見出し画像

キューバ建築の魅力はホテルにあり!——その2

こんにちは、ロンロ・ボナペティと申します。
普段は建築デザインを中心に、書籍の編集をしております。
ノートでは日常で目にする町並みや建築を題材に、「建築ってこんなにおもしろいよ」「建築のことがわかると町歩きが楽しくなるよ」ということをお話しできればと思います。
前回、キューバに行ったらホテル建築とその空間構成に注目してみましょう、というお話をしました。
今回は前回紹介しきれなかった、ハバナの老舗ホテル、ナシオナル・デ・クーバについて。
前回のテーマとは逸れますが、見所たっぷりの建築なのでぜひ見ていただければと思います。

◆キューバ1の歴史あるホテル
ナシオナル・デ・クーバは、ハバナの新市街、ベダート地区に建つホテルです。
創建は1930年と、キューバでも随一の歴史をもち、格調高いコロニアル建築です。
正面からの外観はこちら。


正直、ガイドブックで写真だけ見たときは、のっぺりした印象で建築的に見るべきモノはないかと思ったのですが、実際行ってみると細部まで肌理の細かいデザインが行き届いていました。
こちらはエントランスの車寄せ。


部材を細かくしていくことで視線の止めをつくり、全体のバランスを取るのはデザイン上の常套手段です。
一方でアーチの部分に目をやると、広い平滑面を確保し、切断面にも縁取りをしていません。
この緩急によってメリハリを生んでいるんですね。
バックに見える客室の壁面も、各階の区切りや窓の庇すらない、平滑なデザインになっています。
そうすることによって、車止めやバルコニー、さらには屋上の装飾や鐘楼など、細かなデザインが施されている部分が引き立つように設計されているのですね。
また細かいポイントですが、2棟の客室棟の接続部分が直角ではなく、1列分の窓が45度の角度で並んでいます。
これは先ほどの「部材を細かく」する手法を、建物全体の配置に応用した例と言えるでしょう。
エントランスを抜けると目の前に海が広がります。


海側からの外観はこんな感じ。平面計画はシンメトリーでシンプルな構成をしています。


前置きが長くなりましたが、今回はホテルの館内ツアーに参加してきましたのでレポートしたいと思います。

◆エントランスホールから屋上へ
まずはエントランスでホテルの歴史を説明してもらいます。


構造は鉄筋コンクリートなので、礎石造のようなデザインながら大空間・高層が可能になっているんですね。
天井の梁を隠さず、木本来の色をそのままデザインの要素として取り入れている点が好感度高いです。クリーム色の壁面との親和性も高い。
腰の高さまでのタイルや床面のデザイン、カウンターの窓のデザインなど、ひとつひとつがきちんとデザインされており、手を抜いているところがないのがすごいなと思いました。
近代以前の建築における装飾デザインって、誰がどう全体を統括していたんだろう、と不思議に思いますね。
すべての職人に一人の建築家がデザインの指示を出していたのでしょうか。。。
こちらがエントランスの奥にあるレストラン。


茶色を基調に同系色のインテリアでまとまっています。全体的なトーンはエントランスホールを引き継ぎつつ、より密度が高まった感じです。格の高い建築によく用いられる金色も、豪華さを誇示することなく程よく使われている印象ですね。

◆屋上へ
屋上から更に鐘楼に上がるための階段。


スタッフが使うためのもののはずなのに何故かやたらと凝ったつくりになっています。
屋上に出ると・・・
ご覧ください、とても気持ちの良い風景が広がります。


ハバナは高い建物が少なく、8階建ての屋上からでもこのように町全体が見渡せてしまいます。
鐘楼も間近で見ると迫力が違います。


西洋的な柱、モザイク画の装飾、瓦屋根、そして頂部には何やら動物の像があり、さまざまな文化が混在しています。
雑多な人種が共存するキューバらしいデザインです。

その後、革命以前にマフィアが取引に使っていた(!)という客室や、庭園に残る砲台跡、最後に過去このホテルに宿泊した国賓級ゲストの写真が飾られているバーを見学してツアーは終了。


日本人の写真は見当たりませんでしたが、世界各国の著名人の写真が所狭しと飾られていました。
これだけの人たちが泊まるようなホテルに、一般人が気軽に入っていけるのも、観光に力を注ぐキューバならではかも知れませんね。
キューバに行く機会があればぜひ、訪れてみてください!

最後まで読んでいただきありがとうございます。サポートは取材費用に使わせていただきます。