間の定めのある労働契約となっていても、実質上は契約がほぼ無条件に更新され、契約更新手続きもなされておらず、期間の定めのない労働契約と同じ状態にあるとか、契約更新手続きはなされていたが本人が希望する場合には全員契約が更新されていた、次の契約更新を約束されていた、契約更新が3回以上の複数回に及ぶまたは通算の契約期間が1年以上に及ぶ場合に30日以上前までに雇止めの予告をなされなかった、というように労働者の契約更新に対する期待について合理的な理由があるような場合には、解雇の場合と同様に客観的に合理的な理由を欠き社会通念上相当とは認められないときは、雇止めが無効と判断されます。

もっとも、先述のように、労働契約期間が満了すると労働契約が終了するということが本来のことであり、雇止めの無効はよほどの例外的な事由がある場合に限られるということになります。

有期の労働契約というのは、通常は臨時的な業務に対応するためとか、正社員が一定期間休業するのに合わせてその穴埋めのためといった、イレギュラーな契約です。しかし、これを複数回更新して通算の契約期間も長期に及ぶような場合には、その労働者が従事する業務は恒常的なものであり、契約期間を設ける意味が薄れます。そうすると労働者側でも次期契約更新に対する期待が高まってきますし、従事する業務も恒常的な業務ということであれば、その事実は合理的な理由と判断されうることになります。

また、契約更新を繰り返して通算の契約期間が5年を超えることとなった場合には、労働者が希望すれば、次の契約を更新した以降の労働契約を期間の定めのない無期の労働契約に転換することができます。これを労働契約の無期転換申込権といったりします。労働者が更新後の労働契約について無期への転換を申し込んだ場合、つまり労働契約の無期転換申込権を行使した場合、使用者はその申込みを拒絶することが原則できません。考えてみれば、5年を超えるような業務は恒常的な業務といって差し支えなく、それを同一の労働者に任せていたのであれば、その労働者はその業務を行うに当たって必要な人材ですから、期間の定めを設ける理由はなくなります。

なお、60歳以上の定年後再雇用労働者で嘱託などといって契約期間を設ける場合には、使用者が労働局に対して有期雇用特別措置法に基づく「第二種計画認定」(「第二種計画認定・変更申請書」に必要な書類を添付して労働局に提出する方法で行います。)を申請し労働局がこれを承認することで、定年後再雇用労働者について無期転換権を発生させないようにすることができます。

昨年来の新型コロナウイルス感染拡大による売上の減少等を理由として、いわゆる契約社員の雇止めが増加しているようです。多くの会社が年度末となる来月の3月末日を以て有期の労働契約を更新しないという例が頻発することが予想されます。

労働者にとっては職を失うことにより生活の不安が一気に増大することになります。雇止めの無効を訴えるといった労使トラブルが増加するのではないでしょうか。

文責 社会保険労務士おくむらおふぃす
http://e-roumukanri.link/


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