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短編小説

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2022年11月の記事一覧

20作目:星に手を伸ばす

「あそこのおほしさま、見える?」
 ぼくにくっついてきみが言う。
「見えるよ。あたりまえじゃないか」
「聞いてみただけだもん」
 きみはすねてしまったね。
 ぼくも、ちょっといじわるしたくなったんだ。
「ごめんなさい」「いいよ」
 あいことばのように、くりかえすやりとり。
 きずついてまたくっついて、

 ――いつのまにか離れない程強く結びついていたね。
「あの日の星、今でもあそこにいるね」
「あ

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19作目:地獄にて

 地獄【読み:じごく】
 常日頃、人間が置かれている世界のこと。
 多くの人間は地獄に居るという自覚がない。
 楽園を目指す者もいるが、大抵は死んだ方が楽なことに気付く。

(例文)
 あえてこの世を地獄と名付けなかったのは、質の悪いいたずらだと思う。
 初めから知っていれば、変に期待を抱くことも無かったろうに。
「おい、ぼさっとするなよ」
 今日も上司の怒号が飛ぶ。ひたすらに、俺たちは重いものを

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18作目:愛【ぜいたくひん】

 愛【読み:ぜいたくひん】
 無くても生きていけるもの。
 しかし、これを手に入れるために生きている者も多い。

(例文)
 愛なんて無くたって生きていける。
 むしろ無い方が良い。
 母は父に愛想をつかせて離婚した。
「お帰り」
 父に会いに来た。母に内緒で。
「ねえ、一緒に寝て良い?」
 広い背中に抱き付いて、体温をせがむ。
 年頃のくせにと驚かれることもない。
「じゃあ、お風呂も一緒に入ろう

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17作目:ある朝のツイート

 おはようございます。
 美女に夜這いされるという夢のような一夜を過ごしました。
 その美女が、今はどこにも見当たらないのが不思議です。
 シャイな方だったのでしょうか。

16作目:気づいたら小説になっていた

 長編書こうかと思いつつ、掌編が思いついたので書いてたら4作も書けて驚き。
 当然長編はおざなりに。
 アイデアの神様はあまのじゃくだ。
 対して俺は取り繕うし嘘つくし言うことがコロコロ変わるダメな人間だ。
 なあ、神様。俺たち、良いコンビなれるんじゃね? 
 ……あれ? 
 何も思いつかなくなった。