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白羽弥仁「フィリピンパブ嬢の社会学」

横浜シネマジャック&ベティで、白羽弥仁「フィリピンパブ嬢の社会学」 原作は中島弘象の同名小説。

愛知県春日井市に住む中部大生(前田航基)が卒論のテーマに同世代フィリピンパブ嬢の実態を選び、実地取材に入った店でホステス(一宮レイゼル)と許されぬ恋に落ちた。ヤクザの脅しや家族の反対、障壁の高さに異文化理解の困難と意義を説く青春映画の秀作。

タイトルに惹かれて映画を観てみた訳ですが、予想に違わぬフィリピンから来た純粋無垢な可愛らしい女性、彼女に恋してしまう純情を絵に描いたような非モテ男子の物語のように見せて、実はそんな簡単に恋なんて成就しないよ、と社会問題をガンガン放り込んで来る。

主人公は中部大学の学生の前田君23歳とフィリピンパブで働く一昔前ならじゃぱゆきさんと呼ばれたであろうレイゼルちゃん25歳。非モテ男子が女に縁が無くてフィリピンパブに通い詰めてフィリピン人の嫁をゲットみたいな偏見と先入観にまみれた脳を洗い流す。

原作は実体験をノンフィクションの小説にまとめた中島弘象さんで、フィリピンパブについて大学院で研究する中で知り合ったフィリピン人女性と結婚した。だから本作は物語でありつつも極めてノンフィクションの要素が強い。盛ってる部分あるかもしれないがリアル。

フィリピンパブにヤクザが絡んでるっていう都市伝説は映画の中で証明されてしまう訳なんですが(笑)本作の中でも存在感が半端無い津田寛治演じるフィリピンパブ運営会社の会長が実はヤクザじゃないばかりか前田とレイゼルの恋のキューピットになるイイ人だw

それにしてもレイゼルちゃん可愛い!一目見て恋してしまったよ、私(*'▽')彼女のお母さんはリアルに来日してフィリピンパブで働きながら本国に残した家族を養った人だそうで、役に対する気合の入り方が違うよね。いつも明るく前向きで強い女性を好演している。

一方の中部大学生の前田君はウェイトオーバーじゃない?と思う位にデブなんだけど、明らかに正直で優しくてイイ人なのよね。だからこそ両親にレイゼルとの結婚を反対されると躊躇してしまう。誰も傷つけないとかじゃなく、理解してもらうことの大事さを学ぶ。

舞台が典型的な地方都市の愛知県春日井市というリアリティもある。フィリピンパブは大都市よりもむしろ地方の中小都市に多くあるイメージで、特に何か変わったものがある訳ではない街並みにフィリピンパブが息づいていて前田君が「何だろう?」興味持つの分かる。

レイゼルが来日することが出来たのは偽装結婚した上で3年間はアパートとパブを往復するだけの日々で金を一定期間稼ぎ出せば後は自由の身にしてやる、みたいなこれは令和の女郎屋だよね!と思うけど、一昔前のバリバリヤクザじゃなくてシステムが出来てるのよね。

話のキモはレイゼルが男と交際する禁を犯し偽装結婚を解消して本国送還に前田は怯えるんだけど、ヤクザの親心は「じゃあお前が結婚すればいいじゃないか」他の客には絶対にしない超特例の大サービスに、前田は決心するんだよね。この娘を俺はホントに愛してる!

フィリピンって根っからのラテン気質だと思う。ブラジル人に似てる。そんな彼らが疑問に思うのはなぜ伴侶に「愛してる!」ってはっきり言わないの?ってこと。そうなんだよね。感情を大事にしていつも明るく前向きに生きてチャーミングなフィリピン娘にメロメロ。

本作はフィリピンロケを敢行していて、マニラの青空って春日井にも一直線に繋がってるんだな、と思う。レイゼルが束の間の里帰りを終えて前田とトライシクルに乗る時、初めて日本へと向かう道中がお金のためじゃない幸せに満ちたものだと感慨深く涙が止まらない。

前田がレイゼルと初デートの約束した当日、待ち合わせ場所に行くと姉貴分と二人で待ってる「ああ、そういうことね」非モテ男子だから俺、慣れてるよ、いいたい所に姉貴分は「ホテルに連れ込むなよ、この野郎」牽制だけして二人きりにして去ってくカッコ良すぎ!

