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1 唐突だけれど、ぼくらの偉大なる主人公「ネロ」が駅に到着したところから、この小説は始ま…
雲の裏で人の目にさらされていないときでも、太陽はちゃんと動いている。ネロがもたもたしてい…
やがて険しい山道に入った。それにともない、しつこくまとわりつく雪の床は、だんだんと薄くな…
そろそろ食事が終わりそうだったのだが、唐突に野球帽をかぶった男が大声で演説を始めた。小柄…
3 ネロはいそいそと起き上がり、いつもサルが眠っているはずの布団に何気なく目を向けた。…
部屋に戻ると、毛布が足元に丸まって忘れ去られ、布団の中が晒されていた。マリは目を覚まし…
ネロとマリは施設の敷地の外に出るため、いったん部屋に戻って上着を持ち出した。マリはネロをひきつれて、ぐいぐい歩いた。そうして一本の尖塔にたどり着いた。ネロが駅から確認した尖塔だ。 「さあ登るよ」 「登るの?でも、街に行くんだよね?」 「空が飛べたら、あっという間なのにね」 塔の内部はスカスカで、フレームしかなかった。そのため、たくさんの風が自由に行き交っていた。木組みに足をかけて登ってゆくと、景色が良くて、ちょっと腰を下ろせる木組みのある場所に行きついた。展望台と呼んでもい
街は、ネロが前に通り抜けた駅のある街とは違って、人の気配があった。人々は、あらゆる場…
太陽は目を離すとどこかへ行ってしまう。ネロとマリは太陽の監視を怠っていたため、昼食をと…
灯りなしで立ち入るには暗すぎる部屋の奥に、人の気配があった。ネロが灯りをつけようとする…
告白 「まずお礼を言わせて、ありがとう。私に告白の機会を与えてくれて」 暗闇に潜んでいる…
ネロは繰り返し躓きながら、自分の部屋に戻ろうとしたが、道が分からなかった。さいわい土田…
ネロは腰をかがめて視線を合わせ「大丈夫?どこか悪いの?」と、訊いた。「顔が真っ青だよ」 …
前を走る男は、訓練施設のふちを目指して走り続けた。外へ逃げようと考えたのだろう。後ろを走る男は、前の男の背中だけを見て追いかけた。二人はずっと同じ距離を保ったまま走り続けていたので、遠目には静止しているように見えた。 男たちは、塔の脇を走り抜けた。そしてそのまま、施設の一番外側を囲う金網の前にたどり着き、そこには金網の破れている場所があった。その破れた金網の横には、小さな看板がかかり<勝手口217>と書かれていた。前の男はその破れた穴を、四つん這いになってくぐり抜けた。後