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こちらでは12歳の時から綴り続けてきた詩や、最近書き上げた創作小説等を公開させて頂いてます。 絵は Instagram.com/anitarosakatze にて発表しておりますので是非ご高覧ください。 尚、当アカウント内の文章・画像等の無断転載及び複製等の行為は厳禁と致します。

最近の記事

小説『ハケンさん/下』

「今いい?」彼女はいつもと変わらぬ声のトーンでこちらを気遣う言葉から話し始めた。駅前に着いたバスを降りて交差点で電話を受けた私は当然快諾して聞き返した。 「どうしたの。体の具合でも悪いの?」侑大のこともあって、彼女の体調が気になったのだ。 「体は元気なんだけどさ、仕事切られたのよ」 「どうして?安西さん真面目で仕事も早いのに」 「あんたんとこの西野って子、知ってる?あの子がまた遅刻してきてさ」話によると、西野という女性は私と同じ派遣会社の所属で、私が入っていない日はその人が派

    • 小説『ハケンさん/上』

      派遣Aが死んだ。 派遣Aは私の恋人だった。 派遣Aはとにかく優しい男だった。 「ちょっと頭が痛いんだ」仕事帰りに掛けた電話で、寝室で横になってるから晩御飯が出来た辺りで起こしてくれと頼まれた私が、駅前のスーパーマーケットでレバニラ炒めの材料と朝食用のパンを買い込み帰宅した時には、彼はもう既に冷たくなっていた。 派遣Aの名前は倉持侑大。私の前では倉持侑大。とにかく優しい男だった。 私たちは日雇い派遣の仕事で生活をしていて、度々仕事で一緒になるうちに付き合うようになった。私が毎

      • 小説『小鳥屋のある風景/下』

        「お戻りでしたか」 「ご店主、こいつの歌は誰が教えたんですか」 「あぁ、はいはい、そいつですね。そりゃあね、うちに来る前から覚えて来たらしくて、そいつの十八番でさぁ」店主は得意げに答えてきた。 「そうなのか」男は鳥の変な歌い方に文句を付けようとしていたのだが、ここで覚えたのでないなら仕方がない。 「こいつはまだ若いから色んな言葉を覚えますよ」 店主は頻りにその鳥の毛色などを褒めたたえ、売り込もうとしている。さっき荷物になるからと断った筈の男の気持ちも揺らぎそうな勢

        • 小説『小鳥屋のある風景/中』

          逃げようか? 一瞬そう思って打ち消した。待て待て、俺は何もしていないぞ?ただ鳥を見せて貰っていただけだ。悪いことは何もしていない。第一、不意を突かれたからと言って何を慌てている。ここは一つ、大人の対応をするべきだ。男は平静を装って、鳥達の飼い主と思しき中年男性に頷いて見せた。 「ほぉー」と関心を寄せるフリをしながらも、内心は穏やかではなかった。さっきの自分の独り言を聞かれたのではないだろうか。鳥の種類が小桜だなんて、話が出来すぎている。サクラという単語を聞き付けて、この

        小説『ハケンさん/下』

          小説 『小鳥屋のある風景/上』

          小さな無人の駅舎を出ると、そこは薄紅色に染められた世界だった。 鄙びた匂いを漂わせる町角も、冬の間に踏み固める者もなかった地表も、先程迄車窓から見えていた晴天さえも、全てがその刹那的な薄紅色の向こう側に、ちらりちらりと垣間見えるだけだった。 彼は足元の花弁に恐縮しながら歩き出した。バス停は確か、この駅前広場を抜けた所にあるはずだった。 無数の花弁が豊潤な香りを漂わせながら男の肩に降り注ぐ。この匂い、あの菓子の匂いに似ているなと思う。春先になると妻がよく買って

          小説 『小鳥屋のある風景/上』

          言葉の積み木 (八)

          62. 庭の花壇の椿の足下 ちっちゃな ちっちゃなバラが咲いたよ 去年 犬に荒らされて もう、だめだと思っていたのに しっかりと枝をはって 帰ってきてくれた おかえり 雨上がりの庭に ほら 小さな 小さなマゼンダが 光ってる 63. 君は うさぎ 一羽の うさぎ いつも何かに脅えてる あの目が恐い あの爪が恐い あの牙が恐いと脅えてる 君は うさぎ 一羽の うさぎ 優しい人を待っている 私も うさぎ 小さな うさぎ 身を固くして震えてる あの

