伸びてる、 伸びてる
高校生のN君はあまり「ウケる」ことを言うタイプではない。また、これまで特に何かで注目されたこともない。
だから何気なく投稿したツイートが予想外に拡散されたときはすごく喜んだ。
翌日学校へ行くとクラスメイトに話しかけられた。
「昨日のお前のツイート伸びたじゃん」
「うん、びっくりしたよ」
ささやかだが自分が重要な人間になったような気がした。
そのツイートは次の日になっても伸び続けた。初めての体験にN君は有頂天になった。
それから数日間、ツイートはさらに伸び続けた。ツイートの勢いとともにN君のテンションも上がっていった。
「すごい、まだ伸びてるよ!」
N君は嬉しさの余り叫び出しそうになった。
画面を更新するたびにリツイート数が増えていく。天にも昇る心地。恍惚と言ってもよい。
思わず、これまで出したことがないほどの大きな声で叫んだ。
「伸びてる!伸びてる!伸びてるよ!」
目が覚めた。
今は数学の授業中である。皆の視線がN君に注がれている。N君は一瞬状況を把握できずにいたがすぐに理解した。
夢の中の最後のセリフはどうやら本当に叫んでしまっていたようだ。恥ずかしさが込み上げてきた。
誰も気づいていなかったが、数学のT先生はこの日かつらを新調していた。それまでのものよりわずかに毛が長いタイプだ。
先生は気まずそうにN君に向かって言った。
「伸びてちゃ悪いのか?」
めかぶは飲み物です。