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若松孝二「餌食」

2022年5月シネマヴェーラ渋谷で、若松孝二「餌食」 脚本は荒井晴彦と高田純と出口出の共同。

傷痍軍人&貧乏少年ミーツ、内田裕也!レゲエのプロモートと称してホラ吹きヒッピーの裕也が帰国。外タレをネタにヤクとグルーピーで腐敗仕切った音楽業界に老人の銃を取り少年と武道館に乗り込む裕也の勇姿にカタルシス。ケジメの死と無差別殺人が二ヒリズム満開の東映ムービー。

40年以上も前の作品(1979年公開)なのでフィルムは完全に褐色なのだが、東映の当時の作品って退色が酷くてもいい具合に全体が褐色になっていてむしろ目に優しくて見易くすらなっているの、なんでだろう(笑)元々の撮影技術に金をかけてるのか、ニュープリントには無い味わいがある。

90分尺で向井寛がプロデューサーのどこからどう見てもはい、第二東映ですwロマンポルノと違って地方の二番館、三番館では東映まんが祭りと下手したらセットで上映されてたから、痩せても枯れても一般映画。低予算でロケキャスト苦しそうだけど出ずっぱりの内田裕也がメジャー感出す!

公開当時、私は中学生でこの作品をリアルに観ていないが雑誌で取り上げられていたことを覚えてる(←エロ系雑誌ねw)内田裕也はメジャーな芸能界とアングラなエロを繋ぐ際どい存在として、何だか面白い人だなあ、という印象しかない。アラフィフ世代には裕也って多分そんな印象(笑)

脚本が荒井晴彦と高田純と出口出の共同執筆とされ、いかにも東映番線っぽいノワールなストーリーに反戦に願いを込めた戦中戦後3世代男達の友情、ロマンポルノっぽいセックス&ドラッグ&ロックンロールが互いに自己主張するようにカオスを形成しており、雰囲気に流されるまま観る快楽。

善と悪が「これ、いつの時代だよw」と思う程にくっきりと分かれていて、悪の巣窟はヤクザプロモーター。社長で裕也と元バンド仲間だった鹿内孝以下、草薙良一、佐々木剛、佐藤蛾次郎、人相の悪そうな役者を寄ってたかって裕也の敵に仕立て上げ、これを倒すという単純なカタルシスw

裕也は「ヨロシク」「イカせてやれよ」「イカせてやるぜ」キメ台詞連発でもう存在自体が内田裕也!役名は忠也「チュウヤ」だけど私には「ユウヤ」にしか聞こえねえ(笑)解散したロックバンド元メンバーの一人がヤクザ興業会社の社長に成り上がっていて、そんな悪い奴を成敗する話ですw

裕也が出会うチンピラ少年宮田明の恋人で、ピンクキャバレーで働く少女・栗田よう子。裕也の8年前に別れた恋人で今は外タレ相手の娼婦に堕ちた女・水島彩子がダブルヒロインだが、2人ともに恋人同士での熱いラブシーンが用意されているものの体位は正常位のみで(←注目はそこかよw)大人しめの濡れ場にとどまる。

観ていて気持ちがサイコーに昂るのは裕也がヤク取引現場の武道館楽屋に殴り込みを決意して勝負の神宮球場マウンド。目の前にそそり立つバックネット裏2階席。裕也の討ち入りに同行した弟分の宮田を喪った恋人よう子の悲しみ。彼女は神宮球場外野芝生センター方向を背景に夢中で歌う。それにつけても、神宮球場って40年以上も前なのに、今とあんまり変わんないなあと感心(笑)

宮田明と栗田よう子のヤングカップルは売春や窃盗してでも一緒にいられるだけで幸せ。裕也は昔別れた恋人水島彩子がヤク中のコールガールに堕ちたと知って若い2人の恋にアテられ恋の炎が燃え上がる「お前をイカせてやるぜ!」首締めFUCKでエクスタシーとヤク抜き同時に達成する超人技w

ロックじゃなくてレゲエかよ!裕也がカセットテープに録音してプロモートする「ソルティ・ドッグ」のレゲエミュージック。いつものように「ロッケンロー!」してないぜ。って思ったけど、ロックは反体制で暴力的だろ。やっぱりレゲエしかないぜ「ラブ&ピース!シェゲナベイベー」音楽で世界を平和に!布教活動だ。

裕也がお気に入りのレゲエミュージックを流すごとに穏やかな心が訪れ平和に浸るw映画の内容は腐敗し切った音楽界で薬物や売春がはびこっている、実録ヤクザもの一歩手前の不穏な空気の作品なのにレゲエで和む。これなら東映プログラムピクチャーの番線に入れても全く問題は無い(笑)

佐藤蛾次郎とか安岡力也とか竹田かほりとか近田春夫とか、出演者一覧がやたら豪華なのに、各々の出演シーンがわずかしかないw代わって、多々良純が戦地で片腕を失った元凶の人物の死去が報じられるニュースの原稿を読んでいるのが椙山拳一郎で、写真が下元史朗だったと思う、恐らくw