          言葉の積み木 (八)

          言葉の積み木(七)

          56. むかしむかしのお話に 炎に飛び込む うさぎが一羽 爪をもたずに木の実がとれず 牙をもたずに獲物もとれず その身を焼いて 愛を捧げた うさぎが一羽 私は愛を弄び 爪も牙も抜き取られ 一羽のうさぎになりました 私は月へ行けるでしょうか 私に愛は戻るでしょうか 私はその日が来るまでを 怯えて 震えて 生きてゆく 57. 『70億の祈り』 色んな人がいて 色んな障害があって 色んな性格があって 色んな考え方があって 色んな種類の人間がいる 誰もが幸せで

          言葉の積み木(七)

          言葉の積み木 (六)

          51. 僕が最後にあなたを見たのは 陽炎の中 それでもあなたは 微笑んでいた いいよね きっと月が燃えて 太陽になった日に 僕らは きっと きっと また出会える 人を動かすものは 何だったのだろう この世界を動かすものは 何だったのだろう 見えない何かが地球を包み 僕らを僕らでなくしてしまった 陽炎の中で微笑むあなた 僕はあなたのかけらを握りしめ こんな形で僕はあなたを手に入れた あれは いつの頃だったろう 草笛くらいで 有頂天になれた 夕暮れの道

          言葉の積み木 (六)

          言葉の積み木 (五)

          41. ここが何処なのか 知りません まっすぐな道があったので まっすぐ まっすぐ 歩いて来ただけです 途中にあるものは 緑の木々や 草花だけです 私に必要なのは こういうもの ということでしょうか この道は 何処に出るのでしょうか 42. 詩を書けなくなったのは 私にとっての不幸せだったのか…… 幸せだったのか…… やはり 私は この遺書を書き続けなければ いけないらしい 43. やっぱり自然が好きだ 勝手にそこにいて 目

          言葉の積み木 (五)

          言葉の積み木 (四)

          31. 彼女は心を売って生きております 薄っぺらな一冊の本に生活を託しております 風の唸りのような声が駅のホールに拡がります その目に感情はないけれど その瞳は誰よりも輝いています 彼女は言います “ビリでもいいから 頑張れ” と 32. 死ぬことのできない意志が 欲求を赤い靴に変え 私は鳥となって “春だよ” とさえずって 春一番に 舞い踊る 33. 飛行機雲 ため息のように それは すうっと 触覚をのばし 天に触れようとしている

          言葉の積み木 (四)

          言葉の積み木 (三)

          21. 想い出のかけら だんだん透明になってゆく 見えなくなってゆく 追いかけても 手をのばすと しゃぼん玉みたいに消えた 淡くて 哀しくて 涙が出てきて止まらない 22. 屍ふめよ草木 残骸呑めよ大地 我今、ここに眠らん! 朽ちた城 もう、仰ぐ空も力もない 終幕の時である 23. 人間って、石蹴りの石 人に助けられて やっと動ける だから、見捨てられたら はい、それまで 人生の終わり 石蹴りしながら そんなこと考える その

          言葉の積み木 (三)

          言葉の積み木 (二)

          ⒍ 『まぁ、どうでもいいけどね』 全ての心の淀みを 白紙に変えられる 私の口癖 『まぁ、いいけどね』 この一言で、自分を紛らわす いい加減そうだけど これは私の理性を保護する一言 ⒎ 今年 金木犀は咲くだろうか-------------------- 花になれないだろう 私 ⒏ 時間の型にはめられて 今日も一日が始まった いつだったろう 時間に束縛されまいと…… いつだったろう…… ⒐ ここに生命(いのち)がいる だからいつか死も訪

          言葉の積み木 (二)

          詩集 言葉の積み木 (一)

          これは12歳の時から綴り続けてきた作品群です。 今後も更新していく予定です。稚拙なものもありますが、どうぞご笑覧くださいませ。 ⒈ 私は詩が好きだ 詩は自分の心を素直に表せる 素直であるが 具体的でない 具体的でないが 想いを鮮明に映し出せる だから 私は詩を書くことが好きだ だって 心の奥底のものが ひょこんと 出てきたりするものだから ⒉ 同じ空の下 同じ空気に包まれて 私の友達がいる 同じ星を見ているかもしれない 同じ太陽の光を浴び

          詩集 言葉の積み木 (一)