観客が( ゚Д゚)とするのは前田がパン屋でバイトしたなけなしの小遣いで訪れるフィリピンパブ、レイゼルのパスポートには興行ビザで、ブラウスとスカートをバッと脱いでセクシー水着で踊るシーンにプロ根性と、彼女たちが何をしに来日しているのかの残酷な本質を見た。

冒頭、中部大学に通う前田は卒論のテーマをぼんやりと考えていて我が町春日井にもあるフィリピンパブで働いている女性ってどんな人だべ?特に自分と同世代の娘がいたら話を聞いてみたいと潜入取材を試みるがオバサンしかいねえ。っていうより客がオヤジばかりw

そんな中で親切なホステスが25歳で店で一番若いレイゼルを紹介してくれて警察みたいな聞き込みにいきなりビビるレイゼル(笑)どうもヤクザが絡んでるらしいと聞いて警察にアドバイス求めに行くと「お前は絶対行くなよ、何でも教えてあげるから」釘を刺された。

でもね、前田はレイゼルのことが気になって仕方ない。来日して3年間は男性との交際厳禁でかかった元手の分は働かないといけない。店長の息のかかった中国女がカンフーで脅すんだけどw怖いもの知らずの前田、デートの約束を取り付けてレイゼルも気を許す。

箸の使えないレイゼルはハンバーガーを頼み、餃子を前田に食べさせてもらってこんな美味しものを食べたことがないと喜んだ。気に入った服を買ってあげようとする前田の好意を断るレイゼルは母国に残した家族に仕送りするため、今が一番大事な時期なのだ。

レイゼルの姉貴分が妊娠してしまった。父親は客の誰なのか分からないし、これはと思う男は姿を消していた。フィリピンに強制送還され、その間だけ一人住まいになったレイゼルは前田を家に招く。その晩、前田はレイゼルを抱こうとするが「ダメ、1年経ったらね♡」

レイゼルは見知らぬ男(仁科貴)と偽装結婚してる。フィリピンパブを経営している会長(津田寛治)は基本イイ人だが鉄の掟は絶対に守らせる。でもね、レイゼルが部屋に前田を連れ込んでいたことバレちゃうんだよね。罰としてフィリピンに一時帰国になるんだけど。

レイゼルと前田はセントレアから飛行機に乗ってマニラを訪れた。出迎えるレイゼルの大家族。一人一人にお土産を渡し、ねだられたらお小遣いもいい大人にあげている。それが家族を養う意味と理解した前田は感激。そんな彼も優しくて素直な性格で受け入れられた。

レイゼルと前田はすっかり恋仲になり、1年経たなくてもキスも身体も許した。そして中部大学のキャンパスでは講師がレイゼルに文化人類学の講義のゲストを頼み、実はレイゼルはフィリピンの大学で環境工学を学んだエリート女子大生だったという事実を知るのだ。

前田はレイゼルにぞっこんで結婚したいと思ったが家に招きフィリピンの酒を両親にプレゼントしたまでは良かったが、結婚となると「家族になるってどういうことか分かってんの?」母親の視線が冷たい。前田は熱にうなされたような恋心から徐々に醒め始める。

レイゼルが前田と熱愛交際してることが店にバレ、会長の津田がやって来る。おいおい、ホンモノのヤクザだぜ!と思ったら案外イイ人で、掟を破ったからには偽装結婚を解消してもらうと、レイゼルと仁科の離婚届を準備するんだけど、ここで前田が意外な行動に出た!

前田は「離婚だけは勘弁してください、そうしたらレイゼルに会えなくなる!」に( ゚Д゚)はあ?キレた津田は「だからお前が結婚すればいいんだ。フツーなら500万は要る話だぜ」虫が良すぎた前田はここで自分の本当の気持ちに気づく。レイゼルを幸せにしなければ。

前田はレイゼルが結婚するとフィリピンの家族と離れ離れになってしまうことが心配だったのだ。でも彼女を「愛してる!」家に招待して母親が着付けを手伝ってくれて結婚式。2人の子供に恵まれた前田とレイゼルは家族4人、春日井の地で仲良く暮らしている。

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