18作目:愛【ぜいたくひん】

 愛【読み:ぜいたくひん】
 無くても生きていけるもの。
 しかし、これを手に入れるために生きている者も多い。

(例文)
 愛なんて無くたって生きていける。
 むしろ無い方が良い。
 母は父に愛想をつかせて離婚した。
「お帰り」
 父に会いに来た。母に内緒で。
「ねえ、一緒に寝て良い?」
 広い背中に抱き付いて、体温をせがむ。
 年頃のくせにと驚かれることもない。
「じゃあ、お風呂も一緒に入ろうか」
 着たままの制服、大きな手が滑りこむ。
 ブラのホックが外される。
 指を絡めてくちびるを重ねる。
「お母さんに言ったら怒られるかなあ?」
 迫ったのは私からだった。
「そうだね。でも、悪いのは君じゃないよ」
 そういう、何をしても許してくれるような愛が欲しかったのだ。
 母が悲しむ顔は容易に想像がつく。
 悪いことだと知っていても、自分を止めることはできなかった。
「お父さん、愛してるの」
 ほら、やっぱり無い方が良い。
「僕もだよ。ずっと、君のことを愛している」
 だけど、手に入らないのなら、生きている意味は無い。

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