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夏目漱石「こころ」を今読んでみると。。。

フィールドを毎瞬、色とりどりにクリエイトする皆さま、こんにちは。

今回は、夏目漱石の「こころ」を読んだり、聞いたりしてみての小説レビュー、徒然です。

(意外な展開と、結末への時間軸に細工が施されている面白い作品なので、まっさらなところから読みたい方は、ここまでで^ ^)



子どもの頃の夏の読書感想文の宿題の課題図書の中に、必ず名を連ねていた「夏目漱石」。


わたしは何度チャレンジしても、夏目漱石は、くどくて長いように感じてられて好きになれず、

毎回最初のくだりで挫折していました。



太宰治と芥川龍之介が好きで読む派でした。



ただ、芥川龍之介の作品の中で偉大すぎる師匠の死と、その遺体を目の前に、自分の中のエゴが頭をもたげる弟子達と自分の、心の動きをあらわした小説の中の、
師匠のモデルが夏目漱石だったという解説を読んだ記憶があり、

芥川龍之介にとってそれ程の先生なら、いつか夏目漱石は読まなくちゃな、と思って、読んでいませんでした(^◇^;)



そして、ついにまさかの、
仕事で夏目漱石の「こころ」を読まなくてはならなくなり、
ついに、読むことになりました。


先に、ざっくりのあらすじと、抜粋を読みました。

なんとも、重い話です。。。



いやあ、これ全部読むのかー、と思いましたが、「こころ」は意外な展開があるため、結局どうなったのか知りたくて読むことに。


そうこうしている中、文学作品をYouTubeなどで朗読してくれている方々がいるのを知り、これを聴いてみることにしました。

短い文学作品の朗読ものは、昔から図書館などでも借りて聴いていたので、

今は無料で、めちゃめちゃ長い朗読をアップしてくれているおかげで、朗読が沢山聞けて感謝です。


その中で、なんとこの「こころ」全編朗読が!


その、総時間


11時間46分58秒!!



「西村俊彦の朗読ノオト」というYouTube動画があり、これは!!と、早速聴きました。

https://youtu.be/dHA4Xpso7oQ


この長い朗読には感謝、感謝でした。



この朗読をしている西村さんは、とても優しいいい声の方なので、
何日にも分けて聴くのも、とても心地よく、楽しくなり、最後まで聴けました。


家事をしながら聴けるのは、本当にありがたく、この朗読のおかげで忙しい中の家事が楽しくなった程です。

そして、なんと言っても
「こころ」は面白かったです。

夏目漱石の作品は、しばらく読み進めると、
とても面白いのですが、
登場人物の生い立ちや、一つ一つのシチュエーションに時間をかけ、心の中の動きを言葉にして、ずっと思う時間とそれを描写する時間を同じ量でえがくので、

