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みんなひとつのさくらんぼ

先日新潟への旅で、さくらんぼ狩りに行った。
ひとつのハウスに佐藤錦、香夏錦、正光錦の食べ比べ。何という贅沢だろう。ハウスを通した青空を見上げて、枝の中に熟した赤色を選び出す。
甘酸っぱいというイメージのさくらんぼだが、途中で、サービスの麦茶をいただくほどに甘い。

独り留守番の家族に、いろいろ混じったお買い得パックを買って帰った。
冷蔵庫には旅行直前にスーパーで買ったアメリカンチェリーもあった。
翌朝は日米さくらんぼ食べ比べと、益々楽しい。

お皿に載せた姿があまりに美しくて、食べる前に写真を撮った。
日本のさくらんぼとアメリカンチェリーをいたずらで組み合わせてみた。
たくさんのさくらんぼ。見ていると一つとして同じものはない。

声がした。

ひとつひとつ違っていて当たり前だよ。それでいいんだよ。
どれも美味しいよ。どれも一度きりの命だよ。

そうやってじっと見つめていると、見慣れた古い皿に、小さな花が押されているのを見つけた。もう何十年と食器棚の中に住んでいるが、初めて気づいた。家人に話すと、頷いて、それ、職人さんの手作りだよ、と言った。

とうとう、蔕を抓んで、口に入れる。

輝く小さな宝石たちは、私の一部になった。

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