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言葉の積み木 (八)

62.

庭の花壇の椿の足下
ちっちゃな ちっちゃなバラが咲いたよ

去年 犬に荒らされて
もう、だめだと思っていたのに
しっかりと枝をはって
帰ってきてくれた

おかえり

雨上がりの庭に
ほら
小さな 小さなマゼンダが
光ってる

63.

君は うさぎ
一羽の うさぎ
いつも何かに脅えてる
あの目が恐い
あの爪が恐い
あの牙が恐いと脅えてる
君は うさぎ
一羽の うさぎ
優しい人を待っている

私も うさぎ
小さな うさぎ
身を固くして震えてる
あの目が欲しい
あの爪が欲しい
あの牙が欲しいと震えてる
私は うさぎ
小さな うさぎ
うさぎはいつでも震えてる

64.

思い出して
忘れないで
あなたの生命(いのち)が始まった瞬間(とき)

思い出して
忘れないで
闇の中で見た夢 優しい声

あなたに花の名を教えた人は
もういないけれども

思い出して
忘れないで
あなたを抱き締めた暖かい手を

思い出して
忘れないで
ときめきに満ちて目覚めた朝を

あなたに星の名を教えた人は
もういないけれども

思い出して
忘れないで
太陽のような微笑みを
与えてくれた人を

65.

神様がもし
まだ お見捨てになって
いないのならば
精霊たちがもし
私に力をくれるのならば
今宵 ベッドを抜け出して
ひとつの儀式を行いましょう

樫の木の下に 鏡を埋めて
花の蜜で唇を濡らし
月の女神に歌を捧げましょう

女神は歌を月光に乗せ
あなたの窓辺へ届けてくれます

聞こえますか あなた
言葉より たしかな心が-----------------------

永遠がもし
本当にありうる伝説ならば
奇跡がもし
人をとらえる囁きならば
今宵 シャワーで身体を浄め
ひとつの儀式を行いましょう

ムーンストーンにコアントロウの涙を
カナリアの羽根で髪を飾り
星の姉妹に祈りを捧げましょう

姉妹は祈りを輝きに変え
旅する人へ届けてくれます

見えますか あなた
形にはなれない宝石が--------------------------

66.

少女よ
君が 木綿と小鳥の羽根とタイムで
できていることを
教えた母はもういない

彼女は泉に映る向こうの世界へ消えたのだ
たわわに実る 麦の穂を遺して

また 少年よ
君が あの山から木材を切り出すことや
屋根を葺くことが出来ることを
教えた父はもういない

彼は木霊も届かぬ山の向こうへ行ったのだ
広い大地に草を食む 羊たちを遺して

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