長いのです。。。
で、これまでは挫折していました。。。


例えば、20分、心の葛藤があったとしたら、
その心の葛藤が起きている間ずっと聞こえていた心の中の声を、20分ぶん、細かく同時中継するみたいな感じです。


とはいえ、やっぱり天下の夏目漱石。

面白かったです。



ここからは、あらすじです。



ざっくり言うと、「先生」と呼ばれる主人公が、彼を慕う若者に、遺書を託して亡くなる話です。


ざっくり^ ^


とはいえ、何で、その遺書を書くことになったのか、
その遺書を残して死を選ばなくてはならなかったのか。。。

そこのストーリーと、描写が面白いのです。


この「先生」は若い頃、良かれと招き入れた友人と共に同じ人を好きになり、

その人をめぐって、友人を出し抜いたことで、その友人は自殺します。

「先生」は、何も知らない、自分を慕う若者に墓場まで持っていって欲しいと、自分達が若い頃何が起こったのか、全ての秘密を遺書にしたため、

「先生」が自殺した後、若者に遺書が届くよう投函します。


そして、何も知らない愛する妻にも、
何も、誰にも言わず、隠し通し、
暗闇の中で死んだように生きた「先生」は、

何も言わず死んでいこうと思っていたのに、
突然、人生の中に飛び込んで来た屈託のない青年の、ある種、その大胆な無邪気さに引っ張られていきます。


その若者は、いつしか自分の人生にも、自分の家の食卓にも必ず居て、

若者の大切な節目には、先生の家でこそ、祝わねば、という程になるにも関わらず、

親しくなればなる程、「先生」は過去の取り返しのつかない事実を突きつけられる心持ちにもなり、

最後は、木にしがみつくのを諦めた、落ち葉のように散って行きます。。。



ただ、自分の生き様を、
みっともない卑怯な生き様を、

血肉を分けるように君に与える、と言いながら。

生きた見本を人生の肥やしにしろと。

でも、これは、若者が先生の人生の影のようなものがある理由を感じていて、その理由をどうしても教えてほしいと懇願したから、

ならば、死ぬという最期に、と全てを告白し、

先生は無様(ぶざま)な姿を、若者に見せ切るのでした。

先生なりの愛でした。



わたしにも、昔、同じ歳の頃、同じ年数ほど、毎日入り浸ったずっと年上の大学の教授の先生が居て、

当時、生意気にいろんな質問をぶつけていました。

先生の研究室に押しかけた初めての日、

「君はわたしが怖くないのか」とだけ聞かれました。


先生の研究室に入り浸るように、毎日押しかけたのは、後にも先にもわたし一人だったそうです。

わたしは、とても思いあがった生意気な、生徒でした。

毎日研究室に押しかけるわたしに、それでも、その若さと未熟さを、大きく受け入れてくれて先生は人生の羅針盤を与えてくれる人でした。

そんなことがあったので、なんか物語の中で
「先生」がわたしの先生と重なり、
学生の未熟さが、昔の自分と重なり、恥ずかしくもあり、若さと、好奇心と、無念さが思い起こされました。


「先生」は、

「明日自分の身に、「死」が降りかかるなんて想像すらしていない若者」

を、愛おしく思いながらも、自死していき、

また、若者がガタガタと震えながら、その影を受け取っていく様が

少しだけ自分の過去と重なって、

悲しくなりました。


そして、全く自分とは関係のない、他人事の、それも小説なのに、接点を見出した部分からどんどん引き込まれ、
物語が終わった時は、「こころ」ワールドに取り込まれていました。

(ちなみに、わたしの先生は死んでいませんし、友達を出し抜いて、自殺させたりはしていません(^◇^;))



長く、

くどい言い回しの

(これは、感想文を書かなくてはいけなかった学生の頃の意見として(^◇^;)
ごめんなさい(^◇^;))

でも、すごい文章力と、描写力と、
ストーリーテラーとしての夏目漱石の面白さと凄さを見せつけられてしまいました。


いやあ、面白かったです。



でも、中学生の頃のわたしに今、

「面白いから読め」

と言っても、序章手前で、挫折するでしょうね(^^;;
当時のわたしレベルでは(^◇^;)


でも、やっぱり、授業ではわたしは生徒さんに言うと思います。

「面白いから、読んでみて」と^ ^



ある時、高校生にこれを読んでみてどうだった?と聞いたら、

「疲れた。

重い。。。」

と、言いました。

わたしは大爆笑したのですが、今の若い人には、

恋愛でズルをしといて、最終、相手も自分も自殺とか、ないわー

という、軽い感覚もわかるので、

忌憚のない(遠慮なく言う)一言レビュー」

だな、とも思いました。


ただ、ちゃんと夏目漱石は当時から物語の中で、
今の若い人にはこういう感覚は受け入れ難いかもしれないが、という内容を
セリフに入れてあったので、

先回りしているところも、流石だな、と思いました(^^;

令和の批評も予知していた書き回し^ ^

夏目漱石おそるべし。



朗読を、何日にも分けて聞くのも、
活字で想像力を膨らませるのも、

どちらもおすすめです^ ^


夏目漱石「こころ」レビュー徒然でした。


ありがとうございました。


今日も楽しい一日でありますように。



戸張碧月








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