裕也がニューヨークから帰って来た!機内でマリファナ吸って(笑)白人女性に「ジャパンじゃノーノーw」言われ仲良くなってホテルにしけこみ一発ヤッてキャリーケースごと全部窃盗する、極悪人ヒッピーの裕也はやっぱりアンチ・ヒーロー。彼はお土産にレゲエ音楽を持って帰国したw

悪玉・鹿内社長にレゲエの新星ソルティ・ドッグのプロモート宣言する裕也に「こんなの売れるかよ!」大衆向けにクソつまらない音楽を量産して、外タレはヤクとオンナで接待して武道館で金をたんまり落として帰ってもらう、そんなクソみたいな音楽業界にすっかり嫌気がさした裕也。

レゲエの音楽に合わせボロボロの服にグラサンかけて街を徘徊する裕也にロックンローラーの面影は無く、ヒッピーそのもので(←十年以上は遅れてるだろw)路上に止めてあったチャリの荷台から牛乳を勝手に万引きしてグイッと一本。気づいた青年・宮田がクレーム付けた(←当たり前w)

ところが、宮田も荷下ろし中のトラックから牛乳丸ごと盗んでた同罪の窃盗犯でw二人は裕也が宿泊してる小汚ねえゲストハウスで再会(笑)宮田が勝手に転がり込んだという謎の多々良爺さんの家に厄介になることをキメた裕也。さあ、ソルティ・ドッグのプロモートだ!でも何だか様子がおかしい。

プロモーターの鹿内はレコード会社の佐々木らとともに、来日する外タレにヤクとオンナを斡旋し見返りを得てる大悪党。裕也は昔のスケだった彩子がグルーピーと言う名のコールガールに堕とされていたことに激怒。舐めんじゃねえぞ。ヤクもオンナも取り締まってやる。ここじゃ俺が警察!

宮田と裕也が勝手に転がり込んだ多々良爺さんは一人暮らしで何者かよく分からないが、ある日財界の大物が死んで訃報が出た時、亡くした右腕に力を込めて怒りを露に「この爺さん、只者じゃねえ!」裕也は爺さんに飲みに誘われ、屋台で爺さんが歌う藤山一郎。ギターを弾いていたのは彼。

多々良爺さん黙して語らずだが、裕也には戦地で彼が腕を亡くした経緯が財界の大物が元凶だったこと、そいつが戦争犯罪者なのにのうのうと公務復帰して通産省の官僚で勲章まで貰っていたことに激しい憎悪。まだ日本の戦争は清算しておらん!とまでは思わずw爺さんのケジメ付かない心を想った。

宮田の恋人のよう子はピンクキャバレーで働いて、店の残り物を持って帰って多々良爺さんにも提供する持ちつ持たれつ。一般庶民のつつましやかな暮らしも知らず、プロモーターは「アイドルズ」(←ビートルズイメージなんだろうけどネーミングセンスなさすぎw)で私腹を肥やしてる!

裕也は宮田をよう子と二人きりにして「イカセてやれよ!」カッコよく8年前に別れた彩子の元を訪ねるとまさかのヤクをキメてる現場に遭遇「まだやってるのか!」抱き寄せ「イカせてやるぜ!」FUCKした(←唐突過ぎw)二組のカップルが交錯する中、裕也は彩子を絶頂に導きヤク抜き!

裕也の耳に入ったアイドルズ(←このグループ名、やめろw)情報、武道館公演の楽屋でヤクの差し入れを騙った取引があり、グルーピーを用意しているという。宮田は「俺のナナハン資金を出すぜ」その金をよう子に見せて抱きながら「今日一日、お前を買った」ムリだろ、スゲエ大金のはずw

ヤクザの出入りのようにいきりたつ裕也と宮田に「これ使いな」無言で隠し持っていた拳銃を差し出す多々良爺さん。向かうはアイドルズの公演でキャーキャー黄色い声援が飛んでる夜の武道館。颯爽と乗り込んで敵を一人ずつ倒し、楽屋に突入してヤクの取引現場、押さえました!

裕也はカッコよく銃撃戦を制すると、金とヤクを持って宮田と武道館を脱出。でも宮田は瀕死の重傷を負っていた(←何このベタ展開w)宮田のナナハン、じゃなくてwカブに跨った裕也は息も絶え絶えの宮田に「セカンド」「サード」「トップ」「夜をぶっ飛ばせ」最高潮に達しました!

帰宅すると宮田は死んでおりwワーンと泣き崩れるよう子。裕也は多々良爺さんと外に出た。発作的に銃を天に向かって撃つ多々良爺さん。そして交差点を歩いていると猛スピードの車が裕也を跳ねようとして(←報復じゃね?)庇って突き飛ばした多々良老人が轢かれて即死!

こりゃもう観客はびっくり仰天!昼はホコ天の路上に多々良爺さんの死体現場検証後の白墨が残っていて、( ゚Д゚)と思い立った裕也は激走、多々良爺さんが残した拳銃を持ってビルの屋上に上がると、白墨の線の方向を狙って無差別に発砲。ホコ天歩いてる見ず知らずの若者が銃撃され次々と命を落とすのであった。

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